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現代芸術と額縁の関係は 2

  私の普通の日々から生まれた まとめ。
  作品を額に入れること、眺めること、を仕事としている。
  美術館でも、たまには見る。でも、どちらかといったら自らの、他者にとっての私的な観点に折に触れ、考え始めたことの まとめです。

“現代アートと額の関係性を考えて4つ、箇条書きに書き起こしたところまで。

1.支持体の多様性
2.額も作品も自然の中で作っているもの
3.長く飾ることを楽しむ
4.額への興味”

2.額も作品も自然の中で作っているもの

  言いかえては褪色(たいしょく) など
時が経つにつれての作品劣化に対する自論をまとめます。

  額装の意義は、作品を護り 現存の状態を長く保つこと。現代アートの額装におかれては この動機が多いことを実際の場面で感じています。
 展示のみであれば 額を介さずともギャラリーの空間で調和をとる表現が合理的なのは、先に書いた通りで、作家が作品展示に額の存在を重視していないことは現代アートの特長と言える。実際の額装は『額の存在感を薄め装着する』仕事となります。

 個人の感覚の度合いや、作品の個性によるだろう話ですが、私の場合、経年変化のそれ自体は、額装しちゃえば恐れてたようなデリケートな感覚は、あんまり引きずりませんでした。自宅で色々飾っている間に、作品が褪色したな、とか波打ったな、とか直面することも珍しくありません。もっと、気をつけてればこうだったな。とか思います。それについて、意外と後悔の念はないです。仕事柄、立場のせいはもしかするとあるけれど、受け入れられるものです。
 真剣に考えて、当時の私が丁度良いと思ってこだわって納得して作品に額を装った。それを「この絵はこの空間に、」と壁に掛けた日から、暮らしとともに馴染んでいった風味。
これって、怖いことないのです。自分のものだから。
 こだわった方が良いのは、作品に合った素材を選んで付けておくことだと思います。元来、モノが風化し馴染んでいく姿には、ちゃんと美しさを感じられるのですね。
 手入れは必要です。やたら掃除するとかではなく、どちらかというと鑑賞する気持ちの方で。
 なんとなく違和感があれば見つめたり、触れたり、その感覚の点検をします。だんだんと染みもキズも味になります。

 そういった意味では、なるべく額装するときに納得できるグレードの素材を選んでおくことは意義あることだと思います。
とくに、作品に直接触る部材、オーバーマットやバックマットです。大げさでなくてもいいと思いますが、適切なものをあてるのは必須で、洋服で言えば肌着にあたるんじゃないかと思います。

グレージングについて
グレージングとなるアクリル板は
一枚、透明色のフィルターが作品の上にかかる感じになる。
無色透明なら無意識でよい話ではなく、ここではさらに掘り下げるべき部材です。

作品は何も付けないまま鑑賞するのがいちばん視えている、と思えばグレージングの選択は侮れない。現在は5種以上によび分け、オーダーが可能です。

普及版のアクリルはほんの少しだけ、画面を暗くさせます。中の作品の色によっては印象を左右させます。

製造方法のちがいで、押し出しのアクリル板と比較し、一枚一枚製造されるキャスト板は質量も堅く、厚さが3ミリになると重厚感が増します。
大きい面積をとる場合に歪みを回避するためキャストが必須になりますが、モノの観点から見るとアクリルのツヤ、存在感が作品の上に被るので作品に深みが出るような気がします。
描き上がった絵にバーニッシュを塗って仕上げるそれのような、作品の見えかたには違いが生まれます。

オーダー用のアクリル板はUVカットが複数あり約99%のUVカットの効果で、より長く経年変化から作品保護をする特長を取り上げられることが多く見受けています。これにもグレードがあります。サングラスとか日傘とかと同様で永続的ではないそうです。他メーカー同士での解析データはないので話によると、条件により2、3年や10年などで徐々におちていき半分くらいになるとか。(アバウトですみません、的確な根拠を持っていないので)
普及のアクリル板でも何もないより6、7割はカットします。ガラスはUVを透過します。

UVに関する機能は、ある程度までと思っております。

私は、グレージングのことを作品の上面に重なる透明のフィルターだと見ています。
額装は時を経て作品鑑賞する現体験の一部分です。

選択肢の中から質感を作品表現に寄せて似合わせる事が
本来最重要にしたいことだと私は結論しました。
外気から保護することも大切ですが、並んで作品に似合う質感、量感にすると一層引き立つ見込みがあります。
額は作品からいちばん近いところで、一つのモノとして時間を経ていく。
存在感を限りなく削ぐとしても、存在しています。アクリルは額装の選択肢のあくまで一部です。

TruVue社のアクリル板は押し出しですが色被りのなさが優れています。ほかのは多少の黄色味などがあり、断面を見たり作品の上にかざして相性を確認すると良いです。

ミュージアムアクリル
低反射で飾る位置によっては本当に何も入ってないかという程に作品を鑑賞することができます。世界の美術館で使われているそうで、高額ですが額縁店で個人購入が可能です。
傷もつきにくく、静電気も抑える。
汚れを吸い付けにくいためクリアな状態を保てることにつながるかもしれません。というのも、個人所有してないために予測なのですが、アクリル板は飾るうちに汚れるため、時々拭きあげています。もしかしたら指紋あとが付くと目立ち易いことが難点になるかもなぁ、と思っています。
日常どのような場面に掛けるかを想定して選ぶといいと思います。

低反射は作品外の光の写りこみを青っぽい色に変えて視覚的に鑑賞しやすくしてるみたいです。
浮かせなどの立体額装、全体に深い色彩の作品や、質感の繊細な作品にはとりわけて効果があります。
すりガラスのような低反射アクリルもあります。バーニッシュで言うとマットなタイプです。和紙に水墨などが個人的に相性が良いと感じました。

グレージングは従来はガラスから今はアクリルが中心になり、5種類以上はあると思います。

押出、キャスト 1.5〜3ミリの厚さ
UVカット率(90%以上〜99%)の耐久年数
色被りの無さ、低反射、帯電性

ガラスも、UVカットガラスもあります。
厳密にはプラスチックは空気を透過する素材ですので、ガラスの質量が好ましい場合にはオーダーすることができます。

 グレージングはミュージアム用になると額縁の価格を上回る部材になっています。日常気にかけることが透明なだけにあまりないと思うので、店では実際にサンプルを出してもらって、作品の上にかざして感覚のちがいを捉えつつ
全体を決めていくのが良いと思います。

 さいごに、このグレージングのせつめいを長々と書くのは、私にとって難儀な作業でこれのために投稿がとまっていました。説明書ならメーカーのサイトを閲覧すれば良いわけです。
 メーカーのことばではなく自身の額装えらびの経験で、それらの解釈を見い出したかったので、書きとめておく必要がありました。

 端的に言ってしまえば、現代アート風に額ををつけるならアクリルに結構こだわれるよ。という言葉になるのかもしれないです。が日常はそれでいいんです。
 ここにこうして、書き残してあることが私にとっては重要な気がしている、ということです。

オーディオや映像で、クリアな音質とか重低音とか、高品質なものが臨場感を伝えるのに一役かうのと同義なように額装も
現代のアート作品を伝えるための工夫が色々あるのです。

 額装は表だけでなく、側面や背面にも構造があるので
ちょっと言い得ているんではなかろうかと思います。

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