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ルワンダに渡ったスポーツチャンバラ3(課題:脱力と伸び)

2013年の2度目のルワンダ渡航で、いよいよスポチャンの稽古が始まりました。初めは拳法とスポチャンを半々ぐらいで教えていましたが、次第にスポチャンに稽古の比率を移し、また、チームからカンフーの看板を外したことは、前回、書いたとおりです。それでも、拳法のスパーリングは止めたものの、基本鍛錬は最後まで残しました。理由は、自分の身体用法の基礎が中国拳法で培ったものだからです。そのため、自分のスポチャンを教えるためにはその部分が外せないのです。具体的には、スポチャンの源流となっている日本剣術と比べると私の体の使い方は極端に上体を脱力し、そこからスピード、威力、伸びを生み出すのです。

ルワンダで教え始めた生徒たちの多くは体ががっしりとしていて、とても力強い打撃をします。打撃の強さは良いのですが、腕力に頼った振り方で、どうしても腕が縮こまり、10cmぐらいのリーチを損している生徒達が多く見られました。そこで、基礎鍛錬で上体を脱力するような動きを多く取り入れたのですが、いざスパーリングになると腕に無駄な力が入ります。まあ、スパーリングのことはスパーリングで解決するしかないと考えました。そこで、縮こまった振り方をする生徒が負けた時に中断して、手を伸ばしていれば勝てる場面があったことを繰り返し説明しました。

この縮こまった振り方をする代表格がハッサンと言う名の生徒でした。彼は背が低くガッシリとした体格で力強い動きが特徴です。ハッサンとスパーリングするときは、ギリギリの間合いで彼に振らせながら、自分も同時に振ることを続けました。すると、腕が縮こまっているためハッサンの小太刀は空を切り、私の小太刀だけが彼にヒットします。まあ、これを繰り返せばリーチを伸ばすことの重要性は理解できます。その後、ハッサンは、とてもよく伸びる打ち方を身につけ、また、受けからの素早い攻撃によって、背の低さというハンデを克服しました。何度か、試合で良いところまで勝ち進んでいます。

ハッサンは、本業のレストラン経営の方でも、スポチャンのメンバーの役に立っています。先日、実施した講習会の後はハッサンのレストランでランチを堪能しました。また、中等学校を卒業した生徒に料理を教えて、いわば、職業訓練のようなこともやっているし、スポチャンのチームへの金銭的な貢献もしています。このハッサンに限らず、スポチャンのチームのメンバーは、実社会でも助け合っていることを見聞きします。いわば、いろいろな職種と年齢層の集まるチームは、奉仕団体のような機能も果たしているのです。ここでは、私の本業の国際協力のような豊富な資金はありませんが、持てる者が持たざる者に必要なものを与える仕組みが極自然に機能しています。良くも悪くも、私は、予想外に社会的インパクトが強く、重要な事業に関わってしまったと理解した瞬間でした。

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