人狼ゲームで強くなるために。(中)


(上)からの続きです。



6 身体、表情、目の動き

 初日の序盤に、動作や姿勢、表情などを理由に現時点で怪しい人を各プレイヤーが挙げていく、という展開になることがあります。
 その際に「怪しい要素」として指摘されやすいのは、たとえば以下のような事柄です。

「視線が定まらない」「周りを見ようとしていない」
「身体の動きが硬い」「落ち着きなく身体を始終動かしている」
「不自然にリラックスしている」「不自然に緊張している」
「押し黙っている」「テンションが高く、発言が多い」

 要するに、どのような挙動であっても「怪しい」と指摘することは可能です。初日のこのようなやりとりは、議論を進めるきっかけを作ることにねらいがあるので、挙動を理由に怪しまれても、動揺することなく落ち着いて発言をしていけばよいでしょう(指摘を受けて動揺してしまうと、本当に何か隠しごとがありそうだという印象を持たれてしまいます)。

 挙動の怪しさを指摘されても過度に気にする必要はない一方で、「自分の挙動や姿勢、表情を他人にどう見せたいか」について意識を払うことは重要でしょう。落ち着いてどっしり構えているように見てほしいのか、フットワークの軽さを演出したいのか、色々な人に気を配っているように見せたいのか、特定の人物に注視している様を動作からアピールしたいのか、COするタイミングを測っていると思われたいのか……状況や配役によって「見せたい自分」は様々です。
 特に初日は、「いま、自分は周囲からどんな人だと思ってほしいのか」を念頭に置いて自分の挙動をコントロールすると、その後の議論の際に挙動と発言の一貫性を保ちやすく、信頼を得やすくなるでしょう。


 なお、身体を固定するものや視界を遮るものが少ない環境だと、良くも悪くも各プレイヤーの挙動は分かりやすくなります。
 具体的には、

テーブルと椅子<背もたれのある椅子のみ<背もたれのない椅子のみ<床に直接座る環境

の順で、お互いの動きが見えやすくなり、挙動が強い印象を与えることになります。
 特に、和室などの環境でゲームをするときは、自分の動きがどう見られるかについて普段以上に注意して振る舞うとよいでしょう(和室で遊んでいて、普通に座っていただけだったのに「両手を後ろにつき、身体を弛緩させている。襲撃される心配をしていない人狼っぽい」のような理由で初日に追放された経験、ありませんか?)。




7 身の潔白を主張するとき

 「もし私が狼だとしたら、○○のような行動を取るはずがない。よって、私は狼ではない」

 自分が狼でないことを主張するために、よく使われる論法です。しかし、多くの人に経験があると思いますが、「確定霊媒から人狼判定を受けたプレイヤーに決定票を投じていた」などよほど強力な根拠がない限り、この論法で相手が考えを変えてくれることはなかなかありません。
 なぜかというと、あなたにとって自分が人狼でないことは明白であり、「○○のような行動」が100%人狼を追い詰めるための行動であっても、相手からすると

「『○○のような行動』には人狼にとって隠されたメリットがあるかもしれない。結論ありきの話で自分を誘導しようとしているのではないか?」

という疑いを拭いきれないからです。
 このような論法を取られた相手は、あなたが検討すべき全ての情報を開示していないと感じ、あなたに対して信頼できない話し手であるという印象を抱きます。一方、あなたは「この発言で自分の潔白を証明できる」と思って発言するわけですから、それを受け入れてくれない相手に対して不信感を持つでしょう。あなたと相手の双方が村人だった場合、両者間に生じる相互不信を人狼に利用される可能性は高い、と言えます。


 では、どのように伝えればよいのでしょうか。

「私が取った○○の行動には、もし私が人狼だとしたときに、××のような人狼に対してのデメリットがある」

という事実に焦点を絞って伝えるとよいでしょう。相手に判断材料を与え、判断そのものは相手に預ける。そのような話し方を選ぶことで、相手から「自分を誘導しようとしているのではないか」という疑念を持たれる可能性を下げることができます。

 もちろん、場合によってはリスクを取ってでも強く相手を誘導しなければならないこともあるでしょう。しかし、そこまで切迫した状況でないのなら、相手からの信頼度が下がりかねない言動を避けることは常に重要です。




8-1 敵対的な質問、友好的な質問

 一般に、Why形式の質問は語調が鋭くなりやすく、純粋な質問というよりも相手の非を責めるニュアンスが強くなります(お母さんに「どうしてまだ宿題やってないの?」と言われたときのことを思い出してみてください。お母さんは、あなたに対して単純に宿題をやっていない理由を聞いているのでしょうか?)。
 それに対して、What形式またはHow形式の質問では、比較的ニュートラルに聞きたいことを尋ねているという印象を持たれやすくなります。

(1)「あなたは、どうして昨日Aさんに投票したのですか?」
(2)「あなたが昨日Aさんに投票した理由を教えてください」
(3)「あなたは、どんな風に考えて昨日Aさんに投票したのですか?」

(1)には、言外に「そうすべきでなかったにもかかわらず」というメッセージが含まれています。このように言われた相手は、質問されているというよりも「昨日Aさんに投票すべきでなかったという考えを押しつけられ、責められている」という解釈をしてしまいがちです。相手はあなたに対して反発心を抱き、あなたを信頼できない話し手と判断するかもしれません。
 それに対して、(2)(3)の質問形式は単に聞きたいことを聞いている以上のニュアンスを持たないことに加え、語調を抑えて穏やかに尋ねることで「あなたを尊重している」というメッセージを付け加えることもできるので、相手からの誠実な回答を得やすくなるでしょう。


 味方になってほしい人に対して聞きたいことがある時は、(1)のようなWhy形式の質問は避けるべきでしょう。特に、確定村人に対してこのような形式の質問をすると、村全体から信頼を失いやすいので、注意が必要です。
 その一方で、疑っている相手や明確な敵に対して、Why形式の敵対的な質問をすることで戦う姿勢を周囲にアピールしたり、相手の反発を敢えて買って「質問に対して正面から答えようとしない」態度を引き出し、他プレイヤーの相手に対する信頼度を下げさせるなど、敵対的な質問が有効に働く場面も多々あります。
 敵対的な質問と友好的な質問を、場面や状況に応じて使い分けることができるようにするとよいでしょう。



8-2 より攻撃的な質問

 人狼ゲームにおける質問の方法として、前段で挙げたものと別に「事実に関する短い質問を矢継ぎ早に重ねていく」形式があります。

「昨日、Aさんは誰に投票していましたか?」
「Aさんは2人の占い師どちらから白をもらっていましたか?」
「ではBさんは?」
「決選投票ではどうでしたか?」

 このようなものです。多くの場合、畳み掛けることで相手の余裕と考える力を奪い、ミスや人狼の視点漏れを誘う目的で行われます。


 場面によっては非常に有効である反面、Why形式の質問よりも更に敵対的な印象を相手に与えるだけでなく、他プレイヤーからの印象も悪くなることがあります(相手に十分な余裕を与えない=フェアでない、と思われるためです)。このような形式の質問をする場合は、敵対的な質問よりも更に注意が必要でしょう。




9 敵対的な反論、友好的な反論

 相手の発言に対して反論するとき、「でも」から発言を始める場合と、「ただ」から発言を始める場合とがあります。


 前者は、相手の発言(と相手自身)に対する強い否定と反発のニュアンスを持ちます。当然、相手のあなたに対する印象は悪化するでしょう。場合によっては、相手はあなたの発言内容を精査することなく、発言形式から受けた印象だけであなたと敵対することを決定してしまうこともあり得ます。
 しかし、相手が最初から敵だと分かっているならば、反発と敵対的態度の表明として「でも」を使って強く反論してみせることも有効です。「敵の敵は味方」ということで、あなたの敵を疑う第三者があなたを信頼してくれるかもしれません。

 その一方、「ただ」から始まる反論は、いったん相手の発言を受け止め、認めつつも新たな判断材料を示して再考を促す意味合いを帯びます。

「あなたの言いたいことはわかる。ただし、こちらの話も聞いてほしい。その上で、改めて考えてみてほしい」

 というメッセージが「ただ」には込めやすいということです。相手はあなたの発言内容そのものを検討しやすくなるでしょう。

  相手が確定村人なのか、村人らしき人なのか。人狼ではないかと疑っている相手なのか、明確にあなたと敵対しているのか。いま、相手はあなたを村人と見ているのか、人狼と見ているのか。相手と自分との関係を考えながら、「でも」と「ただ」を使い分けるとよいでしょう。




 長くなってしまいました。さらに(下)へ続きます。



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