実験小説『さんすうの文章題』

【もんだい】


つとむくんはお母さんにケーキのおつかいをたのまれました。つとむくんは1000円もって、670メートルはなれたケーキ屋さんにいきました。
いちごのショートケーキはホールで1つ2500円でした。
かしこいつとむくんは1500円足りないとすぐにわかりました。
「まけてください」とつとむくんは言いました。
ケーキ屋さんは「できない」とことわりました。
カチンときたつとむくんはウソをつきました。
「きょうはお母さんのたんじょうびなんです。がんでもうすぐ死んでしまうんです。さいごのたんじょうびにおいしいケーキを食べさせてあげたいんです」と言って、なみだを流しました。
ケーキ屋さんはまんまとだまされて、
「2000円でいいよ」となみだをうかべながら言いました。
つとむくんはシメシメと思いましたが、まだ1000円足りないとすぐにわかりました。
かしこいつとむくんはまたうまいことを思いつきました。
「ありがとうございます。お母さん、よろこびます。1つください」と言いました。
ケーキ屋さんはなみだを流しながら、ケーキをわたしました。
つとむくんもなみだを流しながら、2000円をわたしました。
つとむくんは「ありがとうございます」と言いながら、ケーキ屋を飛び出しました。
「いいことをした」とかんがいにひたるケーキ屋さんはなみだをふきました。
お金をよく見ると、1000円札の下にあったのはよくできたこども銀行の1000円でした。
つとむくんはほくほく顔で走っていました。1500円得したので、お母さんにほめられると、よろこんでいました。きっと2回はほめられると思いました。
おうちまで50メートルというところで、怒声がきこえました。
ケーキ屋さんがおっかけてきていました。
15年のパティシエ人生で1度もみせたことのない怒りをあらわにしていました。
手には15年つかっているよく切れるケーキナイフをもっていました。
つとむくんは50メートル6.8秒のじまんの俊足でおうちまで走りました。
ドアノブに手をかけたとき、ケーキ屋さんにつかまりました。
ケーキ屋さんは全盛期は50メートル5.7秒の元陸上選手で、けがでなくなく陸上をあきらめざるを得なくなり、引退を決意したその夜、いままでひかえていたスイーツをやけぐいしているときに、そのあまりのおいしさに「おれは日本で1番のパティシエになる」と第2の人生をあゆみ、いまでは20㎏もたいじゅうがふえていたが、このときばかりはいかりのあまり、50メートル5.6秒のベストタイムのはやさで走れたので、つとむくんにおいつけました。
ケーキ屋さんはどなりちらしました。
さついを感じたつとむくんは、かしこいので、めくらましにさっき買ったケーキをドリフさながらにケーキ屋さんの顔に投げつけました。
ケーキ屋さんは顔についたクリームをぬぐいながら、ちょっとなめました。とても美味でした。
上品ですっきりとした甘さとやさしい舌触り。「理想のクリームだ。おれの人生はまちがってなかった」ととてもしあわせなきもちになりました。
そのすきにつとむくんはドアあけ、お母さんにたすけをもとめました。
そっと顔を出したお母さんは、とてもかしこいので、すぐに状況をさっし、「こんな子は知りません」と言ってドアをしめました。
つとむくんは東京ドーム100こ分、いやマグニテュード8並み、いやいや100万光年分の・・・どんな尺度でも言いあらわせない絶望を感じました。そしてつとむくんはケーキ屋さんからケーキナイフをうばいとり、しあわせなきもちでいっぱいのケーキ屋さんのはらをさしました。3回さしました。

つとむくんはさぎとしょうがいの罪でけいむしょにいきました。

8年後、つとむくんはけいむしょの大きなとびらから出てきました。つとむくんはしどうされたとおり、からだを45度におり、けいむかんにあたまをふかぶかとさげました。
まわりにはだれもいませんでした。つとむくん1人でした。晴天の100000ルクスのひざしに目をほそめました。
たよれる人はだれもいないので、とてもふあんなきもちでした。
つとむくんはけいむしょでなかよくなったゆたかくんとまさるくんのことを思い出しました。
「もうここにもどってくるんじゃないぞ」という2人のわかれのことばを思い出し、なみだがとまりませんでした。
つとむくんはどうしたらいいかとほうにくれました。まさるくんの「しゃばに出たらいってみるといい」ということばを思い出しました。まさるくんおすすめの「平日昼なら10000円でまんぞくいくさーびすをうけれるりょうしんてきなふうぞくてん」にいくことにしました。
つとむくんは顔をほころばせ、けいむしょの10メートルある高いかべにそってあるいていきました。

1年後、つとむくんはまたけいむしょにもどってきました。
ていしょくにつけず、ふうぞくがよいをかさね、お金にこまったつとむくんはゆたかくんにおしえてもらったぴっきんぐのぎじゅつであきすをくりかえしていました。そして8回目のとき、つかまりました。
つとむくんはほっとしました。まさるくんやゆたかくんにまたあえると思ったのでした。
つとむくんは1年ぶりにまさるくんとゆたかくんにさいかいしました。まさるくんとゆたかくんは「もうここにもどってくるなって言ったじゃないか!」となみだをながしながら、つとむくんをつよくだきしめました。まさるくんは31ニュートン、ゆたかくんは27ニュートンの力でだきしめました。2人で58ニュートンなので、つとむくんはとても痛かったのでした。なみだをながしました。いつまでもなみだがとまりませんでした。なぜなら、そのなみだは痛さのせいだけではなかったからでした。

さて、つとむくんは今なん才でしょうか?






こたえ  46才


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【追試】


かしこいエルディくんは、課金してこたえを見れるようにすれば、かねもうけできると思いました。
しかし、せっかく課金してまで見たこたえがこんなナンセンスなものだと、くれーむがくるににちがいないとエルディくんはよわきになって、投げ銭方式にすることにしました。

よくよくかんがえてみると、こんなふざけたものに投げ銭してくれる人はいるのだろうかと、エルディくんはふあんになりました。いやいや、ふざけてはいるけれども、ぜんりょくでふざけているので、それをおもしろがってくれる人は世の中に数人はいるにちがいないとも思いました。

・缶コーヒー1杯分くらいの気分転換にはなったという人
・今月はふところがあったかいからまあいいかという人
・エルディくんはきっと社会不適合で職を転々とし苦労しているにちがいないとあわれんでくれる人
・こんなバカバカしいことを真剣にかんがえるエルディくんは、オオサンショウウオみたいにどう価値があるのかわからないけれど、レッドリストにのるような希少生物だろうから、保護のために寄付してくれる人

こんなやさしい人たちが投げ銭してくれるかもしれないと思いました。
ものごいみたいだなと思いつつ、わずか100円だとしても、それでスタバやタリーズでショートをトールに、トールをグランデにかえることができればしあわせだなと思いました。
それに、この真剣なバカバカしさを楽しいと思える人に出会えること、それが一番のしあわせだと思いました。
面白いと思ってくれたかたは投げ銭してくれなくても、「スキ」や「コメント」をのこしてほしい、またリンクをはるなりして、世界のかたすみにひっそり生息しているエルディくんのような希少生物に紹介してほしいと思いました。

さて、エルディくんと同じ希少生物はなん人いるでしょうか?


(おしまい)

最後まで読んでいただき誠にありがとうございます。
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