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波風

彼は感情を理性で整える。それを見ていると私は不思議な気持ちになる。彼は人なのだなと思う。私は自分のことを、木や、風や、雫のようなものだと思っている。何も力を加えない。ただそこに在る。私が自分の感情をありのままに伝えると、彼は波風を立てないでほしいという。私は混乱する。心には波があるのが当たり前だと思っていたから。凪は、作り出すものではない。そこには無風という風が吹いている。最新の注意を払って心の凪を守り続ける彼に、私はいう。そろそろ行くね。私たち二人は前提が違う。私は波を愛する。もちろん凪も。どちらでもいい。乱れても乱れなくても。それが自然なことであるなら。

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