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【イベントレポート】12/24『きのう生まれたわけじゃない』 登壇:岡本啓さん、青野暦さん 

12月24日、今夜のトークゲストは、詩人の岡本啓さんと、小説家で詩人の青野暦さんです。
お二人と福間健二は詩をとおして出会い、お互いに刺激を与えあいながら執筆活動をしてきました。またお二人とも、福間映画のほとんどをここまでよく見てくださっています。今日は二度目の『きのう生まれたわけじゃない』を鑑賞してから登壇いただきました。
 
最初に見たときは知っている「生身の福間さん」に気持ちが向いてしまったけれど、今日は映画として見ることが出来たとお二人は言います。
岡本「二度目に見て、福間さんがある種喜劇役者を演じてる。七海に心を読まれないように動く寺田=福間さんのステップのシーンが長くて、これはユーモアのある映画なんだと知らせてくれてると思えた。ここで、七海の〈帰ったら日記に書くよ〉というセリフ、普通の映画監督ならその前のセリフで終われる気がするけど、福間さんの映画では、それを〈書くよ〉と言わせるところに、詩人として、映画監督としての福間健二が合わさっている。たぶん書くことで自分の状態を確かめることと、書いた言葉で再び自分が力をもらってるような気がする。それが印象に残りましたね」
青野「僕は無為という言葉が大事なものとして残ってきました。ムイは最後まで出てこないけど、映画自体が〈無為〉、何も為さないことを大事にしてる。それがどうやって出来るのかというと、普通の映画の作り方では難しいかもしれない。本作は、映画の外に流れる時間をすごく大事にしている。映っていることの外に大事な時間があることを感じさせる。ゴロゴロ体操のようないろんな〈無為〉を味わわせてくれる。時間が豊かに思えてくると感じました」
岡本「映画の外の時間ということで思い出したけど、福間さんと初めてお会いしたのは、『秋の理由』公開前だった。そのとき福間さんは、地面を見ながら、空よりも地面の方がいろんな複雑なものを含んでる、というようなことを話してくれたんです。僕は、この人はなんていいことを言うんだろうと思った。そのあと『秋の理由』を見たら、同じことが映画の中でも言われてる。自分が本当に考えていることを映画の中に込めてる、福間健二の中で日常と映画がつながってる、そんな気がしましたね」

青野暦さん

青野「今日は、僕が初めて福間健二に出会った2011年の詩集『青い家』を持ってきました。当時僕は、詩集がたくさん置いてある本屋で立ち読みをするのが習慣になってる学生でした。そこでいきなり定価が4200円の詩集をよく買えたなあと思うけど、買わなきゃいけないと思ったんですね。そこから詩の言葉が自分の中ですごく大事になってきた。福間さんの詩の好きなところは、声がすごく聴こえることで、それは福間さん自身の声であるし、福間さんが聴いている声ではないか、たくさんの人の声が入ってるように思えた。それがその頃の自分にとって居場所になって、詩との出会いでした。朗読を聴きにいって、福間さんに会うようになって、だんだん詩を書くようになった。それから小説で賞をもらったり、詩集も出していった。福間さんは僕の師匠みたいな人なんです」
岡本「僕が青野さんと会ったのは、みんなが朗読する会に福間さんに呼んでもらったときなんです。なんというか、福間さんには教えられてたけど、えらそうじゃない、人との垣根をすぐ越えられるような人。映画でも思うのは、観客の持つ想像力を信用してるということ。たとえば、七海が見えない犬を相手にマイムしてたり、空に舞い上がるのを足と上半身だけ写して飛んでることにする、そういうところも、もうこれでわかるでしょ、あなたたちの想像力で補ってくださいって感じ。だからこそわかりにくいところが出てくるかもしれない。そこが福間さんの映画の魅力だと思います」
青野「脇役として出てる人の声がちゃんと聴こえる映画になってると思う。作劇に関係ないような人たちが、なんて楽しそうに会話してるんだろうとか。それを積み重ねていい作品にしようとしているのは、自分が考えてるフィクションよりも映っているあなたたちのほうがえらいという気持ちなんじゃないか。それは福間さんの詩のつくり方そのものなんじゃないかと。出会った人とか、ある人の存在とか、そういうことを書いてた人なんではないかと思う。だから、七海と岬が枯れ葉の上をころがるとき、すごく楽しいことを話してるんじゃないかと想像できる。そこが福間映画という気がします」
岡本「あと思ったのは、七海はもう一人の自分がいるという〈二人〉、『あるいは佐々木ユキ』ではユキAとユキBの〈二人〉という、一人が二人いる設定。福間映画は孤独を表現するときに、なぜか同じ人を二人を登場させる。これ、ものすごい発明じゃないか、福間健二ヤバイじゃんって思ってしまいましたね」

岡本啓さん

お二人の話はどこまでも尽きません。
詩と映画を融合させた斬新な映画作りに挑んできた福間健二の意志と夢は、若いお二人に確実に届いていることを実感できるトークでした。
岡本さん、青野さん、今日はほんとうにありがとうございました。
そして、耳を傾けてくださった観客のみなさんに心から感謝します。
 
 
『きのう生まれたわけじゃない』は、12月28日までポレポレ東中野にて絶賛上映中。
トークイベントも連日開催します❗️
新年、東京での上映の予定はいまのところありません。上映日は残りあと3日!
未見の方も再見の方もぜひ駆けつけてください。
何度でも見たくなる、わたしたちのすぐそばにある希望の物語を!