否応なく"大人"になっていく

祖母が、今月の頭に亡くなった。
その日から大袈裟じゃなくほんとに毎日泣いていて、ほんとに毎日、体が重い。
メンタルは安定しないし、何をしてても喪失感があるというか、絶望というか。

小学生の時から、限界を迎えるとおばあちゃんに電話してた。
もっぱら、「ママと喧嘩した。」が話題だったけど、おばあちゃんはいつも、「頑張っててえらいね、すごいね」って褒めてくれた。
絶対に私を否定しなくて、温かさで包んでくれる人だった。
「だった」、って書くのも、本当は嫌だ。

でもこういう、ちょっとしたところから、こうやって毎日毎日おばあちゃんを思い出すことも少なくなって、平気な顔して、平気なフリして、身内を亡くしたことがある話を誰かにするんだろう。

全然平気じゃない。
「その日から毎日泣いてるよ〜笑、もう泣かないかなーって思うとsilentの放送日でまた泣いちゃう。」なんて、言ってるけど、そうじゃない。
なんでもなく、普通に、「祖母が亡くなって」って口にできる日もあれば、思い出しただけで涙が滲んで、もう何度、通勤、退勤の電車で寝たフリをして顔を伏せて泣いただろう。
お風呂に入ってる時、寝る前、ふと何も考えなくていい時間にあの日のことが、それこそ走馬灯みたいに鮮明に思い起こされる。
未だに受け入れられなくて、未だに、会いに行けば会える気がしてる。

だって本当に、寝てるみたいだったんだもん。
まさか自分が何気なく撮ったおじいちゃんとおばあちゃんと私の3人の自撮りが、おばあちゃんの遺影に使われるなんて思わなかったんだもん。
そんなつもりで撮ってないのに、使わないでよ。
そんなつもりで撮ってないのに、死なないでよ。

本当に寝てるみたいで、いまにも一緒に寝るとちょっとうるさいいびきが聞こえてきそうで、話しかけたら、寝れないの?子守唄歌おうかって、歌ってくれそうで。
どんなに見つめてても起きなくて、呼吸で動くはずの布団は上下しなくて、だって息してないから。

駆けつけた時、寝てるだけなんじゃないかと思ってどんなに布団が動かないか見つめても、動かなかった。
そうやって、「あぁ、ほんとに亡くなったんだ」って打ちのめされて、「ほんとに亡くなったの?」って信じられなくて。まだ、信じられなくて。

昨日まで元気で、昨日までお母さんとビデオ通話してて、使ってる電車が大幅に遅れたってだけで電話してきてくれてたのに。
「言い訳作って電話してたんだ」、なんて、おばあちゃんが亡くなってからおじいちゃんに聞かされた。
言い訳なんか要らなかったのに。いつでも電話してきてよかったのに。いつでも、何でもなくても電話しておけばよかったのに。

道行く救急車の音に怯える。
やらかしたときに「死んだ〜」って言っちゃう自分に失望する。
ずっと倦怠感があって、これはもうおばあちゃんに話聞いてもらおーって思って、あぁ、もう居ないんだって。
だからこんなになってるのに、それを忘れてしまうくらいおばあちゃんが当たり前の存在で、いつでも「大丈夫だよ」って言って、一緒に泣いて、笑ってくれる人で。ねぇなんでいなくなっちゃうの。

出棺のとき、葬儀屋さんに指示を出されるままにテキパキと準備を進めた自分を思い出して、とんでもなく残酷なことをしたような気持ちになる。
自分の手でおばあちゃんの人生を閉じてしまった気持ちになる。
それがどうしてもつらい。つらい。

もう、これ以上辛いことは起こらないでほしい。
もうこれ以上、悲しいことは起こらないでほしい。
こんなに辛いのなら、もう、もうこれ以上時間が進まなければいい。
これ以上、つらいことを重ねたくない。経験したくない。

なのに日々は進むし、変わらずおばあちゃんはいない。

小学校低学年のとき、おばあちゃんと離れたくなくて、初めてひとりでおばあちゃんちにお泊まりをした。家族で泊まりに来たのだけど、私だけ1人残った。
でも寂しくなって、おばあちゃんに抱っこしてもらって、「お迎え来てもらおうか」って。
離れたくないのに帰りたくて。
結局母に迎えに来てもらって帰ったのだけど、子守唄を歌ってもらったのはその時の記憶な気がする。
もう、15年以上前だろうに、おばあちゃんはその日から変わっていないと思っていたし、私も変わってないと思っていた。
15年も経っていれば、もう、だいぶ大人になったはずなのに。
お互い、15も歳を重ねたんだ。

頼る人、心を許してる人、大切な人がどんどんいなくなっていくんだろう。
否応なく時間は進んで、大人になっていく。
こんなことで大人を自覚したくない。

おばあちゃん、会いたいよ。今どこにいるの?
私が大人になるところを、当たり前にそばで見ていてくれると思ってたよ。
この先私に起こりうる出来事を、一緒に見届けてくれると思ってたよ。
きっといつでもそばに居てくれるよ、じゃなくて、当たり前に会えるところにいてほしかったよ。

もう泣き疲れたのに、毎日泣いてるよ。
もう疲れたよ。

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