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Dynamiteから始まった若ダンディなナイスガイテテ


※この記事の内容は個人的感想です

最近毎晩グラミーのButterパフォーマンスを見ている。凄い。持ってる。この人たちは持ってる。この場で、この名だたる大物アーティスト達に囲まれてなぜこんなベテランオーラが出せる?凄すぎる…

そしてテテよ…オリヴィア・ロドリゴとの魅惑的なシーン。あれ?テテって国籍どこだっけ?何語話すんだっけ?あれ?俳優だっけ。あれ?何歳だっけ…??

あれ?

違和感が無い。

世界のビューティフルロドリゴちゃんの横にいるのに全く違和感が無い。当たり前のようにそこにそっと腰掛けている。

そしてテテは自分のチャームポイントである、左側からの横顔をきちんとカメラに収めていた。ぬかりない。自己プロデュースの神よ。

こんな一世一代の緊張MAXの大舞台でも、このワンシーンをちゃんと自分の時間にしていた。


さぁ、さぞかしカッコいい英語を耳元で囁いていたんだろう。と思いきや、なんと英語も韓国語も話してなかったんだって。それっぽく何かを話す演技をしていただけだったんだ。カードを投げるカウントを頭の中でずっと取っていたと。あんなにカッコイイ雰囲気だったのに?!

確かに、オリヴィアが可笑おかしそうに笑うか笑わないかの寸前の可愛い顔で、完璧に合わせてくれていた気もする。そんな彼女に「今驚く場面だよ!」とだけ指示した事はなんとなく覚えているらしいテテ。でも緊張のあまり、その他は良く思い出せないと。ただただ、オリヴィアが上手くやってくれたと。彼女はヒーローだったと。いやいや、テテも凄かったよ。しっかりとその場の空気のイニシアチブを握っていた。凄まじかった。

このシーン、ローリング・ストーン誌の歴史上最も偉大なグラミーアワード公演TOP25の中の13位に選ばれたと言う。ARMYでない観衆から見れば、「この韓国人のやたら雰囲気のある男は何か気の利いた男前なセリフを言っていたんだろう」と信じて疑わないだろう。

でも、実際は雰囲気で語る『テテ語』を話していたのだ。

このギャップこそキムテヒョンの最高にチャーミングなところであり、私がテテを愛する理由だ。是非ここにフォーカスして欲しいくらい。「こんなに雰囲気のあるシーンを演じた男は、実は言葉にならない言葉を話していたんですよ。このギャップと、そこから生まれる完成度の高さ、最高ではないですか?」と。

本当に違和感が無かった。

白いベンチでボーイフレンドを待つ初々ういういしい女の子に、突然近づいて隣に座って来た謎の男。どうやらスパイらしい。今から教える秘密のカードの暗号を覚えておいてくれ、そしてこのカードをキャッチした別の男にその番号を伝えて欲しい。俺の色気があればこの子もそれくらい簡単にやってくれるだろう、と。

というのは123%私の頭の中で流れた物語りだが、そんな映画のワンシーンを見ているようだった。謎の男。国籍も年齢もわからない。でも横顔に不思議な魅力がある。

そこから風の様に走り去り、何事も無かったかのように髪をかき上げ仲間達の輪の中へ溶け込む。そしてナイスガイダンディダンス。若旦那。ダンディ。でもこの美しい男、まだ26歳。なんなのだ。

テテってなんかこうもっと、K-POPのカラフルな髪のアンドロイドみたいなでもキュートな飾っておきたい人形のような感じじゃなかったっけ?少女漫画に出てくるような線の細いふわふわな妖精じゃなかったっけ?

いつから若ダンディナイスガイテテになったんだ?



あ、ダイナマイトだ



ダイナマイトのテテ。あのMVを見た時に私は驚いた。
テテが古き良き時代のアメリカンなナイスガイ、まるでジェームスディーンみたいになっちゃったよ、って。しかし実際にテテがイメージしていたのはジェームスディーンどころじゃない!酸いも甘いも知りさらに年齢を重ねた男フランク・シナトラとサミー・デイヴィス・ジュニアだった!

し…渋い!

フランク・シナトラは「シュッと」していて、サミー・デイヴィス・ジュニアは才能がやばいです(笑)。「Dynamite」で活動していた時、お二人からインスピレーションを得たりもしました。フランク・シナトラってジャズ的なジェスチャーも多いんですが、ディスコ的な感じも加味されているんです。サミー・デイヴィス・ジュニアがステージにスタンドマイクを立てて踊ったら、どんな踊りになるんだろう、とイメージしてみたり。「Dynamite」のハッピーでカッコいい感じを出す時に、とても勉強になりました。

weverse magazine  2020.11.25


レッドやブルーの髪でキレッキレのK-POPダンスを踊ったり、くるくる黒髪でふわふわ星たちとダンスしているのがテテだと思ってたのに、こんなクラシカルでタフなナイスガイイケメンも演じられるなんて。
テテの振り幅の大きさに感動したし、Dynamiteのためにここまで作り込んだテテのBTSへの愛とパフォーマンスへの誠実さに胸を打たれた。


そして、あぁ、テテの中のアメリカはこうなのだな、と思った。


Dynamiteとバンタン。

2021年に行われたビルボードのインタビューの中で「韓国語で歌い続ける必要があります。僕たちがアメリカのメインストリームになることは決してないと思うし、それも望んでいません。僕たちの最終目標は満員のスタジアムツアーをする事です。それだけです。」と語っていたナムさん。確かに、Dynamiteとほぼ同時期に制作されメンバーが役割分担してゼロから作り上げたハンドメイド感のある貴重なアルバム『BE』は、Dynamite以外はほぼ韓国語で制作されている。こういう思いを抱えながらも、アメリカには英語曲で挑んでいた。そこには夢と、自分達に課せられた責任のはざま様々さまざまな葛藤があっただろう。諦めと、気持ちの切り替えと…想像するに容易たやすい。グラミーを2回逃した後、カメラの前ではポジティブに受け止めていたように見えたテテだったが、その後「泣いた」と語っていた。

新型ウィルス禍の影響でなかなか前に進めない。ツアーも中止。さぁどうする。この時期がBTSやハイブにとって大きな分岐点になっていた事は確かだ。
「世界中を明るくしたいから」という思いで生まれたDynamiteだったが、同時に、グラミーを狙うための曲だったというイメージはどうしても避けられない。そう、アメリカで戦うための曲。

全歌詞英語。グラミー狙い。となると、やはり、K-POPカラーはどうしても薄めなくてはいけなかっただろう。

パッと見のビジュアル面で、ザ・K-POPという印象を与えすぎないような、誰にでも好かれるライトなインパクトを放つ必要があった。無国籍感を感じるような。そこでテテは何を感じたか。
テテは自分がBTSの中でビジュアル的な印象操作を担う大事なポジションにいるとよく理解しているため、この曲のためにどんなパフォーマンスをすべきかをたくさん考えたに違いない。
Dynamiteでアメリカに挑むためには、古くからのK-POPファン以外も取り入れる視覚的な役割も練らなければならない。グリーンのGUCCIのスーツ。金髪オールバック。テテが始めたあのノスタルジックな仕草。

テテのクラシカルダンディズムパフォーマンスは、初めてDynamiteを見た人に、この曲の「古き良き」のイメージをビジュアル面からアプローチするのにとても大きな役割を果たしていたのではないだろうか。
そしてそれは、テテのクラシカルな趣味と偶然重なったのではなく、パフォーマンスをする前に、それはそれは念入りに役作りをし、コンセプトを頭の中で練ってイメージを膨らませ見事に演じ切るテテ、シンギュラリティの孤独な白い仮面の男しかり、ONの棘のタトゥーの青年しかり。。。のテテが、アメリカで戦うためのBTSVのスタイルを、自分の「好き」から一生懸命に研究して作り上げたのではないだろうか。


あんな風に見えて、テテは根っからの仕事人だと思う。


テテはもともと、古き良きものが大好き。映画もクラシックもジャズも、ファッションも。たまに「まだまだ若いのになんで?」なんて言われてしまうけれど、BTSがアメリカで戦うためにはこの若ダンディナイスガイテテは絶対に必要だったのだと、ロドリゴちゃんとのワンシーンで確信したオタクであった。


テテの考え抜かれた努力の賜物だと。


あの無国籍で不思議な横顔を持つ、ノスタルジックな振り付けの若ダンディこがしキャラメルは、テテがアメリカで戦うために生まれた至福の作品なのだ。戦う場所が変わったら、もうテテはやらなくなってしまうかもしれない。その前にうんと食べ尽くしたい。

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