見逃される男性暴力

女性から男性への暴力が見逃されてる…と聞いてもピンと来る方は少ないだろう。統計的にも例えば警察庁の令和4年の配偶者からの暴力を見ると女性被害者は73%、加害者の性別は男性が73%となっており男女間暴力は女性が被害者、男性が加害者になりやすい傾向が伺える。

https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/dv.html

しかしながらグラフをよく見ると男性被害者数が右肩上がりだ。そして暗数を踏まえると更に話が変わってくる。内閣府が平成29年に行ったアンケート調査によれば、「配偶者からDVを受けた事があるか?」という問いに「ある」と回答した女性は31.3%であったが、男性は19.9%が「ある」と回答しているのだ。

https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/h29_boryoku_cyousa.html

また1000人の中高生にデートDVに関する調査をしたところ、男子生徒の3割以上が女性から暴力を振るわれてることが判明した。尚女性の暴力被害率は12%ほど。

https://mainichi.jp/articles/20160208/k00/00m/040/054000c

そして極めつけは警察の事件対応数である。配偶者間の暴力犯罪加害者の割合は男性93.3%女性6.7%であるが、殺人の割合になると男性58.6%女性41.4%と差が1気になくなりだす。これは上記の暗数の調査と合わせて考えるなら「男性は女性から暴力を受けても大抵は泣き寝入りしており警察も事件化しない。しかしながら殺人はその性質上表に出ざるを得ず、その割合は現実の男女間暴力の実態の反映に近くなる」と解釈する他ない。女性は男性に暴力を振るわず、ギリギリまで追い詰められてから爆発するので殺人という極端な形になりやすくなる…という解釈は上記の暗数事情を踏まえると不自然な解釈と言えるだろう。

https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h27/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-04-02.html

またこうした傾向は先進国全般で確認されている。米国の出生コホート調査によればパートナーに対する身体的暴力の加害者は身体的暴力は女性の37.2%、男性の21.8%が加害者である事が判明した。更に女性の18.6%が重度の身体的暴力を行ったのに対し男性はわずか5.7%だった。またこの調査結果は男性よりも女性の方がパートナーに対して身体的に暴力的であることを示す地域社会の研究と1致している事も確認された。

またカナダにおいて男子18441人、女子17459人を対象としたパートナーからの暴力経験を調べた大規模調査によれば男子は女子よりもパートナーからの暴力の被害者になる可能性が45~58%高い事が判明した。また関連する研究で男性は女性よりも暴力被害を過小報告し、人間関係における暴力の深刻さを訴えない可能性が高いことを合わせて考えると実際はもっと男子側の暗数が埋まってる可能性が指摘されている。

https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0886260518788367

また17か国のカップルの間で女性は男性よりも頻繁にパートナーに暴力を振るう傾向にあることが発見された。割合は女性30%で男性24%である。

https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1077801206293335

…みたいな研究が私の知る限りあと20個ほどもあるが、もういいだろう。要は先進国において女性は男性を男性が女性を殴る以上に殴ってる可能性が高いのだ。女性が男性よりも頻繁に暴力を振るう現象に関しては様々な説明がされている。恐らく単1ではなく下記の全てが要因であり、それらが複合して女性に拳を振るわせているのだろう。

・男性は立場と責任があるため暴力の使用を控える傾向にあるが、女性はそういったものがないため男性に比して気軽に暴力を振るえる。

・女性は男性よりも感情の発達が早くに止まり、また幼稚な怒りの癇癪に苦しむ可能性が高く、神経症傾向等においても男性より高いスコアを示す。
https://note.com/beatangel/n/n318c550320ca

・パートナーが自分を屈服させられるほど強い雄か試す為…要はクソテストとして殴っており、同様のクソテストはトカゲとの共通の祖先まで遡れる。https://doi.org/10.1007/978-1-4613-9682-6_6

しかしながら最大の理由はもう皆薄っすら分かっている事だろう。つまり先進国において「女性は被害者」というのは絶対的な教義であり、男性被害者は存在そのものが教義を脅かすのでいないものとして扱われ、また教義に異議を唱えるものは処刑されるのである。それ故に女性は男性を如何に殴っても「被害者」として扱われ、男性は女性に殴られて尚「加害者」として扱われるのだ。これは決して大袈裟な話でなく、今現在日本で起きてる事実である。

例えば札幌・ススキノのホテルで男性が殺害され首を切断された事件においては、容疑者が女性であった事から「レイプやストーカーの恐怖から犯罪に及んでしまったに違いない!」とする世論が渦巻き、また被害者は女装趣味や性自認の曖昧さがあった事もあり「トランスジェンダーを装って犯人に近づき強姦しようとした変態」という決めつけが行われた。その後、捜査が進み「犯人はスナッフフィルムを撮影していたこと」「犯人の女性に猟奇趣味があったこと」「そもそも頭部を切り落とすこと自体が猟奇」といった事実が判明し、犯人擁護&被害者叩きは下火になったものの、報道から3日で犯人の減刑を求める署名は1000超も集まった事は「現代日本において女性は何時いかなる時でも被害者として扱われる」以外で説明することは不可能だろう。頭部切断という異様な犯行であっても、スナッフフィルムや猟奇趣味が判明するまで女性犯人は被害者ポジションを得られたのだ。

また男性被害者が不可視化される例は「NPO法人虐待どっとネット」の代表理事である中村舞斗氏のXの炎上事例が分かりやすいだろう。彼はXで「男性のDVシェルターって少なくね?」と呟いたところ


まぁ彼女達の言い分を要約すれば「男性向けシェルターが少ないのはDV被害者のほぼ全員が女性であり、そこに疑問を持つのは見当違いの被害者意識やミソジニーの証であり、女性被害者を軽視する性差別である」ということらしい。これらのポストを見て「なんて酷い人間達がいるんだろう」と思うのは間違いだ。何故なら男性暴力被害はフェミニズム誕生以来ずっと闇に葬られ続けてきたからだ。この現象に関連した最も代表的な事例は活動家で小説家のエリン・ピッジーだろう。

彼女は1971年に家庭内暴力から逃れる女性の為の避難所をロンドン西部のチズウィックに開設した。これが世界初のDVシェルターだと言われている。これにより彼女は慈善事業家として高名になりフェミニストからも賞賛された。しかしながら彼女は想定外の事態に直面する。どうもDV被害者は女性だけでなく、しかも被害者とされる女性は男性に対する暴力率が高い。そして彼女は自分の仕事上の経験を元に「Prone to Violence」という本を発表し、DV被害者は男性も多い事、DV被害者は加害者を兼ねてるケースも多いことを発表した。その結果起きたのが殺害予告である。実際に飼い犬は射殺された。彼女はこうした脅迫や中傷キャンペーンから逃れるべく転居を繰り返し中国に移住した。

このように先進国において男性被害者は徹底的に存在を不可視化される。何故なら男性被害者の存在は現在先進国における「女性は被害者」という教義を覆し、彼等に光を当てることは男性が被害者また女性が加害者になりえること、女性は決して無謬な存在ではないという事実に踏み込むものだからだ。

それ故に今の社会の中で男性暴力被害者が救われることはない…少なくとも政治的に正しい形で救われることはないだろう。せいぜい「女性には1切の責任はなく社会は男尊女卑であり女性の方が辛いのは大前提ではあり、私が殴られることはひとえに私自身の非によるものではありますが、流石に少しばかりの加減や苦しみに哀れみを頂きたいのです」との3跪9叩頭や、「男性同士で支え合おう!」的な自助努力や、「暴力自体を減らそう!」みたいな毒にも薬にもならない美辞麗句を唱える事が許される程度だろう。奴隷が王様の機嫌を損ねないように奴隷制廃止を訴えることは出来ないのである。

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