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ルワンダに渡ったスポーツチャンバラ4(頭脳派の戦い方)

私は、現在、ナイロビに住んでいて、年に3回ぐらいはキガリに行き、スポーツチャンバラの指導をしています。まあ、飛行機に乗れば1時間20分で到着するので、日本であれば国内線並みの気軽さです。また、ナイロビでも細々ながらスポチャンを指導しています。こんな風にアフリカでスポチャンを指導していると次のようなことが良く聞かれます。曰く、「アフリカ人は身体能力が高いでしょう」。日本での黒人のイメージといえば、アスリートかミュージシャンなので、まあ、こんなステレオタイプが支配的なのでしょう。これも間違えではなく、確かに、日本で見る初心者よりもアフリカでの初心者の方が、いきなりスパーリングをしても良い戦いをします。でも、これはあくまでも平均値であって、アフリカでも、当然、身体より頭脳派という人も少なくありません。こういう人がスポチャンをやると、当然、身体能力に頼らず、戦法重視の戦いをします。また、身体能力が高くても、上達する人は、やはり頭を良く使っています。

ルワンダでスポチャンを始めた頃に最初からいるコアのメンバーの1人で、ピーターと言う、油絵を描く芸術家がいます。ピーターの背は高いのですが、ヒョロヒョロで、動きは、お世辞にも早いとは言えません。一見すると、スパーリングで絶対に勝てそうもないように見えますが、実際は、屈強で素早く動く相手をよく打ち負かします。彼の勝ちパターンは独特で、ゆっくりと深く踏み込みながら相手の胴を捉えます。なぜ、ゆっくりした攻撃が当たるのか不思議に見えますが、これには人間が攻撃に対して反応するときの心理が関係しています。攻撃には、避けるのに最適な速度というものがあります。これより早い攻撃には反応速度が追いつかず、もらってしまいます。反対に、遅くても避けられないのです。なぜかというと、ゆっくり感じられる攻撃には警戒心が薄れて、自分もゆっくりと反応してしまうためです。ただし、単なるゆっくり攻撃ならば、やはり簡単に避けられます。そこで、攻撃を成功させるには、タイミング、攻撃箇所、もしくは、間合いの騙しを入れる必要があります。言葉では簡単になりますが、実行するには色々と試行錯誤が必要で、それこそ頭を使う必要があります。

ピーターが上に書いたような心理分析まで出来ていたかどうかは分かりません。でも、スポチャンを教えているときに最も多く質問をした生徒は、間違えなくピーターでした。つまり、勝つためには他の生徒よりも数倍も頭を使う必要があったことが伺えます。スポチャンは、一般的な打撃系の武道などと比べると技の範囲が広いので、各々の選手の特徴も出やすくなります。ピーターの戦い方は、その極端な例と言えるでしょう。こんな風に、各々の持ち味が極端に現れるところが、私にとって、スポチャンの持つ大きな魅力の一つになっています。

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