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売れないバンドマンが乳がんになったら5

エッセイ5
黙ったままライブを続けて遂に


※はじめての方は
「売れないバンドマンが乳がんになったら1」
から読んでいただくと、わかりやすいかと思います。


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タイトルでもあるように、うちのバンドは売れてません。
私は売れないバンドマンです。

最大限大きなところでやったので1500人。
ワンマンライブで大きくて300人。

ただありがたくもCDは定期的にリリースさせてもらって、
タワレコでもちゃんと並ぶし、サブスクでも何でもあり。

でも、別に売れては居ないです。


そんな中「ミワユータが乳がんだと分かった」と告知しました。

普通の女性ボーカルさんが乳がんの告知するより、
インパクトが大きかったと思います。

なぜなら私の胸は、衣装の一部だったから。

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え!あれがなくなるの!?
と、生々しかったんじゃないかなって。


ギリギリまで胸の開いたデザインのワンピースを着て、
胸にマジックでイベント名を書いたり、
胸にバックステージパスを貼ったり、
非常にクリエイティブな場として存在してましたから。

変な意味でなく、
私の胸がよく目に入ったという人は多かったはずです。

ちなみに、
この胸を押し出してくスタイルを我々は、
「何を目指してるんだ出オチじゃねえか」スタイルと呼んでましたが。


告知後。

そんなに多くない我々のファンの皆様は大変驚き、
しかし、感情が驚きから悲しみに激突する前に、
頭文字Dばりにハンドルを切りました。


「ミワユータ、ガン!?ガンってあの…死ぬかも知れないやつ……?
いやいやいやいや!あの女王がくたばる筈ない!」

というように。
(さすがうちのファンだ、と思いました)


逆に、ファンではなく、その知らせをシンプルに聞いた方は、
もうミワユータが死んだもんだと決めつけて神妙な顔しました。


これ、傷つきますよね。


ガンだと告白すると、とんでもないことを言う人がまれにいます。
本人は全く悪気ないんでしょうけれど。

「うちのおばあちゃんも乳がんで亡くなったのよ」みたいなね。
「私の知り合いもあなたと同じ歳くらい乳がんで死んじゃったの」とか。
「死なないでね」って言う人、本当にいるんだから、信じられません。


これを読んでるガンではない人が、
もしガンだと誰かに告白されたら、こう言ってあげてください。


「そうなんだ。お大事にしてね。
手伝えることがあったら言ってね」


こうやって、風邪に言うのと同じ言葉でいいと思うんですよね。
人にもよるし、関係性にもよるんだけど。


我々は「治療」しに入院するんです。
イケナイ胸を切って、病気をなおすんです。


風邪のひとに言います?わざわざ。
「風邪でも死ぬことってあるから気をつけてって」
言わないでしょ?


大事にしてね、ご自愛ください、でいいと思うんですよね。
個人的にはね。何度も言うけど関係性にもよるけど。


彼氏にガンを告げたらお大事にって言われたら他人事すぎて、
「お大事に、だと?キサマのお大事な…これも…そーりゃ!!」って、
キンタマを片方、遠くへ投げたくなりますからね。

で、愛犬に「とってこーい!よーしよしよし」
ってやりたくなりますからね。


そんなどうでもいいことを考えながら「死なないで」の言葉に、
「え!?私って死ぬの?死ぬ気ないんですけど!」と、
恐ろしくなる日々が通り過ぎていき、

とうとう入院前の最後のライブが来ました。


登場人物紹介や前回にも出てきた友人、傷様のバンドが主催で、
同じく友人ヤマトがバンドのパフォーマーとしても出演する、
3会場同時サーキットイベント。

ミワユータの頭の中は以下。

「もしなんかあったらこれが人生で最後のライブか。
あー、一瞬考えちゃった。なしなし。今のなし。
目一杯楽しもう。ずっとずっとやってきたことだから。
全然売れてないし、べつに人気ないし、
今日もソーシャルの問題でぎゅうぎゅうじゃないんだろう。
でも、私は楽しめる。いつだって。行こう。全部出し切ろう」


待っててくれたのは意外な光景でした。


ライブとか好きな方はわかると思うんですが、
着てるTシャツで誰を見にきたかわかるんですよね。
だから当然うちの出番にはうちのTシャツの子が並んでる、
そう思ってたんです。

でも、

最前には、
傷様のバンドのTシャツや、ヤマトのバンドのTシャツを着た皆さんも含め、
色んなバンドのお客さんみんなが最前に押し寄せてくれていたんです。
(もちろんソーシャル範囲内。そこはライブハウス死守)


みんなのあげてくれる拳を見て覚えておこう。
この手拍子をよく聞いて覚えておこう。


そして、mcでこう言いました。

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「メンバーが白血病になって、あたしが脳炎髄膜炎になって、
後遺症で歌が歌えなくなって、精神病院の隔離病棟にも入ったよね。
うちを不幸なバンドだっていう人もいるけど、私は幸せなバンドだと思う。
だって、一回も活動が止まってないんだから」


さすがに、ガンの治療なら活動止まるでしょ?って思う?


いいえ。
私は告知をうけたその日から、膨大な曲数を書きました。
そんな書けるなら普段から書けよってくらいに。

ライブができないのはコロナもあるから、セーフとして、
男たちは怒涛のアレンジ地獄タイム。


止まらないのです。
進んでる姿が一瞬見えなくなるだけで。

会場で頂いた沢山の花束やお見舞いを抱きながら、
帰りがけ私はこう言いました。


「本当は今日、女の子のお客さんにおっぱい触らせたかったの。
CD売ってる物販タイムにね。
だってさ、乳がんを触る機会ってないじゃん。
あるとしたらそれはもう、自分のおっぱいにガンがある時だよ。
そうならないように私は今日、女の子におっぱいを触ってもらうべきだった。
ああ、こうなったらやばいのか、って学べるでしょう?
なのに、コロナが…ソーシャルが…そこが悔しかったな」


付き合いの20年のメンバーたちは、

「自分のガンでガンを学ばせるって、
めっちゃ骨身削ってて、もうロックスター通り越して、
変な人だよねーあはは」

と笑っていました。

絵はギターのこふじ。noteで漫画もやってます。

https://note.com/kofuji

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誰も、絶望していない。
誰も、泣き言言わない。
メンバーも家族も友達も仲間もファンも。


私はその点において、ものすごくツイていたのだと思います。
周りにいてくれる人たちに、ものすごく恵まれてたのだと思います。


書き忘れてたけれど、レコーディングも撮影もしてました。
寝てても別に治るわけじゃないしね。
(だからメンタルが大事なのです)

ガン告知後に撮影した新曲のミュージックビデオ。
見てくださいね。

http://beth8.net/



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やったー!
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ELIZABETH.EIGHTの作詞作曲ボーカルミワユータ。脳炎、乳がん、それでも私はツイている。 エッセイ「売れないバンドマンが乳がんになったら」と、1人喋りの音声ラジオ感覚でどうぞ。 http:/beth8.net/ 売り上げは次の作品の製作費、治療費の足しに致します。