トヨタがEV車(FCV含む)の販売目標を350万台に設定したことは誰にとってどんなベネフィットがあるか


トヨタ自動車がEV戦略説明会にて、EV車(FCV含む)の販売目標を350万台に設定したことを発表しました。具体的な目標数値を発表する、ということは将来予測(トヨタ社が想定する)を示すことになります。従って、関連する業界や関係者にとっては、その予測に基づいてアクション計画を立てることができます。具体的には、どんな人にとって関係がありそうでしょうか?購入者、販売店、部品サプライヤー(ガソリン車・EV車)、社員、投資家、官僚、政治家、自治体等、列挙したら幾つも枝分かれできる複雑な構造になると予想されます。そのため今回は会社に近い存在である販売店とサプライヤーに絞って考えたいと思います。

・販売店
これまでの業務からどのような変化が生まれ、どこは変わらないでしょうか?例えば、お客様にご説明する車の構造が変わるため、新しい知識習得が必要になりそうです。また構造が変わると、乗り心地や搭載される機能が変わるため、それらを理解していないお客様にご説明する必要があります。しかしながら、販売店もそのノウハウを有していないため、トヨタ社から教えてもらう必要があります。つまり、トヨタが教えて、販売店が広くお客様に伝えるという構造は変わりません。あまり大きな変化ではないように思います。

・サプライヤー(ガソリン車・EV車)
サプライヤーは流石にガソリン車とEV車を同じ観点で考えるのは、大きく前提条件が異なるので分けて考えます。まず、ガソリン車のサプライヤーは、既存のビジネスの縮小が予想できるので、①同じような技術を他の事業領域へ移転する、②特許を含む技術そのものをEVに転換させるかの選択に迫られます。多くの場合、①の方が、既存のビジネスからの変化が小さいため容易と考え、選択すると思われます。しかし、この戦略は競合も同様のことを考えるため、個人的には適切な選択とは思いません。合理的な選択を続けると、困難な状況に追い込まれる理由はここにあります。他社も同じことを考えるのです。ですから、敢えて、非合理的な選択をする会社を応援したいのですが、しかしながらここで大きな壁に直面します。それは新しい領域を素早く立ち上げる組織のケーパピリディが無いことです。社員や会社のノウハウとして、新しいことを立ち上げることに慣れていないと、非合理な選択ができなくなります。ですから、日常から新規事業を生み出し続けている組織が変化に強い理由はここにあります。これからガソリン車の部品サプライヤーは、富士フイルムや印刷会社などのような会社と同じような状況に陥り、トランスフォーメーションするか、危機に直面するかに分かれていくと思われます。
一方で、EV車のサプライヤーは、将来予想が具体的に出されたことで、以前より未来が具体化されました。そのため、この段階で新たに参入できるのは資金力のある企業だけです。しかしながら、あらかじめ予測し、先手を打っていた企業もあります。彼らは待ち構えて、競争優位性を確保してきました。工場やパテントなどの技術を予め確保しておく、などです。先を読むことができ、適切なタイミングで投資できた企業がEVの世界でもうまく前進することができます。これはまるで荒波の中を運転する船のようなものです。常に海の状況を見渡し、同時に遠くに見える雲の様子も観察しておく必要があります。経営と航海は分かりやすい例えなので、もし経営について考えるときは航海に例えて考えることをオススメします。EV車のサプライヤーのメリットについては、既にこの社会を予測していた人たちなので、その確率が50%から70%に近づいたようなイメージだと思います。具体的なメリットはあまりありません。予想が当たったと安心するだけです。

今日はここまで。

Best Regards,

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