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【BeBA TERRACE STORY】

vol.1 ランドスケープデザイン

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盛岡駅の南側、岩手県立美術館をはじめ、
数々の文化施設が集約する盛岡市中央公園。
その一帯に整備されつつあるBeBA TERRACE (ビバテラス)は、
ゆたかな感性を持つ子ども、答えを自ら見つける子どもを育み、
「社会とつながる機会創出」を願う、
3つの民間事業者が主体となってつくる場所。
都市公園の価値向上をめざし、市民の皆さんと育てていく空間です。
さらに、その理念に賛同した事業者たちも徐々に加わって
「あそびとまなびをつなぐ場」づくりに邁進中。
ここでは、BeBA TERRACEに関わる事業者
それぞれの思いを、順次紹介していきます。

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ランドスケープデザインは、
まちに新たな「様相」を創り出す思想と技術。
自分のまちとして、記憶に残る場に。

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(画像/BeBA TERRACE完成予想図)

「保育園庭の向こう側には大きな芝生広場をつくって、おいしいものを食べたり、野菜を買ったり、スケートボードを練習したり。鉄瓶やホームスパンの体験もできて、雨や雪の日はカフェでくつろげる、そういう建物が4つも5つも並びます。きっと日本にひとつ、オンリーワンの公園になるんじゃないかと思います」。
 2020年秋、BeBA TERRACEのはじまりとなる「モリオカえほんの森保育園」が完成した折、盛岡を訪れた斉藤浩二さんは、楽しげな声でそう話していました。

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(写真/中央が斉藤さん。保育園完成内覧会にて)

 BeBA TERRACE全体のランドスケープデザインを担う(株)キタバランドスケープ代表の斉藤さんは、この空間全体が人々にとって、「暮らしの記憶」になる場所であってほしいと願っています。
 「中央公園はロードサイドにある都市公園。近隣に大型店舗も並び、ともすればどこのまちにも共通する景色が続く中、本宮地区ならではのオリジナル空間をつくり、自分のまちとして記憶に残るランドスケープでありたいと思いました」

 ランドスケープデザインは単なる造園ではなく、人と風土の相互作用によって生み出されるもの。その場所に新たな様相を創り出す思想と技術であり、土地に息づく歴史や自然環境、地域住民の考えも汲みながら、めざすべき形を創りあげる必要があると斉藤さんは力を込めます。


 先に手掛けた「モリオカえほんの森保育園」の園庭設計においても、地元団体が長く植樹管理してきたドングリ林を敷地内に配したり、公園にあった石を建物入り口に敷くなど、できるだけこの場所にある要素を生かすことを大事にしたそうです。
 木々に囲まれるBeBA TERRACEは、建物の色や素材も自然になじむものを選定。彩度の低い周囲と調和した色彩を用いています。統一感ある建物が公園の風景に溶け込み、時を重ねることで経年変化も楽しんでいく。斉藤さんは、そんな未来をイメージしているのだとか。

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(写真/元々あったドングリの木をいかしたモリオカえほんの森保育園全景)

 BeBA TERRACEではあえて、道路沿いに大看板を立てる予定がありません。その理由を尋ねると、意外な答えが返ってきました。
「もしかしたら、どこが入り口か?少し迷ってしまうかもしれませんが、迷うことはけして無駄ではないのです。便利が加速する今の時代ですが、不便は、必ずしも不快ではないはず。目的地に近づくための小さな遠回りは、思考や気づきのきっかけ。学びや発見にもつながります。事業者や関係者それぞれの活動が自然に溶け込み、静かに訪れる人を待っている、そんな大らかな空間でありたいと考えました」。
 環状線側の道路から一歩BeBA TERRACEに入り込むと、緑の空間へ。芝生広場の先には雫石川と岩手山が雄大に広がります。シンボルツリーは既存のタチヤナギを生かし、コナラやミズナラ、カエデ、コブシなど、明るい紅葉樹から木漏れ日が落ちる散歩道、盛岡市民のよりどころである岩手山を常に眺められる、それがBeBA TERRACEならではのランドスケープです。

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(画像/BeBA TERRACE全景図。2枚目は県道沿いの「M farm」部分)


とある書で、盛岡のまちについて語った彫刻家・高村光太郎の話が記述されていました。
『盛岡の街づくりは、どこの町内からも岩手山が見えるように放射状につくるのがよい。岩手のシンボルであるこのすぐれた山容を、朝な夕なに、季節に応じた素晴らしい自然の美を市民は味わうことのできる幸を、大切にすべきである』(「岩手の美術と共に歩んで/佐々木一郎著」よりそのまま引用)
 中央公園の芝生広場を囲むよう、弧を描く形で建物を配するBeBA TERRACE。公園全体が庭であり、眺望を楽しむと共に建物内部に自然を取り込む空間は、さながら高村光太郎の言葉を具現化するかのよう。斉藤さんをはじめとするランドスケープデザインチームの思いに重なるようでもあります。

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斉藤顔写真①170116

(株)キタバランドスケープ 斎藤浩二さん

㈱キタバ・ランドスケープ代表。宮部記念緑地、SEIYOしんえい四季のまち、石山緑地(1997日本造園学会賞受賞)、モエレ沼公園(2002グッドデザイン賞、2007土木学会デザイン賞)などの造園設計。元北海道大学・北海道東海大学非常勤講師、元東京農業大学客員教授、北海道美しい景観のくにづくり審議会委員、現在は恵庭市水と緑のまちづくり審議会委員を務める。

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(写真/モエレ沼公園全景)



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