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日記(2022/09/11)

日曜日。渋谷シネマヴェーラでジョン・フォード特集『香も高きケンタッキー』。『ジョン・フォード論』読んだからか名場面(名馬面)をもうすでに見た気分になっていたが、全然聞いてなかった交通事故の場面が案外すごい。こんなナチュラルに人を轢く瞬間ある?ってくらい。あと、他の画面に写ってる物と交通事故が同列に扱われているというか、交通事故が特段強調して撮られていない、画面の左らへんで、気を抜いていると見逃してしまうくらいの感じで撮られているように思えるのも不思議。轢かれた人のリアクションも全然撮られていないのも無慈悲で笑ってしまう。

つづいて『三悪人』。燃え上がる荷馬車が斜面を駆け下りてその先の教会に突っ込む、しかも3台も!ここすごい。後半から面白くなった印象。悪徳保安官の姿が窓の外に見えたときの女の叫び顔、というか口の開き具合が凄い。喉ちんこが見えている気がする。ベッドに仰向けで横たわる女の顔が怖いかもしれない、というのは『モホークの太鼓』のクローデット・コルベールでも感じたこと。

道玄坂コンロウでガイヤーン食べて、3本目『肉体』。ファーストカット、女囚たちが広場で円を描いてゆっくり歩く様子を真俯瞰で写す、この異様な雰囲気は何なのか。何らかの宗教映画を思わせるオープニングではあるが、中身は純情男の悪男悪女騙され譚。悪女の改心がはっきりと描かれるような嘘っぽさがない。何やら悪女が次第に優しい心を見せるようになっている感じはするという、この曖昧さがずっと続き、見てると愛おしさと憎らしさを代わる代わる感じるようになる。映画は心を撮すことができないが、鉄格子を挟んで男女が手を握り合い「許しを得る」ことによって初めて間接的な改心を写した画面となる。この決定的な舞台装置と行為があってこそ、悪女の曖昧さも消える。刑務所に始まり刑務所に終わる、宗教的な雰囲気もまたもや立ち上がっている。それにしても今月は『アメリカン・ジゴロ』『スリ』に続いて三本目の「鉄格子越し男女」映画を見た。この鉄格子男女モノが好きだということがはっきりしてきた。万田邦敏『接吻』とか。

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