メンヘラが筋トレをやるべき理由

まず言っておかなければならない事として、筋トレでメンヘラは治らないし(そこまで)モテるようにもならない。勿論筋トレで多少のメンタル改善は期待出来るし、モテやすくもなるのは事実である。が、効果は極めて限定的だ。

とりあえず運動がどれくらい心身の健康に寄与するのか?に関しては、日本において65歳以上の群馬県民5000人を対象にした20年の追跡調査でほぼ答えは出ている。それによると1日5分の早歩き(4000歩)ほどで鬱病予防の効果があり、尚且つ7.5分の早歩き(5000歩)で認知症も予防出来るそうである。基本的に歩けば歩くほど健康効果はあるのだが、とりあえずメンタルに限っては「1日8分程度早歩きが効果的」と言う事が出来るだろう。結論から言えばメンタル改善の為に筋トレのようなハードな運動をする必要は全くない。

またADHDの症状緩和においても運動は1定の効果が認められている。ADHDの児童と運動についての研究をメタ分析した結果、子供の注意力、実行機能、運動能力を向上させることが確認され、衝動性や多動性も多少は軽減される事も示唆された。メカニズムとしては運動はドーパミンとノルエピネフリンの神経伝達物質を増加させることで覚醒剤と同様の生理学的役割を果たし、それによりADHDの症状を緩和する可能性があり、尚且つ5-ヒドロキシトリプタミン (5-HT) および内因性オピオイドのレベルも増加するので気分や注意力も改善される…と考えられている。

しかしながら、運動を通じて脳内物質を出すのに筋トレのような激しい運動をする必要は当然ない。極端な話、何分間か早歩きするだけでも上記の脳内物質は分泌されるし、なんなら寝転がったままゴロゴロ転がったり手足をバタバタさせたり、最悪「あーッ」と声を出すだけで良い。実際ADHDの運動療法として検討されてるプログラムは「週2回40分間楽しく体を動かして遊ぶ」程度のものだ。因みにこれを英国で10~11歳のADHD児童にやらせたところ、ADHD症状は大幅に改善したという報告も上がってる。

運動は健康にいいこと自体は間違いではないし、出来るならやるべきである…が、筋トレみたいな高強度運動はそれを目的としてやるにはハード過ぎるのだ。

次に度々話題にあがる筋トレとモテの関係に関して、筋トレはモテに確かに寄与することが確認されている。が、筋トレをやれば分かると思うのだが、所謂細マッチョ程度になるのでも1年間食生活に気を付けつつハードな筋トレが必要になるのでモテる為にやるのはやや気の長い話になる。またアナボリックステロイドを使えば誰でも簡単にマッチョになれる…というのも間違いで、オリンピアに出るようなボディビルダーは遺伝的に恵まれたうえで食生活に気を使いハードな筋トレをして10年間以上アナボリックステロイドを使い続けてマッチョになるのである。

とここまで筋トレに否定的な事を書き、過剰な期待は禁物であることを強調したが、それでも私はメンヘラは筋トレすべきだと考える。それは何故なら

そこまでマッチョにならなくてもモテる、というか過度マッチョはモテない

とりあえずマッチョが女性にモテる事自体は事実である。例えばチャップマン大学の研究では女性は筋肉質な男性を他の男性に比べてセクシーで支配的で優しくないと考えている事が判明した。「支配的で優しくないは非モテ属性では?」と思うかもしれないが、様々な研究でむしろ「優しさこそ非モテ属性」であることが示唆されており、逆に暴力性が男性のモテに大きく寄与することが認められている。詳しくはこちら参照

また実際に女性の最近の短期間のセックスパートナーの特徴を調べた結果、他の男性よりも筋肉質であったことが判明し、また同様にマッチョは生涯のセックスパートナーが非マッチョと比して多い事も確認された。マッチョが女性からアルファオスと見做されやすく、またモテやすいこと自体は紛れもない事実である。

進化心理学的にはマッチョがモテる理由は女性は強い男性は弱い男性よりも自分と子供たちを守り、資源を確保できると認識しているから…と単純に説明される。先進国においても人類は直接的腕力で闘うことはなくとも、他者より食料や資源を確保したりより安全な立場や住居を手に入れるべく闘争が続く。それ故に女性は闘争で有利になるような性質を持つ男性を志向し、魅力を感じように進化し続けていると考えられている。なので当然男性は身体が大きく脂肪がなくなり強くなればなるほど…マッチョになればなるほど女性にとって魅力的になる…わけではない

というのも同じ研究において、ある時点を超えると男性はマッチョになればなるほど女性からの魅力がなくなる事が判明しているからだ。

https://www.researchgate.net/publication/6258161_Why_Is_Muscularity_Sexy_Tests_of_the_Fitness_Indicator_Hypothesis

具体的にどの程度のマッチョからモテなくなるのか?を調べた研究がある。テキサス大学が男女のマッチョの好みを調べた研究によれば、多くの男性は女性がボディビルダーのようながっしりしたマッチョを好むと考えているが、実際の女性は適度にマッチョで細めなアスリート体型を好む事が示唆された。また同研究において女性と男性のマッチョ志向について、幾つかの興味深い事実も判明した。

・多くの男性は女性が自分の上半身を最も気にしていると考える傾向があるが、実際には女性は脚と上半身が発達した男性を好む(チキンレッグはNG) 

・性的に魅力的な女性ほどマッチョが好き(ただしそういう女性であれそこまでのマッチョは望んでない)

・女性が魅力を感じる筋肉は臀筋、上腕2頭筋、腹筋、胸筋、肩、腹斜筋、上腕3頭筋、大腿4頭筋の順

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/1474704919852918

また時々「私はマッチョは好かない」と主張する女性がインターネットなんかでは現れるが、これは「イケメンは苦手」「普通の男性でいい」と同様の嘘である。例えばカリフォルニア大学が行った10代後半から20代前半の女性160人に同年代の男性の上半身裸の写真を見せた研究では、その男性が筋肉質で、引き締まっていて、運動能力がありそうな見た目であればあるほど女性にとってより魅力的だと評価された。そして重要なのは弱々しい男性を好む女性は皆無であり、研究者が「統計的に有意なモヤシ男性を好む女性は1人もいなかった」と断言してる点である。私のnoteで何度も言ってる事であるが、女性が上の口で言う事を信じてはならない。

https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2017.1819

そして低身長男性に朗報として、英国のミレニアムコホート研究を用いてカップルの身長さと実際の交配パターンを調べた研究では、男性において筋肉質と性的魅力の相関関係は身長と魅力の相関関係より遥かに強いことが判明した。分かりやすく言えば、女性は1般傾向として高身長男性を志向するが、それよりもマッチョさを気にし志向してるということだ。勿論高身長でマッチョが最も女性にとって望ましいが、低身長男性であれマッチョになれば並みの高身長男性よりセクシーになれるということである。

因みに各研究において研究者は提示したマッチョの具体的なデータ等をとっていないが、多分写真から見るに「体脂肪率10~15%ぐらいの細マッチョ?」ぐらいが1番モテると思われる。結論から言えば女性にとって理想的な男性の体型は上半身と下半身に目で見てパッと分かる程度の筋肉があり、尚且つ腹筋が見える程度に体脂肪率が低い感じだ。

換言すればボディビルダーのような食生活や筋トレを行わなくても、週に数回筋トレをやり適度にプロテインを飲み、少しだけカロリーに気を使う生活を2年間ぐらい送れば、それだけで十分にセクシーな男性になれるということだ。これはモテを目的とするには気の長い話だが、メンヘラでも趣味やコーピングとして無理なく実行出来るラインの営為の副次効果としては破格ではないだろうか?

身体を動かすのに慣れるということ

メンヘラの社会適応として典型的な失敗パターンがある。それは精神疾患等で無職になり、それから半年から数年程度何も出来ない状態を経て寛解し、フルタイム就職に臨むというパターンだ。最初は上手く行く。メンヘラは今まで遅れてきた分を取り戻さなきゃ的な焦燥感や、これまでの他者からの失敗・失望経験の2の舞を避けようと緊張感をもって丁寧に仕事をする。周囲は「おっかなびっくりなところがあったけど真面目で優秀な人間が来た」と喜び胸を撫でおろす。特にそのような姿勢は上長へのウケが抜群だ。1見全てが順調に思える。

だが疲労が出て緊張の糸が切れ始めると途端に全てが崩壊する。ちょっとした気の緩みでミスを起こし、そのミスが精神的負担となって集中力を欠いて更にミスを招いてしまい、そのようなミスの連鎖は過去のアレコレのトラウマを掘り起こし、頭の中は軽くパニックになってしまう。そしてなまじ最初は順調だっただけに「折角上手く行ってたのに全てが台無し」「このままだと周囲から失望されてしまう」とプレッシャーがのしかかり、もう1日を終える頃にはヘトヘトだ。そのようなコンディションで出勤して当然のようにミスを出し、それによって疲弊してコンディションが更に悪化…しまいに体調を崩したり、酷い時には精神疾患をぶり返してしまう。

このパターンはメンヘラ界隈に詳しい人間や当事者は嫌になるぐらいよく見た光景だろう。こうなってしまう原因は「急にフルタイム労働という慣れない事をして心身が負担に耐えられなくなってしまう」からに他ならない。冷たいプールに突然入ったら身体がビックリして変調を起こすように、療養…無負担生活から急に高強度負担生活(フルタイム労働)に変わったことで心身がビックリしてしまうのだ。

これは「体力をつけろ」という話ではない。勿論体力は大切ではあるが、それ以上に重要なのが「ストレスに心身を慣らすこと」だ。端的に言えば心身貧弱なモヤシでもフルタイム労働してるサラリーマンは山ほどいるし、逆に屈強な運動部出身マッチョでも労働で心身を崩す例は決して珍しくない。この違いは「そのストレスに慣れられるか?或いは向いてるか?」の違いだ。

例えば私は陰キャなので飲み会やパーティに行くと帰宅すれば直ぐに横になりたいほど疲れてしまい次の日はヨロヨロと出勤する羽目になるのだが、陽キャは逆にリフレッシュしてイキイキと出勤する。これは陽キャの方が体力があるという話ではない。例えば陰キャの私は何時間でも1人で調べ物をし資料作成とか出来るのだが、陽キャが同じ事をすれば大抵はゲッソリする羽目になる。というかパソコンをn時間弄るだけでゲッソリする陽キャも珍しくない。これは体力云々以前に「陰キャは1人PC作業するストレスは慣れてるし向いてるが、多数とワイワイ騒ぐストレスには慣れてないし向いてないので疲れる。1方で陽キャは多数とワイワイ騒ぐことに慣れてるし向いてるが、1人でPC作業は慣れないし向いてないので疲れる」ということだ。

なのでメンヘラは職選びにおいては自分が耐えられる・向いてるストレスを見極めることが大切になるのだが、避けられないのが「定時に起きて出社し帰宅する」というプロセスだ。今はリモートワークとかもあるが就労する以上は必ず1定の運動は必要になる。そして今まで不規則な生活を送り、また身体活動もしてこなかったメンヘラが急に時間通りに出社しろと言われて心身に不調をきたさないわけがない。本来は週n回短時間労働から始められればいいのだが、そうも言ってられないのが現実だ。

その為メンヘラの社会適応準備において生活リズムを整え軽い運動習慣をつけるのは必須だ。それは上記の通り「早歩き」で十分だし、敢えて筋トレを選ぶ必要性は薄いのだが、それでも推したい理由として「筋トレは運動神経が必要ない」「自宅でも出来るし時間や強度も自由に設定できる」「発達していく実感が得られるので多少は自己肯定感に寄与する」という点を強調したい。

筋トレは同じ動作の繰り返しなので運動神経が必要なく、また同じ動作の繰り返しという点でASDとも相性がいい。次に自由に時間も強度も設定出来るので体力や根性のないメンヘラでも自分のペースで実行出来るし、自重トレーニングなら必要な機器もない(機器が欲しくなったりジムに通いたくなるレベルで筋トレにハマれるならば、もう初期の健康になる的な目的は達成できてることだろう)。また生活習慣をつける為に出来れば筋トレは「決まった曜日・または毎日に決まった時間にやる」事をオススメしたい。予定通りに身体を動かすストレスに心身を慣らしておくのだ。最後に筋トレしても対してメンタルは改善しないが、それでも筋トレは「同じ動作で繰り返せば如何に運動神経がなくても成果は必ずついてくる」という点で、特に運動にいい思いがないメンヘラにオススメだ。良い悪いは別にして運動神経が無くても問題なく、また1人で何も道具等を揃えなくても出来るスポーツは筋トレだけなのだから。

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