見出し画像

積水化学工業が浮体式ペロブスカイト太陽電池の実証実験開始、同社担当者に聞く

積水化学工業とエム・エム ブリッジ、恒栄電設は4月5日、フィルム型のペロブスカイト太陽電池をプール上に置くための実証実験を、東京都北区で4月3日から始めたと発表した。

実験は軽量性を活かした浮体構成や施工性の検証が目的

フィルム型ペロブスカイト太陽電池は軽量かつ柔軟という特長があり、従来のシリコン系太陽電池では設置できなかった場所に設置できる。再生可能エネルギー導入量拡大への有力な選択肢として期待の声がある。

従来の水上設置浮体式太陽光発電システムでは、太陽電池と架台の重量を支える浮体構成や施工性等に課題があった。そのため今回の実証実験では、ペロブスカイト太陽電池の軽量性を活かした浮体構成や施工性の検証を目的とした。実験は4月3日から1年間の予定で、閉校となった学校プール(東京都北区)に浮体式ペロブスカイト太陽電池を設置し、浮体構成や施工性、発電性能の実証を始めた。浮体式ペロブスカイト太陽電池の実証実験は国内で初の事例となる。

積水化学は、独自技術の「封止、成膜、材料、プロセス技術」を活かし、フィルム型ペロブスカイト太陽電池開発屋外耐久性で10年相当を確認。30cm幅のロール・ツー・ロール製造プロセスを構築した。そのほか、同じ製造プロセスによる発電効率15%のフィルム型ペロブスカイト太陽電池の製造にも成功している。

エム・エム ブリッジは、橋梁及び沿岸構造物の設計、製造、設置、そして維持補修を一貫して手掛ける総合エンジニアリング会社。沿岸構造物の防食技術を応用したサンゴ礁再生プロジェクトや、波力発電技術の開発等、独自の環境保全活動やクリーンエネルギー開発に取り組んできた。同社では前身でもある三菱重工業株式会社から受け継いだ浮体構造設計や係留方法等のノウハウを活かし、フィルム型ペロブスカイト太陽電池を水上・洋上に導入できると考えた。そのため、浮体式ペロブスカイト太陽電池の設置に向けた実証実験に取り組むことになった。

恒栄電設は、国内太陽光発電設備の所有や自社建屋における太陽光発電設備の導入等、脱炭素に向けた取り組みを行っている。測定データ要素や負荷制御のカスタマイズ性を持つ同社開発品の計測制御システムを導入し、水上環境等の要素データ測定等、浮体式ペロブスカイト太陽電池の設置実験に有用なデータを取得できると考えた。そのため実証実験に参画することとなった。

担当者「実用化の詳細は非公開」、東京でも実証実験

積水化学の担当者によると、住友化学側からエム・エム ブリッジに対してペロブスカイト太陽電池について説明する機会があり、浮体式太陽電池の共同開発を提案され、双方とも要望が合致したため共同開発に着手したという。また恒栄電設にもペロブスカイト太陽電池について説明する機会があり、恒栄電設側が様々な活用案を提案したことから、共同開発に参画してもらうことになったとした。


担当者によれば、将来はカーボンニュートラルに対して有効な多岐にわたる水上の有効活用を目指しているが、その詳細・時期は非公開だと回答した。ただし、ペロブスカイト太陽電池は、2025年の事業化を目指して開発しているという。

大量生産でき、薄く、軽い特徴等も持ち合わせているペロブスカイト太陽電池。今年3月19日からは東京都が有効性の実装検証事業を始めるなど、導入に向けた動きが広がっている。

ここから先は

0字

スタンダードプラン

¥500 / 月
このメンバーシップの詳細

サポートして頂けたら嬉しいな。