IQが20/30違うと会話が成立しないのか?

貴方は子供と会話出来ますか?出来ますね?なのでIQが20もしくは30違っても会話は成立します。お疲れ様でした。…というだけの話でしかない「IQが20/30違うと会話が成立しない」的な言説は本当によくXでバズる。

この言説を持ち出す側は確で自分をIQが高い側だと思っており、自分と相手…大体は低学歴やブルカラー労働者や田舎者等の被差別属性の方…の会話が成立しないのは、こちらが賢過ぎて相手が愚かすぎるからだと結論する。そのような姿勢や侮蔑意識で相手との会話に臨む事と会話が成立しないことは決して無関係ではないような気がするが、とにかく彼等は自分が頭良過ぎる故に浮くと声を大にして主張してる。

そこでそのような臆病な自尊心と引き換えに大切な物を色々失ってる方々を救うべく、ここではこの言説が1体如何なる文脈で出てきたのか?元ネタはナニか?をザックリ解説しようと思う。

この神話の元ネタは心理学者のリタ・ホリングワース(1886~1939)が子供達を観察して述べた仮説である。ホリングワースは子供達の集団を観察し「リーダーが頭良すぎるとフォロワーはリーダーと自分を同1視せずリーダーを支持しない傾向がある気がする。IQで30ポイントぐらい差異があると厳しい感じ」と述べた。ここで気をつけて欲しいのは、これはあくまでホリングワースの観察であり、彼女は100年以上前の人物であり、更に論旨は会話ではなくリーダーシップであることだ。

この記述をもってGrady M. Towersという警備員は「The Outsiders」という記事を執筆し「つまり知性が異なる相手とは真のコミュニュケーションは成立しない」と断言した。(The implication is that there is a limit beyond which genuine communication between different levels of intelligence becomes impossible)

これが色々論理的に飛躍しているように思えるのは気のせいではないだろう。ホリングワースのリーダーシップと子供集団についての記述が、IQ30ポイントのギャップを越えると如何なる種類の「真のコミュニュケーション」も成立しない根拠になってるのだ。端的に言って無理がある。

しかし、この記事や仮説はタワーズの所属しているThe Prometheusにおいて広く受け入れられた。このThe Prometheusは高IQなら誰でも参加出来るメンサに似たコミュニティであり、「Gift of Fire」というジャーナル(査読済みの科学ジャーナルではない、同好会の会誌みたいな感じ)に掲載されると会員から熱狂的な支持を受けた。

要はこのネタは

・心理学者ホリングワースが「IQ高過ぎるリーダーは周囲の支持を得にくいっぽい」と述べる

・それをタワーズが「IQが30違うとコミュニュケーションが成立しない」と記事の根拠材料にして高IQクラブの会誌に載せる

・記事が高IQクラブの会員に刺さり広まる

というプロセスを経て定着したものだ。当然科学的根拠も何も存在しない

余談だが高IQクラブはその性質、色々と困窮してる方が非常に多い。何故なら高IQクラブに入るのは高IQの中でも「生きてきてIQを測るような羽目に陥った精神疾患・精神障害者」「高IQクラブに入りたがるような自分のIQに強い誇りを抱く人間」に限定されるからだ。そういう人間達にとって「自分が上手く他者と会話出来ないのはIQが高過ぎるからだ」というのは、どれほどの福音…欲しがってた理由…なのかは想像に難くない。しかしながらソレは「貴方は子供と会話出来ますか?」だけで崩れるような脆弱な物語である。高いIQを持つ貴方ならきっと賢明な判断をして、現実を受け止め、IQの低い方とも会話出来るようになるはずだ。






というプロセスを経て定着したものだ。当然科学的根拠も何も存在しない。

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