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【イベントレポート】特集12月5日『あるいは佐々木ユキ』ゲスト小原早織、籾木芳仁

今日のトークゲストは、主演の佐々木ユキこと小原早織さんと、香山と謎の人物Kを演じた籾木芳仁さんです。2011年撮影当時のお二人は、首都大学東京の学生でした。いま、会社で普通に働く小原さんと、映画の現場で活躍する籾木さん。12年後の『あるいは佐々木ユキ』は、お二人にどんなふうに映ったのでしょう。
 
小原「これまで自分が思ってたのとは違う印象で、前半はフィクションなんだけど、ドキュメンタリーみたいだと初めて思いました。こんなにドキュメンタリーっぽかったのかと驚きました!」
籾木「何ていうか、地元に帰ってきたときの、恥ずかしさとか懐かしさみたいな、そんな印象を受けた。人格が形成される前の自分を見てるような気持ちにもなったし、原体験の風景を見てる感覚がめぐってきた。土臭さとか、こういう町だったのかとか、あんな音が聞こえてた、そんなものが追いかけてきて。身体の感覚がよみがえるみたいなことって、自分が出た他の映画ではなかった。不思議な感覚でした」
なるほど、映画の、それも自分がそこに映っている映画って、身体が一番敏感に反応するのかもしれませんね。
 
小原「福間監督、わたしたちにとっては先生でもありましたけど、この時期は学生たちと一緒に映画を作っていて、その後の作品はプロの役者も出るし物語性も強くある、第1作の『急にたどりついてしまう』はまた違う。この時期の作品には、福間節みたいなものが強く出てると、今日あらためて思いました」

小原早織さん

この作品は、『わたしたちの夏』のあとすぐに立ち上げた企画で、『夏』の編集に取りかからずに、『夏』の撮影のわずか半年後に撮影している。監督は、ユキの造形を小原さんと話し合いながら固めていった。
小原「主義については自分で考えた。『あるいは佐々木ユキ』というタイトルは、いろいろ考えて話しあって決めたと思います。ユキのキャラクターは半分は自分が投影されているので、役を演じるというより、自分がそこにいるという感じだった」
籾木「僕は二役だったけど、香山はやりにくくて、Kはマインド的に近い気がしてラクだった。でもKの足のところはこそばゆくてうまくいかなくて、怒られたのをよくおぼえてます」(笑)
 
新作『きのう生まれたわけじゃない』と『ユキ』は、同じ人が撮ったものとは思えないところがあるけど、その経緯みたいなものを監督に聞いてみたかった、と小原さんは言う。
本作は『わたしたちの夏』のあと、小原早織主演で1本撮りたいという監督と撮影の鈴木一博さんの一致した気持ちが、凝縮されたものになっているようだ。
 
籾木「一博さんの画って、やっぱりすごいですよね! でも、勝手にものを動かしたりすると、コラー!って怒られました」(笑)
小原「そうそう、一博さんは普段はコワモテで知られてるそうですけど、うまく撮れて、ファインダーから顔を上げたときの目は、すごくかわいくてやさしいんですよね!」(笑)

籾木芳仁さん

『わたしたちの夏』と『あるいは佐々木ユキ』は、電撃立ち上げ企画+学生たち+監督もカメラマンもノった+短期集中撮影という要素が、いい結果を生んだ作品になっていることは確かなのでしょう。
 
7作それぞれに個性ある福間映画だが、すべての作品に横たわる「人間、生きていればいい」という肯定は、『あるいは佐々木ユキ』の名句である。
そして、わたしたちは「もうすこし歩いて もうすこしへんになってみる」のだ。
退場する観客のみなさんの笑顔が心に残る上映&トークでした。
小原さん、籾木さん、ありがとうございました!
 
 
Not Born Yesterday 福間健二監督特集1969-2023は、12月22日までつづきます。
新作『きのう生まれたわけじゃない』で初めて福間映画に出会った方も、これまでの作品を何度でも見たいという方も、ぜひポレポレ東中野に足をお運びください!

https://kino.brighthorse-film.com/NBYfukuma/

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