煮込みと刺身

夜、ひさびさに曲作りをした。少し前から作っている曲で、主にミキシングの作業をした。同じ曲に向き合っていると、だんだん悪いところが目についてくる。きっとそんなに悪いものではないのだろうけれど、耳が無駄に肥えてきてしまうのだ。音楽を作るのはスピードが命。鮮度を落とすとダメだ。オーケストラみたいな超大作を作るならばまだしも、僕が作っているのはヒップホップのビートだ。

鮮度を落とさないとすると、丸一日で作れるような曲しか作れなくなるような気がする。だが、そうではない。自分一人で抱えるターンを短くすることが必要なのだ。自分ができる範囲のことはさっさとやり切って、他人に投げる。僕の場合だと信頼しているラッパーに投げることが主になるわけだが、そこで一度、僕のターンが終わる。作ってから投げるまでの速度を上げなければいけない。

こうやって考えてみると、曲作りは研究のいい息抜きになるかもしれない。研究はとことん時間をかけて、煮詰めて、自己批判して、練り上げていくものだ。少なくとも僕の修士論文はそうだった。そういう頭の使い方をして完成させていく。煮込み料理だ。煮込めば煮込むほど味が出る。反対に、音楽は刺身だと思えばいい。その場で出来上がった作品の魅力を素早くキャッチして処理していく。作業工程がサラッとしている。

しばらく曲作りから離れていたが、今年はリリースも見越して、サクサク制作を進めていくつもりだ。

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