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日記(2022/09/01-02)

木曜日。ゴダール『フォーエヴァー・モーツァルト』見る。戦争映画。爆発が何度もあるがその唐突さもさることながら何よりも「近さ」が凄い、鳴ると分かっていても何度も驚かされる、戦争映画の高揚感はどうしてもある。役者から数尺も離れていない場所で突然に光が上がり爆音が鳴る。音は全く景気のよいものでなく、光の量に比して拍子抜けするくらいに乾いている、それはゴダール後期の喜劇性にマッチしているともいえる、音が乱立するがそのどれもが軽さをもっていて粘りついてこないあのドライな感じ。ところが後半、海辺の映画制作パートになると女優の泣きそうなクロースアップを長く写すなどやや「感傷的」なような雰囲気が漂うのは、ゴダールにしては異様なものに思える。

金曜日。ゴダール『愛の世紀』見る。話が全然分からない……。DVDに付属している蓮實重彦のテキストを読むと「ゴダールは主人公にとって運命的な女性の顔をはっきりと写していない」とあるが、個人的には女性だけでなく全部の登場人物の顔が覚えられない。画面に顔が出てきても毎度毎度「これ誰?」状態。どの場面に出てきた誰なのか、一切覚えられないまま98分の映画を見終えてしまう。でも記憶についての言及が度重なる映画でもある。この徹底的な覚えられなさの秘密は何なのか、トリッキーな編集や複雑な音声設計はいつもに比してむしろ控えめであるはずにも関わらず。カラーパートで写るヘリコプターの信じがたい色彩は特筆しておきたい。アレックス・コックス『レポマン』の光る車体を思わせる青色。


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