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ある意味かなりのビターテイストだったFGO『バレンタイン2024 ~チョコレート・リバーのその先に~』【ネタバレあり】

『Fate / Grand Order』(以下『FGO』)の期間限定イベント『バレンタイン2024 ~チョコレート・リバーのその先に~』の高難易度クエストも公開され、ひとまずの最終更新を迎えたはずなのでクリア後の感想などなどを記したい。

まず事前告知でイベントタイトルを聞いた時点で「ああ、今回もおちゃらけシナリオか」という覚悟はできた。
こういうお祭り行事がFGOではシリアスにならないことの方が多いし。
で、結果的にそれでもだいぶしんどかった。
コメディパートの予想以上の滑りっぷりもそうだったのだが、シナリオがあまりにも浅過ぎた。
もちろん所々で評価できる光る部分や楽しめた箇所も存在はしたが、それでも総評としてはなかなかに惨憺たるもので、サムライレムナントコラボのあの有り様に続いてのこれはキツい。
あちらは由井正雪というツボの萌えキャラ(正雪先生ご自身は甚だ心外でしょうが)がいた分まだマシだったと言えるかもしれない。
でも、今回はなあ……。

今回の限定★5サーヴァントはアンドロメダ
アンドロメダが★5かー……。
確かにギリシャ神話におけるビッグネームのひとりには違いないんだけど(あのヘラクレスのおばあちゃんだったりするし)、ぶっちゃけペルセウスに助けられたぐらいの印象しかないんだが。
しかもクイック全体攻撃宝具ライダーときた。
水着鈴鹿御前とどっ被りなんだが。
上位互換だったら嫌だなあ。
私は水着鈴鹿御前が推しサーヴァントのひとりであり、宝具5のレベル100にしているので正直戦々恐々としていた。
でも褐色ギャル系ライダーズとして並べたさあるな。どうせなら水着クロエなんかもいっしょに……なんて邪な考えも頭をよぎったり。
結局のところアンダロメダの性能は周回向きではなかったことで、よほど愛を注いであげないと水着鈴鹿御前と並び立つものではなかったのだが。
性能的にも★5、しかも限定サーヴァントとしてはかなり物足りなかったのは非常に残念だ。
高難易度ではあんなに強いのになあ。あれでいいのになあ。
やはりイベントのメインとなるサーヴァントがキャラのみならず性能的にもある程度以上使えるレベルでないとイベント自体が盛り上がらない。

それにつけてもアンドロメダといえば夫のペルセウスである。
ついぞイベント終了までその姿どころか声すら登場することはなかったが、実装順序を入れ替えてまでいつまで引っ張るんですかね?
それは一旦置いておいて、ペルセウスといえばメドゥーサの首をちょんぱしちゃった人。
アンドロメダからのチョコシナリオにてメドゥーサセイバーとの軋轢が描写されていたが、本人が来ちゃうとどうなっちゃうんでしょ。
フレンドに猛烈なメドゥーサ推しがいるので「心境複雑なんじゃない?」って訊いてみたら、「出番が増えりゃなんでもいい」と返ってきた。愛だわー。

イベント特攻サーヴァントに『レジスタンスのライダー』、略して「レジライ」ことコロンブスが男性で唯一入っているのがイベント開催前から話題に。
始まってみたら新衣装ではないですか。
それにしても絵力がすごい。
オベロンが登場した時に「絵の統一感がなくなる」なんてクレームを付けてる連中がいたが、それならレジライどうすんのって。
「萌えイラスト展覧会」に一枚だけ油絵混じってますがな。
テスカトリポカも実装当時散々「色鉛筆」なんて揶揄されたが、やはりコロンブスの異質さは図抜けている。そしていい味出まくってる。
今回コロンブスはカロンに身体を貸していたわけだが、いつもの変顔がなくて主人公もユーザーも寂しい思いをしていたら、「そういうことだったのか」と。
で、いつものコロンブスが戻って来て「ハッハー!」したら「それそれ!」ってなりましたよね。
愛されキャラに外見など実はあんまり関係がないといういい証明である。
オベロンしかり、テスカトリポカしかり。
FGOでも名うての船乗りであり、「チョコを無駄にした苦い経験」を持つロンブスは、まさに最適に人選だったと言える。

チョコレートの川を進みつつ、チャプターごとにライバルキャラが登場し、それを撃破してはゴールへと近付く形式。
登場したのは、ラーマガラテアカーリークリームヒルト黒髭&バーソロミュー
いや「チョコサーヴァント」て。
なんでもアリもさすがに極まってきた感あるな。今さらだけど。
「会いたい誰かに会える川」にまつわるサーヴァントたち(ラストのおバカコンビ以外)のエピソードが披露される。
この中で実装されている「会いたい誰か」はジークフリートだけ。
『Fate/Grand Order Arcade』でラーマの愛妻・シータがプレイアブル化されているが、いずれはアプリ版にも実装されないものだろうか。
設定崩壊しないように同時編成できないとかの落とし所でどうかひとつ。
実は私はクリームヒルト推しなのだが、今回はギリギリ笑えたので助かった。
せっかく『ワンジナ・ワールドツアー』であれだけ上げた株をチョコの川に放流しかける寸前だったぞああ心臓に悪い。
合流する川の形がそれぞれを象徴していた仕掛けは素直に面白かったと思います。

アンドロメダ、ぶっちゃけ性能的にはアレでしたけど、キャラ的には素直でいい子だったと。
健気だし、応援したくなる素質も十分で。
自ら生贄になる志願をして「どうせなら怪物に1発喰らわせたらぁ!」と意気込んでたのに助けられちゃって「英雄になりたかったあたしは死んだ」とか、あのは自分自身がその場から逃げ出さないためのもの、とかのあまり深掘りされてきていないからこその新解釈の付加は目を瞠るべきものがあった。
「なるほど、そういう視点があったか」と思わず膝を叩く着眼点の妙
そうだよなあ、自分から生贄になるぐらいならそれぐらいの気骨があってもおかしくない。
なにも絶望するだけが身代わりじゃない。
ペルセウスに会いたい気持ちもただの恋愛感情だけじゃなくて「並び立ちたい」って気持ちがあったっていい。
英霊だもの。

ではなぜここまで冒頭のコメントに反して褒めておいてなぜこの『バレンタイン2024 ~チョコレート・リバーのその先に~』は美味なるものにならなかったのかというと、シナリオ展開があまりにも強引だったからだ。

○ 「実は三途の川だった!」→お、おう。

○ コロンブスが冥界の渡し守カロンに身体を貸してた!→三途の川だからね、わかる。

○ 死んだチョコたちの怨念が!……「死んだチョコ」とは。

○ 今回のボスは穴そのものだ!→……は?

○ 5つのチョコが光りだした!→なにもわからないわ。

どうしてそうやっていつもいつも大事なところでフザケちゃうんですかね。
悪い癖だなあ、FGOの。
やっぱり奈須きのこに他のどのFGOライターも追い付けないのって、締めるべき部分の締め方だと私は考える。
それまでどれだけバカ騒ぎして脱線していても、一番大事な場面で文句の付けようがない収束感を見せる。
今回のシナリオはそのFGOシナリオ最大の美点に完全に逆行していた。

シナリオ以外の部分にも残念な部分がちょいちょいあったのもイベント全体の印象を悪くしたのかな、と。
スーパーロックオンチョコ、なんでなくしちゃったんですかね。
それならそれでアンドロメダをもっと周回向きの性能にしてあげるとか、せめて配布のイベント特攻礼装をクイック効果アップにしてあげればよかったのに。なぜにアーツ型。
せっかくのライダー周回用のフリークエストの90++も今回も90+よりも素材が美味しくない(人によるかもしれないが、煌星のカケラ&黄昏の儀式剣よりは精霊根&夢幻の鱗粉では?)し。
運営はアンドロメダを売り出したいはずなのにそのいちいち噛み合ってなさはどうしたことだ。

今年から新たにチョコをもらえるサーヴァントたちのシナリオはとてもいいものが多かったが、そちらは各担当ライターのがんばりであって、このイベントそのものの印象を良くするものではない。
水着バゲ子にティアマト、ミコケルにトネリコ、ついでに(?)杉谷のもめっちゃ良かったッス!ごちそうさまでした!
それだけに本当にもったいなかった。

今回の『バレンタイン2024 ~チョコレート・リバーのその先に~』に明確な悪はいなかった
なので余計にモヤモヤすることになってしまった。
こうなってしまったのは結局誰が悪かったんだ。
……いや、そんな生贄なんていらない。
「人の抱く想い」こそが推進力だと言うのなら、この先もFGOのイベントに期待させて欲しかったなあ、と。
FGOバレンタイン2024の後味は、なんともビターだった。

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