オレンジデー祭りの自作品を語る

はじめに

『ブーン系オレンジデー祭り2024』、お疲れ様でした!
去年の秋祭りに続いて、二回目の祭り参加でした。楽しかった!
読んで下さった方、これから読んで下さる方、票を入れて下さった方、感想下さった方、本当にありがとうございました~!!

書いた作品

今回の祭りでは

・(,,゚Д゚)大体、友愛、冷戦地のようです(゚ー゚*)
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1714231452/
・( ゚д゚ )絵描きとヴィオラのようですミセ*゚ー゚)リ
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1714317818/

の2作品で参加させていただきました。
読んで下さった方、本当にありがとうございました!

秋祭りに引き続き、二度目のお祭り参加でしたがまぁ〜〜色々とやらかしてしまいました。
いや違うんです、色々理由があるんです、色々ありすぎてちょっとここで全部は書けないんですけど結論から述べさせて頂くと傘泥棒が悪いんです。
あのですね、祭り期間中に傘盗まれたんですよね、学生の頃からずっと使ってるちょっとお高めの良い傘が。取り返せたんですけどまぁ〜それに時間がかかっちゃって…だから傘泥棒が悪いんですよ。僕悪くないんですよ。仕方なかったんですよ。てへぺろって感じですね〜〜!

はい、すいません僕が悪いです思いっきり遅刻しましたもう二度とこんなことはしません許してください以後こんなことがないよう注意します本っっ当にすいませんでした…。「祭りやるよ!」って決まった時からコツコツ書いてはいたんですけど、リアルがめためたに忙しくなったのと、後述するヴィオラの書き直しに凄く時間がかかっちゃって…。やっぱりちゃんとプロット組んでから書かないとダメですね。反省反省〜!次に活かそ〜!上を向いて歩こう~!!

そういえば、今回の祭りも多作品書かれた方が多かったみたいですね。はい俺の時、スレで4作品書かれた方がいらっしゃって「え!?すご~い!」ってなった次の瞬間に6作品書かれた方が顕現なさってもう「ワ……ワァ……」ってなった。作者様のTwitter見たらどうやら分身されてたみたいです。そりゃ勝てる訳ないわ。だって分身だよ?もうズルとかの次元じゃないやん。無理無理、僕人間だもの。
しかも、僕と同じ遅刻組のお方であらせられたんですよ。もうさ、「ビニールプール(ヴィオラと同じ遅刻作品)の作者誰だろ!?一緒に皆に謝りに行こうぜ!いや~一人で謝りにいくの嫌でさ~!!」的な、補習に呼び出された高校生みたいな気持ちだったのに、まさか他にも五作品も期間内に投下された方とは思わんやん。もう完全に梯子外された気分でした。泣いたもんね。一人で職員室行くことにします…チクショウ裏切りだぁ……。

あ、もちろん前回の秋祭り同様、当然のように二作品とも作者バレしてた。まぁ、今回は正直隠す気なかったです。だってどうせバレるんだもん。
実際なんでバレるんでしょうね?日本酒をよく作品に出すから?花の描写のせい?文章の癖?文字数?でも前回の水族館なんて全然文体違うのにバレたもんな。じゃあもうどうしようもねーや。諦めよ、試合終了です。対あり。切断します。

『大体、友愛、冷戦地』について

これはヴィオラを書いてる途中の息抜きに書いてた話です。というか昔書いてそのままにしてた話に色々と肉付けをしただけなので、かかった時間でいえばヴィオラの10分の1もない。

祭りのテーマが『恋愛』ということで、何か一つ、凄く分かりやすい男女の話を書こうと思ったんです。でもちょっとリアルが忙しかったのと、ヴィオラに凄く手を加えたくなったせいで滞ってたんですよね。
そこで思いついたんです。「あ、そういえば昔趣味で書いてた話いっぱいあるやん」って。埃被ってたUSBメモリを漁ってたら丁度いいのがあったんで、それに色々付け足しました。モナーやモララーは元々いなかったキャラクターだし、しぃの”絵本作家”という設定も後から考えたものです。

ギコ君が医学部の学生で凄く勉強頑張ってる子という設定なので、しぃもただ”身体が弱い女の子”ってだけじゃつり合いが取れないと思ったんですよね。それで”絵本作家としても頑張っている”、”車椅子で動くのがデフォで、ギコに恋心だけじゃなく負い目も感じている”って背景を加えました。
ギコの医学部という設定は、そのうち書きたいな~と思ってる長編で医者の話を出したいからです。ちょっと練習がてら医学系の描写や設定がちらっと出る話を書こうと思って。ちなみに、その長編はプロット含めま~~ったくなんにも出来てません。多分今年の冬くらいから書き始めるんじゃないかな。だって忙しいんだもん。社会が悪い。無職になりてぇ~~。

タイトルはもう、毎度のように凄く拘っています。
メインの『大体、友愛』は、恋愛感情を奥底に秘めた「友情」だし、”冷戦地”は喧嘩で冷えた二人の関係と、長野の冬という寒い場所を表している。
で、二人がめでたく結ばれたラストの黄色いデンファレが夕日を反射する景色と、ラストの時間帯が『橙』、ギコとしぃという二人のお話なので『You&I』、で、最後にキスするんで『0センチ』でした。

あと拘ったのはこれも毎度の如く終わり方ですね。僕は作品作りにおいて、タイトルと終わり方さえ秀逸なら他がどれだけ稚拙でも構わないと思っている人間なので。
友愛のラストなんですけど、「恋愛小説?そんなん最後にチューさせりゃええやろ~!ひゅ~!」みたいな超軽いノリで考えました。え、だって恋愛の最後ってチューでしょ?何ですか?僕何か間違ってます?(曇りなき眼)

それと、長野って場所を選んだのは僕が数週間だけ住んだことがあるからですね。めっちゃ良い所なんですよ長野。果物美味しいし、日本酒美味しいし、長野駅の周りに美味しいケーキ屋さんあるし……あれ、食べ物ばっかだな。他は…なんか、ほら、あれよ…雪降るし……緑多いし……と、とにかく良い所なんですよ。本当ですよ。やめろそんな目で見るな良い所だっつってんだろ疑うなッ!!!

花の栞をヴィオラでも友愛でも出したのは、対比の為でもあります。片方は結ばれて、もう片方は結ばれない。でもヴィオラと違って友愛は絶対ハッピーエンドにしようって決めてたので、うまく終えられて良かったです。

あと、好きなものもいっぱい詰め込みましたね。
デンファレは僕が一番好きな花だし、押し花で作る栞をあげるっていうのも実体験だし、”信濃鶴”は長野の地酒で一番好きなお酒だし、何より幼馴染って関係性を書けたのが楽しかった。
やっぱりさぁ、両片思い幼馴染ってちょ~つよつよ関係だと思うんですよ。ポケモンで例えるならカイオーガとキングドラ、スマブラで例えるならアプデ前のリュカとルカリオくらい強い。もう幼馴染しか勝たん。誰よりもお互いのことを理解してて距離も近いけど、長い時間をかけて作り上げた安心感のある関係性を壊したくなくてお互い肝心の一歩を踏み出せずにやきもきしてる男女からしか得られない栄養があると思うんです。皆も書こうぜ、幼馴染。絶対いつかガンにも効くようになるから。

そういえば、秋祭りで書いた『ショソン・オ・ポムにアンコールを』も幼馴染設定だったんですよね。「え、同じことしとるやん」って気付いたのは投下した後でした。まぁでも幼馴染モノっていくらあっても困らんからさ。いいよなって。ほら、ロキソニンって家にあればあるだけ嬉しいでしょ?あれと同じですよ。ロキソニンです。幼馴染モノは。
でもどちらかというと、ポムの方が恋愛色強かった気がする。あっちをオレンジデーで出せば良かったんじゃないの?いや今更言うなよ。もっと早く言ってくれよ。というかポムの番外編書いたけど今回の祭りでは出せなかったんだよ。それはまた後日出します。

ちなみに、僕が1スレ目でやらかしたミス、気付いた方いらっしゃいます?
トリップのとこ、なんかおかしくありません?
そうです。ヴィオラの遅刻の前に、僕は最初からやらかしてたんです。間抜けがよぉ。
投票あるから作者バレには気を付けろって言われてたのにね。よく失格にならなかったな……主催者さん、見逃してくれてありがとうございます…!

『絵描きとヴィオラ』について

オレンジデーの開催が告げられて、一番最初に書き始めたのがこのお話でした。気合と魂を一番込めたのもこの作品。
本当はこれも30000字くらいのお話だったんですけど、色々事情があってその4倍近い110000字に伸びちゃった。いっぱい書いたよ頑張ったよ褒めてくれ~!!
……え、遅刻したからダメって?いやでもちょっとくらい…、まぁ、その、はい……すいません………。

ちょっとこの話は込めた想いが多いんですよね。
まず、舞台として選んだ京都という場所から。

僕は生まれが大阪の田舎なんですけれど、京都にも遊びに行くことが多かったんです。四季の色がより強く出て、美味しい和菓子やスイーツのお店も沢山あって、古き良き日本の姿も色濃く残っていて、他の街にはないような魅力に溢れる街なので昔から凄く好きだった。頻繁に当時一番仲の良かった友人と遊びに行ってました。
で、その友人が進学先の候補として選んでいたのが、京都の美大だったんです。一つは駅近くの市立、もう一つは作中でミルナが通ってた美大のモデルになった山の上にある私大の所。高校生の頃、オープンキャンパスをやってた時にその友人に付き添って遊びに行ったことがあって、特に後者の場所の思い出が強かったのでそちらをモデルにしようと思いつきました。


それで、じゃあ『絵描きとヴィオラ』を書こうと思いたった時、タイミング良く関西に行く仕事が生まれて、それを利用して今の京都がどんな感じなのかを実際に見て周ってきました。京都駅の中やその近辺、美大までどうやって行くのか、どういう電車やバスがあるのか、大学の中はどんな風なのか、更には実際に卒業生の人にも話を聞きました。同じ高校の同級生の中でその京都の芸大に進学した人がいて、久々に連絡を取りました。有意義な話めっちゃ聞けて楽しかったな~なんか漫画とかいっぱいあったし、凄く面白い場所だった…また行きてぇ~~!!(観光スポット感覚)

他にも、叡山電鉄って路線はその殆どが無人駅だったり、糺の森や下鴨神社は凄く雰囲気のある場所だったり、京都でも特に僕が好きな場所やスポットをモデルにしました。そういえば、ブーン系で実際にある地名を出すのってセーフなんですかね。今更怖くなってきたな。まぁ最悪怒られたら土下座すればいいか。頭下げるのに抵抗がなくなってきたら、君も立派な社会人だ!
ただ、屋敷の庭にある大きな桜の木、に関しては完全に妄想です。そんな都合よく桜が咲いてる場所なんてある訳ないじゃん。あったとしても全部都市開発で消えてるかゴルフ場になってますよ。はーあ、人間って愚か。

キャラ設定は、ミルナとミセリが対比になるように書きました。まずミセリから設定を練りましたね。
身体が弱くて、でもそうとは思えないくらい気が強くて口も悪くて、根っこは優しい箱入り娘。余談ですが、ミセリが方言(関西弁)を話すシーンがあまりないのは僕が京都弁分かんないからです。あの、関西弁って地域によって全然違うんですよ。大阪の中だけでも違うのに京都弁なんて分かるわけないじゃないですか。「どれも同じだろ」とかほざいてくるのって大概都民なんですよね。温室育ちの坊ちゃんどもがよ。
でも、僕が作中で一番気に入ってるシーンはミセリが「名前で呼んで」ってお願いする時に関西弁になっちゃうとこです。リアルだと別に関西弁話す女の子に魅力を感じたりしないんですけど、作中だと「普段偉そうにしてるミセリからうっかり関西弁出るの、なんかいいな…」ってなった。もっと喋らせればよかった。反省。
ミルナは常識のある子って感じですね。ミセリとの対比でお金に困ってたり、芸術の才能がないことに苦しんでたり。彼の設定は全然苦労しませんでした。普通に良い子で努力もしてるけど、現実のためにやっちゃいけないことも仕方なくやってしまうような、色んな意味で普通の人。
ただ何もかも対比にしたら分かり合えないなって思ったので、「未来がなくて、実は色んなことを諦めてる」って共通項を加えました。中々良いキャラ設定に出来たのではないでしょうか。褒めろッ!!

遅刻した理由はですね、傘泥棒のせいですね。
いいですか。傘泥棒のせいなんです。大事なことなんで二回言いました。

いや聞いてくださいよ~~ちょうど祭り開催期間中にお気に入りの傘を盗られたんですよ~~!!!それを取り返すのにもう、多大な労力と時間と精神を浪費しまして…しかもなんか無駄にゴネられたし……絶対許さねぇぞ犯罪者がよぉ!親知らず爆発しろマジでよ~~腹立つ~~!!!

まぁ見苦しい言い訳はこれくらいとして、主な理由は何度も何度も、数えきれないくらいに書き直しをしたからです。
まずは追加した花の描写。『絵描きとヴィオラ』には桜、エリンジウム、サンダーソニア、シロツメクサ、彼岸花、鈴蘭、ダリア、菖蒲、秋桜、そしてビオラと、自然の描写や何かの例えの表現として、しつこいくらいに花を用いました。もしかしたら他にもあるかな。流石に覚えてないや。
花の描写を増やした理由は、フォローさせていただいている絵師の方がBoothで出されたイラスト集に影響を受けたからです。
『花擬人化シリーズ』という絵をよく描いてらっしゃる方です。(→Mai(@balloon0903)さん / X (twitter.com))
以前からこっそりフォローさせて頂いてて、よくイラストを見てたんですよね。無言でいいねとRTだけして…。

仕事で海外から帰ってきた時、家に届いてたイラスト集を見て衝撃を受けた。花という存在の美しさや可憐さだけに目を向けるのではなく、花が持つ弱々しさや毒、そういう正の面も負の面も両方愛して、言葉を失うくらいに綺麗なイラスト・表現に昇華させた絵の数々に感嘆した。
凄くいいなぁと思ったんですよね。それで僕も花をたくさん作品に入れたいなと思って、頭の方から丸ごと書き直しました。
まぁ、花自体僕も好きだし、過去に書いた『プラスチックの心臓』にも花は結構出してたんですけど、今回は特に沢山出そうと思った。京都という自然豊かな場所にも会うし、ミルナに”花屋の子”という設定をつければキャラクターに深みも出るかなと思った。実際、書いてて凄く楽しかった。

やらかしたのは、そのイラスト集の絵師さんにそれがバレてしまったこと。ちょうどお酒飲みながら呑気にTwitterやってたら、そのことを堂々と呟いてしまったんですよね。凄く申し訳ない気持ちだった。その人の絵を描く時間とか、他のことに回せる筈だった時間を奪ってしまった。二度としないように気をつけないと。
僕はあんまり自作品を積極的に読んで欲しいとは思わなくて、誰かの暇つぶしになればいいなくらいなので…あと、個人的に僕がファンの絵師の方とはあんまり自分から関わらないようにしているので…緊張しちゃうから…。
ちなみに、『大体、友愛、冷戦地』の方に出した居酒屋の「銀杏」も同じ理由で名付けました。イチョウ兄、大好きになってしまったので。

で、まぁオレンジデーに出すからには「恋愛」がメインテーマなんですけど、僕が今回この話で主に書きたかったのは恋愛感情じゃないんですよ。
僕はただ、『絵描き』であるミルナに報われて欲しかったんです。

僕は昔から、絵が上手な人に凄く惹かれる人間でした。
絵を描くのが仕事の人とか、メモ書きの隅に可愛いデフォルメの絵を描く人とか、"絵が上手い"というだけで僕はその人のことを尊敬する。
逆に、僕は死ぬほど絵が下手です。分かりやすく説明するために職場で絵を描くと同僚たちに「違法な薬に手を出している」「ケーキ3等分出来なさそう」「指の骨折れてる?」だの散々言われた。まだ根に持ってる。絶対に許さない。

とにかく、僕にとって"絵が描ける"というのは、それだけでもうその人の全てを肯定したくなる程には魅力的な要素なんです。でも、僕が思っているより世の中というものは絵を手放しに褒めてはくれない。教室で絵を描いている子がいたら揶揄ったり、出来上がった絵を勝手に批評して馬鹿にする人間が多い、嘆かわしいことに。
プロが描いた絵ですらこき下ろされたり、ついた値段で絵の価値が決められたりする。絵そのものはおろか、その絵が出来上がった過程を評価する人なんてほとんどいない。
僕はそれが昔からずっと嫌だった。絵そのものも、その絵が出来るまでの経緯も、絵を描いた人も、その絵を見て足を止めた人たちの感動も、全てを肯定したかった。何もかもに価値があると言いたかった。
絵を描く人が指を差されたり、嗤われるのが我慢ならなかった。
だからこの話を書きました。描いた絵に分かりやすい価値がつくだけじゃなく、一番絵を見て欲しい人にその魅力が伝わって、絵を描いた人も称賛されるような話を。

絵だけじゃなく、その想いは音楽に対しても同じでした。
誰が演奏したとか、楽器は何だとか、どういう背景で紡がれた曲なのかとか、そういうので演奏の良し悪しが決まるなんてたまったもんじゃない。
音楽というのはもう、音楽というだけで肯定されるべきだと思うんです。例えそれが超有名なヴィルトゥオーゾのソロだろうが、幼子がイタズラで押したピアノの鍵盤の一音だろうが、どちらにもそれぞれの音楽としての良さがある。仮にそこに優劣があったとしてもそれはあくまで個人の好みの範疇というエリア内の話で、決して無価値なんてことはない。それらは全て愛されてしかるべきものだ。

ピアノやヴァイオリンじゃなく、少しマイナーな楽器であるヴィオラを選んだのはそういう理由です。「どうせならヴァイオリンをやればいいのに」だの、「マイナーな楽器の演奏は金にならない」だの、そういう意見や考えを吹き飛ばしたかったんです。ヴィオラ、本当に綺麗で落ち着いた音色なので、良ければ是非聴いてみて下さい。

まぁ、この話自体が、一つの蛇足だとも思うんです。
絵に限らず、音楽も、小説も、漫画も、全ての創作はそれその物の単体の出来だけを見るべきで、それが出来るまでの過程や作り手の情報はノイズであるという論がある。作者の後書きや解説なんてもっての外だと。いっそこのろくろ回しそのものすら、本来は不必要なものと言われたって仕方ない。
分からなくもない。寧ろ、どちらかと言えば賛成派かもしれない。確かに作り手の情報はノイズになりえるだろう。仮にドビュッシーが人を殺していたとして、女性に乱暴していたとして、じゃあ「月の光」が褪せるのか、「亜麻色の髪の乙女」が聴く価値のない曲になり下がるのかと言われればそうはならない。そういう、作者と作品というのは切り離して見るべきだという観点から見れば、「大切な人が描いた絵に高値をつけた」という描写があるこの話は、もしかしたら「純粋に絵を評価する話じゃない」と捉えられるかもしれない。「絵描きや演奏者まで肯定しろ」だなんてメッセージを込めたこの話は、余計なことを言っただけなのかもしれない。

でも、分かっているけど、それはそれとしてもやっぱり、僕はそのノイズだって愛したいんです。邪魔だとされるようなものにも光を当てたかった、無意味と無価値は違うと言いたかった。
絵を描く人の、その全てを肯定したかった。
音楽を奏でた人の、心臓の鼓動まで丸ごと称賛したかった。

こんなこと、現実で叫んだら間違いなく一笑に付される。でも、創作の中ならきっと許されると思った。別に分かってくれなくてもいい。けれど、そういう考えもあるんだって、これから絵や音楽に触れた人が少しでも肯定的に思ってくれたら、ちょっとでも月明かりが当たったのなら、僕はそれだけで凄く嬉しい。

ただ、ここまでつらつら書いても僕はどうしても、この話をハッピーエンドに出来なかった。元々これは春の話として書いていたし、作中でも特に春がメインになるように書いたんですけど、それがネックになってしまった。
僕は四季の中で春が一番好きじゃないんです。春の陽気とか、日射しとか、桜とか、その全てが当てつけに見える。どれも綺麗なものである筈なのに。
最初はハッピーエンドの想定で書いていたんですよ。最後はミルナとミセリが桜の木の下で笑い合って終わるっていう、正真正銘の大団円。けれど、読み直すたびに僕の中で凄く違和感があったんです。絵が認められて、ミセリの病は手術で治って、互いの想いを伝え合って終わりって、それはいくらなんでも都合が良すぎないか。いくらなんでも不自然なんじゃないかって。
書き直して、花を入れて、僕が好きな要素を入れたり叫びたいメッセージを入れる度にどんどんその違和感が膨れ上がって、最終的にはハッピーエンドで終わることを諦めました。ミセリがいなくなってしまうとあまりに終わり方が呆気なくなってしまうのと意外性がないと思い、「ミルナが実は病気だった」という設定に変えました。
ミルナの死の描写にあまり文字数をかけてないのはわざとです。実際、現実だと人間の死ってあまりに淡々としてて、全然ドラマチックじゃないから。
人が死んだところで何かが新しく生まれる訳もなく、ただ面倒な遺産整理だの相続だのと、国が決めた制度が法定的に動くだけ。そんなあまりに空しい描写を冗長に書き連ねる気にはなれなかった。

ただ、「ミルナが報われないとダメだ」って考えはずっと変わらなかった。だから「彼の想いが伝わること」と「彼の描いた絵が評価されること」は絶対に守った。例え20年と少ししかない人生だったとしても、人生全部を費やして描いた絵が評価されて、一番見て欲しい人に綺麗だって思って貰えたのなら、プレートに遺した一言を読んで泣いてくれたのなら、きっとその人生は誰にも否定されないと思った。

結果、彼が描いた『ヴィオラ』は3億というとんでもない値段がついてミセリの手に渡ったし、彼がずっと秘めていた想いは、たった一言分しかないけれど、あの絵のプレートに綴られた。
ミセリはミルナのことが大好きだったし、彼女はミルナが描いた絵の魅力を誰よりも理解していた。
「人生全部で貴女を描く」という願いは叶ったし、伝わった。そしてミセリもまた、「人生全部で貴方を弾いた」。二人とも「絵描き」として、「音楽家」としては報われた。
最初に「絶対書こう」と決めていたことは最後まできちんと書けた。それは本当に良かったなと思っています。

「恋愛」がテーマでもあるので、そこについても触れます。
まず、過去作である『プラスチックの心臓』でも書きましたけど、僕にとって恋愛感情の定義は「相手に自分の心臓を渡せるくらいに想えるか」なんです。それが出来ないのなら、それは恋じゃない。あくまで”僕が恋愛をするなら”という前提なので、他の人の恋愛感情を否定する気はありません。
けれど、また同じことを書いたってそれは過去作の焼き直しで、つまらないじゃないですか。それならプラ心の番外編を書けばいいだけの話だし。
だから、心臓の代わりに何を捧げればいいかということを考えた結果、「人生そのものを費やそう」というアイデアが浮かんだんです。
片方は人生をインクそのものにして誰か一人だけを描いて、もう片方は人生を弦や弓にしてたった一人のためだけに音楽を奏でる。それはきっと、心臓を捧げるのと同じくらいに真直ぐで、素敵な恋だと思った。
”人生全部で君を描く”。そういう恋愛を書きたかった。もしかしたら僕が描写したのは恋愛感情ではなく”執着”かもしれないけれど、とにかくそんな想いを互いに持っている関係性を書きたかった。

「春」「絵」「音楽」「花」「恋愛」と、五つの柱をメインに据えて書いた話でしたが、一番困ったのは「恋愛」の表現でした。
お恥ずかしい話ですが、僕には恋愛経験がほぼないんですよ。ちゃんと好きになったのも、付き合ったのも、今までの人生でたった一人しかいないから。恋愛らしい描写が中々思いつかなくて苦労しました。
『大体、友愛、冷戦地』でも『絵描きとヴィオラ』でも共通している「花の栞」は、僕が昔好きだった子にあげた、数少ないプレゼントの一つです。前向きなエピソードがそれくらいしかないもので。
ミセリに凄く後悔が残るような流れにしたのも、無意識に僕が自分の経験を下地にしていたからでしょうね。
僕は確かにミセリのことを「音楽の天才」だったり「病弱だけど気が強い、でも根は優しいお嬢様」として書いたけど、間違っても彼女は「聖人」じゃない。人並みに間違える、普通の女の子。ミルナから見たミセリはともかくとして、決してミセリ自身は神様じゃない。だから、彼女が作中序盤でミルナに放った暴言や八つ当たりが帳消しになったりはしない。それが例え、ミルナは全く気にしてなかったとしても。
大事だった筈の人にしたひどいことの報いは、受けないといけないでしょう?

友愛同様、タイトルはかなり難産でした。
まず作中でミルナが描く絵のタイトルをどうしようかってなって、シンプルに『ヴィオラ』が良いんじゃないかと思ったんですけど、じゃあ話のタイトル自体はどうするのかってこれまた迷って……。
一度全部また自分で読み返してみて、「人生」という言葉に引っかかったんです。メインの二人とも、自分の人生そのものを相手に捧げるほどの想いを抱くに至ってる。なら、この話は二人の人生を描いた話と言っても過言じゃない。
”互いに互いが何より大事だと思っている二人の人生に、なにかタイトルをつけるなら”って視点から改めて考えた結果、『絵描きとヴィオラ』というタイトルにしました。僕にしてはかなりシンプルだなぁと自分でも思いますけど、今は凄く気に入ってます。
ちなみに、冒頭とラストの一文は『負け犬にアンコールはいらない』という曲からの引用です。ヨルシカはいいぞ…!!

終わり方は何度も変更しました。
最初はミルナとミセリが笑い合って終わりだったけれど、次はミセリがいなくなった場合を考えたり、ミルナが遠くに就職するという別れ方だったり。
色々考えた結果、”桜が舞う中で、空の席の前でヴィオラを弾くミセリ”という光景を思いついたんです。それがあまりに綺麗に思えてしまったものだから、そういう終わり方にしようと決めました。
感想で「綺麗な話だった」と言われたのは凄く嬉しかったです。どんなメッセージを込めようとも、綺麗な話でありたかったので。

まとめ 総評

という訳で、今回は2作品しか投下出来ませんでしたが、個人的には大満足なお祭りでした!いっぱい恋愛小説読めたし、楽しかった~!
友愛もヴィオラも、投票して下さった方がいたの嬉しかったです!

特に嬉しかったのは、前述した、花擬人化シリーズの綺麗なイラストを描いてらっしゃる絵師さん(Maiさん)が、ヴィオラのラストシーンを描いて下さったことです!→
XユーザーのMaiさん: 「貴方へ送るラブソング #イラスト #AA https://t.co/eZSZZFuYXp」 / X (twitter.com)
も~めっちゃ素敵なんですよね…ミセリの少し浮かんだ涙とか、うっすらと椅子に描かれた幽霊とか、舞い散る花弁の描き込みとか…お金払いたい…払えないのかな…?なんか、そういうシステムないんか……?何か知ってる人いたらこっそり教えてくださいね。払いたいんで。
サラッとしか描写してない所も細かく表現して下さってて、もう本当に感謝してもしきれません、本当にありがとうございました!!

反省点は色々ありますけど、やっぱり遅刻してしまったことですね。
ちゃんと期限通り投下していればヴィオラもMVPだったそうで…投票して下さった方々、特にMVP票まで投じて下さった三名には凄く申し訳ないです……また後日、ミルナとミセリのハッピーIFルート書くんで許して下さい…。

せっかく京都を舞台にしたんでね、京都スイーツだったり、祇園だったり、書きたいことは沢山あります。
特に京都水族館だけは絶対に書きます。凄いんですよ京都水族館は。東京のすみだ水族館をそのままパワーアップさせたような所で、周りの公園も凄く良い雰囲気の場所なんですよね。絶対ミルナとミセリが水族館デートする話書きますのでね、よければ皆さんも京都水族館行ってください。最高の場所なので。行け。



それでは、僕はそろぼち現行に取り掛かります!四月泥棒、投下するぞ~!
お祭り、本当に楽しかったです!どの話も凄く面白かった!
皆さんお疲れ様でした~~!!またね~~~!!!!!







































































本当はね、僕が、大好きだった人を肯定したかっただけなんです。
『絵描きとヴィオラ』は、ただそれだけの話でした。


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