ベルリンの職安レポート

おっすオラ無職。とりあえず正式なジョブタイトルが「無職」に変わってから無事一ヶ月が経ちました。なかなか面白い経験をしていると思うので、記録しておきます。

今回職安にコンタクトを取るきっかけになったのは、育休代理の仕事期間が終わって、すぐにはその次に始められる仕事が見つからなかったからです。転職活動は見事に失敗したものの、今の職場からいくつか公募も出てるし、長いことお世話になってる人たちだし、なんとかまあその後の仕事も見つかってほしいなぁと思っていたけどまぁ甘かった。

失業保険がもらえるようになるために必要な1ヶ月20日分の仕事が見つからないまま、失業という大海に放り込まれたわけです。たったの10ヶ月とはいえ仕事はしていたので、職を失ったら職安に行かないといけない決まりがありました。というわけで、義務でなければ一生避け続けたであろう場所に足を踏み入れたわけです。外国人であっても特に補償に制限はないようでした。

悪評はいくつか耳にしていたのですが、ベルリンの役所のラスボス外人局と比べると、全然比較になりません。オンラインでちゃんと申請書が書けるし書類も提出できるし、なによりちゃんと返事も来る…!こちらからお願いすることもないまま、招待状が送られてきたのでその日に大人しく召喚されたというわけです。

さて、職員との個人セッションでは驚くほど快適な時間が流れ、かなり親身に相談に乗ってもらえました。(注: ドイツ語の会話なので、英語しかできない・もしくは初級会話のみだとかなり違う経験になると思います。)

噂に聞いていた職業訓練への鍵を手にするため、少々情報収集はしていたのですが、それでは事足りずまずは集団オリエンテーションに送られました。これがなかなか面白くて、大学で受けたアカデミア職から脱出しようとしている人向けのワークショップとは一線を画していました(これは講師が鬱っぽくてすごい暗い雰囲気だった思い出)。

ワークショップというと、昔は好んで参加していたのですが、最近はクオリティーにガッカリすることがありすぎて苦手意識しか感じないようになっていました。が、就職活動が上手くいかず自己肯定感をゴリゴリに削られた後なので、今の状況を俯瞰的に見て、どうやったら次のステップに進めるのか、というかそもそも次はどこに踏み出せばいいのかをはっきりさせるための思考の持っていき方を学べるのはありがたいです。

どんなすごい方法が…?と思うかもしれませんが、12人の人間が集まって、各々ただひたすら紙に書いてある質問を読んで、正直に答えを書いていくだけ。しかも特に謎の意見交換や励まし合いみたいなことはさせられません。唯一自己開示が必要だったのは、自己紹介の時間のみ。ついこの前まで自分はどん底だと信じ込んでいたけど、いろんな教育課程やキャリアパスがあること、他にも似たような状況・もしくは自分よりもずっと厳しい状況で戦ってきた人がいることを目の当たりにすると、自己憐憫モードがちょっとずつアホらしくなってくるものです。

職安という場所柄なかなかパンチがある人が集まるものですが、ショック療法的な一面も大きいのかもしれません。恐れていた集団カウンセリング状態にさせられることもなく、案外気楽なものです。なんせ、全然知らない人とペアにさせられ、自分の人生の軌跡をわざわざ晒さないといけないのはかなりの苦痛が伴うものです。あんたのコメントなんか興味ないし、何にも繋がらないんですが、と思うほかなく。

4日間、午前中に集まって講師の話をジーッと聞いているだけで一日が終わっているのですが、合間合間に自己分析やケーススタディなんかもちょっと練習します。話される内容は、将来性のあると言われている職業分野についてや、WeiterbildungとUmschulungの違い、基本的にコストは職安が負担してくれることなどなどなど。どうやら講師の一番の仕事は、参加者にできるだけ合ったコースを探して、それをおすすめすることらしいです。それを職安に渡して、職業訓練への道が開けるとのこと。

参加者を見ていて気付いたのは、どの社会にも本当にいろんな状況の人がいること。修士卒は2人しかおらず、大卒者でも4人(参加者の1/3)、外国人は私も含めて6人(参加者の半分)。  気づいたら大学関係の友達や同僚しかいなかった状況から一転、今まで見てきた世界の狭さを思い知らされた瞬間でもありました。そりゃそんな狭い場所で椅子取りゲームをさせられても、楽しくないしエネルギーが吸い取られるだけだもの。

気づかないうちに視野狭窄に陥るのは怖いなぁと思いつつ、次にまた新しい環境を手にしたらきっと同じように凝り固まるのかなぁ、と思わずにはいられないです。でも、別にどんな状況もどん詰まりじゃないし、いざという時には頼れる場所があると知れたのはいい経験になりました。

私はまだこれから何がどう転ぶか分からずあんまり油断できない状態なのですが、むしろ障害が多ければ多いほど燃えるというもの(であってほしい)。少なくとも、茫然自失の状態から少しずつエネルギーのある人間に戻ってきているのを感じます。無職の1番の敵は孤独感。きっとこれがわかっているからこそ、職安でもわざわざグループセッションに参加者を送るんだろうなぁと思いながら。


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