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ベトナムのアンナ

●子供時代

วัย;時代、世代

「ワンアン(ニン・ティ・ヴァン・アン)」2022年9月中旬に最も注目された27歳のベトナム人女性である。

 ロシア系ドイツ人詐欺師「アンナ・ソローキン」に彼女の行動がそっくりである事から、ベトナムでは「ベトナムのアンナ・ソローキン」と呼ばれている。このロシア系ドイツ人詐欺師は労働者階級の出身だが、Netflix「令嬢アンナの真実」というドラマができてしまう程、ニューヨークのセレブ界を欺き、震撼させた。

 ワンアンとアンナの経歴は似通っていて、彼女自身も首都ハノイから約50キロほど離れたバクサーン県の貧しい家庭の生まれである。3人兄弟の一番上で、下二人は弟である。17歳の時に両親が離婚した。

●ワンアンからティナへ

 その数年後、首都ハノイに高級車に乗り、高級ヴィラに宿泊し、ブランド品に身を包んだ豪勢にお金を使う富豪の娘が現れた。彼女は自身の名前を「ティナ―・ドゥアン」と名乗った。

 ラストシーンを待たずとも判るだろう、ティナ―はワンアンだ、ということが。彼女は現実の世界とSNSの世界両方で裕福な男性と知り合う為のルート造るべく嘘のプロフィールを作り上げたのだった。

 หักมุม;どんでん返し、衝撃的なのラストシーン

 ワンアンは運転して見せびらかせ、その写真をSNSに投稿する為に大金をはたいて高級車をレンタルし、高額のマンションを借りた。いずれも現金で購入している。画像編集ソフトを使用し、オーストラリアの大学を卒業し、頻繁に海外旅行をするかのような画像を投稿した。

 ซื้อสด;現金で購入すること

 結果、彼女は何人もの条件の良い男性と知り合い、デートを重ねた。ショッピングに付き添ってもらったり、不動投資の話を持ち掛けたり、お金を借りる口実をあれやこれや考えた。古臭いやり方ではあるが、一緒に出かけて財布を忘れてしまったと言う等あらゆる手を使用し、彼らからお金を巻き上げた。どの方法も成功した。誰だって富豪の娘が詐欺を働くとは思わないからだ。

 もう一つ彼女が頻繁に使用していたのは父親名義のアカウントを作る事であった。目を付けた男性が頻繁に目にする事ができるように、オンライン上で偽の関係を築いた。父親役となり、あたかも実の父親であるようにコメントさせ、このアカウントを使用した。時には、娘が誘拐されたと言い、お金を巻き上げられた男性もいた。男性が頻繁に目にするように、オンライン上で偽の関係を築く事であった。

●誠意ある男性との豪華な挙式

 このような手を使って、巨額のお金を手に入れたワンアンだが、手元にはあまり残らなかった。と言うのも人々に裕福であることを信じ込ませるために投資しなければならなかったからだ。偽のプロフィールと甘い言葉で彼女は何度も結婚をした。最も豪華で周りを驚いかせたのは2018年の富豪の息子であるトゥンとの結婚である。

 ワンアンはアートメイクを施す美容クリニックのオーナーであるMrs.エー(仮名)を通じてトゥンと知り合った。彼女は人相を良くする為に、令嬢アンとしてほくろのタトゥーを入れに行き、その後エーと知り合い仲良くなった。

  Mrs.エーはワンアンに義理の弟であるトゥンを紹介した。 Mrs.エーに高級米を欠かすことなくお土産として持ってきてくれ、トゥンに高額な時計を贈るワンアンは自分達に劣らず裕福な家庭の出身だと信じ込んでいたからである。

เชื่อสนิทใจ;信じ込む

แพงระยับ;非常に高額な 

ระยิบระยับ:ピカピカの→とても

 やがてトゥンとワンアンは結婚の意志を固め、ハノイの5つ星ホテルで盛大な結婚式が行われた。クラシック音楽が流れ、生花で彩られた結婚式には何百人もの招待客が招かれた。このうちワンアン側の招待客は300人であった。

แขกเหรื่อ;招待客

 この他に富豪であるワンアンの父は80億ドン(約1億2600万バーツ)のロールスロイスを結婚祝いとして新郎新婦に贈り、彼女の両親も式に出席し、父は誇らしげに娘と共にバージンロードを歩いた。

 トゥンはとても幸せそうで、終始優しい顔で微笑み、時折式に招かれた子供達のワクワクしたような様子が見られ、式の雰囲気は愛と幸福に満ち溢れていた。

อบอวลไปด้วย-;-が立ち込める、満ち溢れる。

●暴かれた秘密

 しかし結婚後ほどなくして、トゥンの家族はワンアンの父が脇役としてドラマに出演しているのを偶然にも目にしてしまった。彼女は「父は富豪だ。」と言っていたのに…

 調べてみると、結婚式に出席した母親も同じく女優で、ワンアンがこの二人を両親役を演じてもらう為に雇っていた事が判明したのだ。又、ワンアン側の招待客も彼女に雇われていたのだ。彼らは式に事前に贈るはずの祝儀を受け取り、父が二人に贈ったとされるロールスロイスはワンアンがレンタルした事も判明した。

 この他に彼女はトゥンの兄に対し色仕掛けで不動投資を行うように迫り、その際には義理の兄に住居に関する書類に署名させ、それを基に銀行から融資を受けた。その時には同席した大学生に法律家の振りをさせいる。この他トゥンの親戚からも金銭も騙し取っている。

 ล่อลวง:色仕掛けで迫って騙す

 พนักงานกฏหมาย;法律に関わる者

    ยังไม่รวม---:この他に---

 結婚する前にワンアンはフート県(ベトナム北部地方)である男性と結婚し、2年の結婚生活の後離婚をし、授かった子供とは同居せず、ハノイに出て、自分と出会った事をトゥンは知る事となった。

โดยไม่มีลูกด้วยกัน:子供とは同居せず

 トゥンはその事実にショックを受け絶望し、ひどく悲しんだ。全てが明らかにされると、ワンアンはドラマの主人公を演じ始めた。跪いて謝罪をし、「私はあなたの子供を身ごもっています。」と、のたまったのだ。(この点については筆者は本当にワンアンが妊娠していたのか、否かは情報を得ていない。)お腹の子の為の為にトゥンは警察沙汰にする事はなかったが、出産後は実家に戻り、反省するように、との条件を出した。

พอความแตก;真実が明らかになる

เอาเรื่อง:警察沙汰にする

**当サイトの読者がベトナム人の友人に訪ねたところ、ワンアンは妊娠していなかったそうだ。

 以上がワンアンとトゥンの結婚の顛末である。彼の家族がワンアンに騙し取られたお金は170億ドンにも上った。(約2670万バーツ)

 二人の結婚式の動画は瞬く間にベトナム中に広がり、話題となった。この動画を見た人々はトゥンの一途な思いを感じ、彼に酷く同情をした。Mrs.エーは4年経った今もトゥンは立ち直っておらず、沈黙をし、この件については何も語っていない、と述べた。

 ไวรัล:話題となる。

 ตั้งหลัก:立ち直る

 ●暴露に次ぐ暴露

 しかしワンアンはトゥンとの約束を守らず、トゥン宅を出た後、新たに騙す相手を探す為に前に進んで行った。次なる被害者は裕福な者ではなく、一般庶民又はその日暮らしの男性達も彼女に騙さされてしまったのである。

หาเช้ากินคำ:その日暮らしの

 2021年、ワンアンは新恋人「ターイ」とダラート市(ベトナム南部)で結婚をした。新郎側の両親はこの結婚を認めなかった為、二人は松林に囲まれたキャンプ場で式を挙げた。式の最中、ワンアンは大泣きをし、新郎の大変感動させたそうである。

 この男性とはどのように終わりを迎えたのかは定かではないが、2022年にワンアンは「カーリム」という新しい男性とホーチミンシティで結婚生活を始めており、トゥンの家族の耳に入るまで以前のような行いを続けていた。

อยู่กินกับ---:---と同棲する

 9月に入り、Mrs.エーはこれ以上ワンアンの被害者を出さない為に彼女のやって来たことを明らかにする決意を固めた。写真や証拠物のSNS投稿、動画配信ですべてを暴露した。その中で彼女は「ワンアンの悪事を明らかにすることが遅れてしまい、農民やその日暮らしの人々、お年寄り・・・多くの被害者を作ってしまった。」と。

  このワンアンの話は一つの物語となり,ベトナム中この話題で持ちきりとなった。Mrs.エーの暴露後は被害に遭った人々が少しずつ名乗りを上げ、その数は100人にも上った。大半は詐欺の被害者であり、少額でもワンアンは彼らから金銭を騙し取って行った。    

มหากาพย์:大作 例)ハリーポッター

 ある美容院のオーナーは次のように話した。「ワンアンは常連客で、ベトナムの有名ブランドのデザイナーだと言っていた。毎回違う有名ブランドのバックを肩から掛け、高級車を運転して、毎日髪を整えに店にやって来て、たくさんのチップをくれた。毎回当店のスタッフに何かしらのお土産を持って来てくれたので、みんな彼女が好きだった。結局何人ものスタッフからお金を借りて、蒸発。「新しくお店をオープンするから、投資をしければならないことがある、出資して。」と話しそのままお金を持ち逃げされたスタッフもいたそうだ。

เชิด---หนี:---を持ち逃げする。

●「カーリン」ワンアンの最後の男性

 カーリンがこのように話している。「彼女とはこの話が広がる前に 別れた。彼女は「ティナ」と名乗っており、SNSを通じて知り合い、実際に会い、付き合うようになり、僕の所で同棲生活をするようになった。」

 同棲を始め、2-3カ月で彼はワンアン自身に関する書類が何もないことにおかしいと思うようになる。彼女はATMカードしか持っていないのだ。彼は彼女のバッグの中をこっそり探してみたがワンアンの身分を証明する書類は見つからないので、彼女に聞いてみたが「お父さんが持っているのよ。」と答え、カーリンは彼女が違法な事に手を染めているのでは、と疑うこととなった。

 カーリンは何かあった時の為にワンアンの本人確認の為に使おうと、彼女のノーメイクの写真を撮ることを企てた。そして彼女の写真を撮り、出て行くように促した。しかしその時、既に彼は8900万ドン(14万バーツ)を失っていたのだ。

●ワンアンの母

 ワンアンの詐欺の話は話題のニュースとなり、実家にもマスコミがが押し掛けることとなり、ワンアンの祖母にあたる実母と共に小さな家で暮らしていた。元々はレストランの店員であったが、娘の件で報道されると、世間体が悪くなった為、店を辞め、自宅で麦わら帽子を作り、生計を立てていた。

มีสื่อตามไปที่---:報道陣が---にやって来る。

ไม่มีหน้าไปสู้ใคร:顔向けができない

สานหมวก:帽子を編む

 ワンアンは中2に学校に行くことを辞め、叔母に連れられハノイで洋服販売業を手伝っていた。母は1回目の結婚については知っていたが、2回目の富豪の息子との再婚については何も知らなかったそうだが、義理の姉であったMrs.エーが母を見つけ、連絡をよこしたそうである。

 離婚後、ワンアンは実家に戻り、母親と2カ月一緒に過ごし、

再びハノイで生活したいので、まとまったお金を貸してくれるように頼んできたそうだ。その後、彼女は実家を出て、連絡は皆無となった。が、「母親は娘に違法な事はするな。」と注意していた。

 自分の起こしたニュースが国中に知れ渡った時、ワンアンは母親に電話をして来て、2‐300万ドン(約3-5000バーツ)の無心をして来たそうだ。母は「そんなお金はない。一歩でも外に出る勇気はないのにどうやって工面するの。みんな知っているのよ。」とぶちまけた。その後、ワンアンから再び電話が来る事はなく、母が電話しても電話を取らなくなった。

 

 

 


 

 

 

 


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