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【イベントレポート】特集12月4日『わたしたちの夏』ゲスト:吉野晶、鈴木一博

さて、特集上映3日目は、2011年の福間監督第3作『わたしたちの夏』です。トークゲストは、主演の千景役の吉野晶さんと、本作撮影の鈴木一博さん。お二人はご夫婦でもあります。
福間映画4作に関わってくれたお二人から、どんな話を聞かせてもらえるのでしょう。鈴木一博さんのトーク登壇は、なんと初めてのことです!

鈴木さんは言います。
この作品で初めて、2009年に出た一眼レフに動画機能がついた「EOS 5D MARK2」を使った。大規模なチームを組まなくても、街で気楽に撮れるのが特徴で、福間さんの映画に合ってると思った。
ごく普通のカメラという姿の5D。当時それを駆使して撮影した鈴木さんの圧倒的な画を見た映画関係者からは「本当に5Dで撮ったのか、信じられない!」の声がたくさん寄せられました。本作、撮影/鈴木一博、録音・音響/小川武、編集/秦岳志の強力スタッフを得て、福間映画独自のテイストが生まれてゆく、本作はその第一弾となりました。

吉野「4年ぶりに見たけど、鈴木常吉さんも室野井洋子さんも河野真理江さんも亡くなり、まり子の家として撮影した自分の家も今はない。そのことをこの映画のテーマと重ねてしまいました。質問です。撮影で大変だったことはありますか?」
鈴木「森の中が大変だった。暗くて色が出ないし、蚊だらけだし」
吉野「蚊に一番やられたのは、わたしです! 防虫スプレー、これでもかってぐらい使っても刺された。蚊を払ってるところも映ってる! ところで、ロケハンは二人で行ったんですか?」
鈴木「行ったけど、一緒に探すというより、だいたい福間さんが決めてるところをチェックする感じ。国立界隈だから自転車で行った。
福間さんの映画は、普通の劇映画とはちがって、脚本・ストーリーはあっても、ドキュメンタリー的なインタビューがあり、目線がレンズを見ているようなスチールを撮るところがある。被写体としてそこにしっかり立つ、というのはなかなかできないことだけど、ひとつひとつのいいカットが撮れていればいいという感じ。つまり編集次第。久しぶりに客観的に見てみると、編集の映画だなと思った。でも自分のフレーミングの癖が出てるなあ」

吉野晶さん(『わたしたちの夏』より)

「自分の妻を撮るというのはどうでしたか?」と吉野さんが尋ねました。
鈴木「バスの中のシーン撮るとき、仲悪かったのかなあ」(笑)
吉野「10日間四六時中一緒にいたけど、映画のことだけ考えていればいいから、日常の生活よりもラクなところはありましたね。そういえば、森のシーン、死の世界のところで、常吉さんがすごくやさしい顔をしてたんです。寄りで撮ってもらえばよかったなあと、今日あらためて思いました」

「僕は、福間さんの映画を本作から4本撮影しましたが、新作であり最後の作品になった『きのう生まれたわけじゃない』は、やわらかい感じでとらえた作品になってる。『夏』は複雑な構造を持ってるけど、新作はシンプルでストレート。みなさん、ぜひ新作を見てください」
鈴木さんは、客席に向かってそう言って、トークを終えました。

これまでめったに聞くことのできなかった鈴木カメラマンの福間映画への思いは、場内にも静かに届いたことでしょう。「怖いカメラマン」で有名だった鈴木さんの今日の顔は、やさしさにあふれていました。
鈴木一博さん、吉野晶さん、長い間お世話になり、ほんとうにありがとうございました!
そして、貴重な「最初で最後の夫婦トーク」に立ち会ってくださったお客様に、感謝いたします。

Not Born Yesterday 福間健二監督特集1969-2023は、12月22日までつづきます。
新作『きのう生まれたわけじゃない』で初めて福間映画に出会った方も、これまでの作品を何度でも見たいという方も、ぜひポレポレ東中野に足をお運びください!