認知症を悪化させないための行動

認知症

看護師という職業柄、
もちろん知識や現場で接することを重ねてきたわけですが、
最近、初期認知症の父に付き添っていると、
あまりにその行動やその原因がドンピシャなので、
1人で「そうそう、その通り!」と心で叫んでいることも多いです。

その中で、
最近読んだ認知症関連の論文には、結構励まされた気分になりました。

BPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)
という認知症の行動・心理症状を意味する言葉があります。

例えば、心理面でいえば、誰かに見られている、何かが見えるといった妄想や幻聴、感情の抑うつや不安、同じ事を繰り返し聞く、睡眠障害などの症状があり、
行動面では、徘徊や落ち着きのなさ、ものをなくしたり壊したり、攻撃的になる、パニックを起こすなど。

BPSDは、認知症の人には多く見受けられますが、
実は認知症でない高齢者の方でも、BPSDの症状はあって、
要支援1,2の人でも多く認められるといいます。

この論文の研究では、
要支援の人が要介護にならないようにするポイントとして
・日常の意思決定、
・薬の内服、
・金銭の管理
・歩行
について書かれていました。

実は、この4点
うちの父、すべてやっていたのです。

昔は、父の強引というか、強い物言いが嫌いで、
子供の頃は普通に、父嫌いの反抗期でした(;^_^A
でも今はそれが功を奏して(?)
病院の先生にも「はっきり自分の意見を言ってくれるので、わかりやすいです」と逆に褒められてしまいました。

今でも「延命治療はしない!」の口ぐせですが、
それをしつこいくらい言い続けて、はっきり宣言していますし、
自分でやることは「自分でやるから」といい、
私たちに頼む事は「よろしくな」「すまんな」と
まさに自分の意思決定、主張がはっきりしているのです。

薬は、というと、
これはかなり面白いです。
私たちがすぐに思いつく「服薬カレンダー」などという
洗練された方法とは、まったく違う、独特の管理方法です。
しかしながら、この自分の方法が定着してくると、
普段の生活の中では、本当に自己管理で内服しています。
私は在宅診療後、処方された薬をもらいに行き、
中身を一緒に確認する程度。
一緒にいる母ですら、あまり関わっていません。

金銭の管理については、まさに父の独占仕事。
今でも毎日株価をチェックし、
金銭管理はもちろん、資産管理も自分で行っていて、
母には自分がいなくなった後、無駄遣いするな、と
言い含めるほどです。

そして、歩行は、あの歳の体力にしては、
最強の部類に入れてもいいのではないでしょうか。
とにかくよく歩き、
今のようなおしゃれな筋トレではありませんが、
根本的な筋トレ、運動という面では、
本当によくやっていて、すごいなと思います。

自分で認知症を自覚し、
完全に記憶から消えてしまった事柄を周りに指摘されながら、の生活は、
本当に不安だと思います。

認知症というと
ケアする側の視点で考えたり、語られたりすることが多いですが、
実際、本人が一番不安で心細い状況であり、
その心理状態を周りがどれだけ理解できるか。
もしくは理解するように努めれるか。

この気づきが、何よりも認知症ケアの根本だと思います。

そして今回この論文を読んだ時、感じたのは、
意識的なのか、無意識なのかわかりませんが、
父が認知症と闘っている姿でした。
病気を自覚し、
薬も飲んで、
自分でできることをしっかりやって、結果的に今以上に悪化させないような行動に結びついている。

もしここを頑張ってくれていなければ、
もっと進行が早まっているかもしれません。

頑張っている姿に『感謝』の一言なのです。


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