見出し画像

「博士とナナタの遠くなる昨日」上映会


表題の通り、よしもと有楽町シアターで行われた

「博士とナナタの遠くなる昨日」

の完全版の上映会に行ってきた。

そもそも参加した理由は、
筆者がジェラードンさんの大ファンだからであり

この前の時間帯で行われたジェラードンさん単体のトークライブに参加予定で
その後上映会があることを友達が教えてくれたからだ。

「少しでも長く大好きなジェラードンを見たい」

ただそれだけでチケットを取った。

当初、作品自体への認識は

「かみちぃさんとGAG福井さんが出てる映画かぁ」

くらいだった。

(映画に関わってらっしゃる方マジでごめんなさい)


この作品はすでにTV(BSよしもと)で8話まで放送されており、

今日は最終回を初めてお披露目するよという上映会。

第1話から最終回まで全部見せてくれるという吉本興業さんの優しさ。

(やっぱりいい会社ダナァ)


衝撃だったのは、会場で

「この作品、今日が初見の方~」

とMCの方に言われ手を挙げると、
100人入っている会場にもかかわらず、私と他にもう1人しかいなかったのである。


つまり、私含め2人以外の全員は作品のファンということだ。


(マジか、、、ジェラードン見たさって不純な動機だったかな…)


そんな気持ちで見た当作品だったのだが…




想像の100倍、素晴らしかったのだ。

いや、1000倍といってもいい。



GAG福井さん演じる天才博士(これまた福井さんのハスキーボイスが堪らなくいい味)と、

世界を守るために博士に作られたアンドロイド、

かみちぃさん改め俳優上村宜史(かみむらたかふみ)さん演じるナナタ。


世界平和のために戦うナナタは、ロボットであるがゆえに

日々少しずつ故障が進んでゆく。

そんな中で二人は「ナナタが壊れるまで一緒に思い出を作ろう」と決め、

ともにいろんな場所へ行き、いろんなことに挑戦していくのだ。

そこでお互い、様々な感情を得る。


登場人物も博士とナナタの2人だけ、

大きな事件やハプニングが起きるわけでもなく

二人の温かく柔らかい日常を描く非常にシンプルな台本なのだが、

描写ひとつひとつが本当に素晴らしい。

なんというか、ほんの1~2秒と一瞬の描写なのに、

それによって観客が感じる急激な感情の変化がえげつないのだ。



全9話、全て別々の監督がディレクションしたものらしいが

確かに各回、撮り方や色合いが全然違うなと感じていたので納得した。

雨のシーンが幾度かあり、全て天候に恵まれず雨になったらしいが

雨よ素晴らしいタイミングで降ってくれた、と私は思う。

なんせ晴れの日とのコントラストが、切ないシーンを際立たせるのだ。



中でも印象に残ったシーンは2つある。


1つ目は、第1話の博士とナナタが海に行くシーン。

「戦いばかりだから、休みは普通のことをしよう!」

と二人で出かけるが


「人間って、海好きですよねェ。

ロボットの僕にはよくわからなくて」

とナナタが言う。


確かに人間は、なぜか海が好きだ。

海の中に入るのは怖いという人はいても、何か過去のトラウマがない限り

静かな海を眺めるのが嫌いという人はまずいないだろう。

でも、なぜと言われるとハッキリ答えられない。


「でも、俺も海好きじゃないな。

海藻キモいし。海水、まずいし。」

と博士。


とりあえず、海らしいことをやっておこうと

スイカ割りや砂遊びを楽しむ描写もいとおしい。


「僕らが海が好きなのは、胎児の時

羊水にいたことを思い出すからじゃないか」と博士。

いわれてみればそんな気もするが、実際はどうなのだろう。




また、ある日のドライブ中

博士にコーヒー買ってきてくれと頼まれるナナタ。
この頃のナナタはもうずいぶん変わってしまっていた。


街中で「コーヒー買ってきて」と言われれば、

誰もがコンビニかカフェでドリップコーヒー(もしくは缶コーヒー)を買ってくるであろう。


「やっぱりこういうときはコーヒーだよね。

…茶色いから!」


不思議な顔をする博士をよそに、ナナタが買ってきたのは

おしゃれな陶器のコーヒーカップと、コーヒー豆。

そしてあふれんばかりにコーヒー豆を入れ、嬉しそうに


「茶色い!」



それを見る博士の表情が、あのときのナナタはもういないのだといわんばかりで

なんとも切ない。


博士は映画を通してずっと

笑顔で喜ぶこともなければ、泣いて悲しむこともないし、

怒って口調を荒げることもない。表情というものがないのだ。

それなのに、あの切なさを表現できる演技力は、圧巻だった。





監督の言いたいことはおそらくこの2つだろう。

※全然違ったらゴメンナサイ


まず

「物事は多面的に見たほうがいい」



万人が好きであるもの、綺麗だと思うもの。

解釈は一つであると思いがちな現象でも、

そうじゃないことも大いにある。

同じものを見たときに感じることは、人それぞれ全く違う。

所謂パラダイムシフトってやつだ。




確かに、なぜ人間は海が好きなんだろうか。


本当に、万人が好きなのだろうか?



誰もが好きなものを

たった一人自分は嫌いでも、それはそれでいいんじゃないか。



「コーヒーは茶色いから好き」


そんな理由があったって素晴らしい。


自分と他人は全く違うし、それを受け容れられる世界で在れよと。



もう1つは、

人と関われる時間は限られているということ。


これは私だけかもしれないが、

故障が進み、言動や行動が徐々にすっとんきょうになっていくナナタと

それを困ったように、でも怒らずに接する博士の姿を見て

認知症が悪化していくご年配の方、そしてそのご家族とリンクした。

(少しずつ故障の片鱗を見せる描写も、描写自体は一瞬なのに

観客を急激に切なくさせる。各所本当に素晴らしかった)


二人の関係の変化がこの上なく切ないのだが

それでも、限りある時間を大切に過ごそうとする博士の

表情には出さないが何があっても愛し見守ろうという在り方には

所謂無償の愛を感じることができた。




とにもかくにも、ここまでシンプルな内容で

ここまでの感情を与えられる作家さんたちはすごい。ものすごい。

そして、ジェラードンさんとGAGさんが出会わせてくれた作品。
お笑いファンでなければこんな素敵な映画に出会えませんでした。

ありがとうございました。





余談だが

当初、ナナタのキャスティングは

かみちぃさん以外に西本さんの可能性もあったそうだが…





かみちぃさんでよかったと心底思う。


※この役で西本さんをイメージすると笑ってしまうので要注意。でもそれはそれで楽しい観方です



皆さまぜひご覧ください。


では


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?