遮断するイヤホン

つけ麺屋の行列に1人で並んでいた。
その日に調べてノリで来てみたが、ここまで人気店だと思っておらず、長時間立ちで待機する心の準備はできていなかった。
前に並ぶ30代前半くらいの夫婦は延々と仕事の愚痴を言い合っている。
キンキンと高い声で新入社員を悪く言う奥さんの声を聴いていると気分が悪くなってきたため、
イヤホンで耳を塞いだ。
この列に並ぶ10数名、そして店内にいる店員含めた数10名の中で1人も知らない可能性のあるバンド音楽が私は孤独にしてくれた。
イヤホン誰からも干渉されることのない時間に連れて行ってくれる。
1人の方が楽という考え方はコミュニケーション能力の低下の原因の1つだが、これから食べるラーメンへの気持ち作りの方が今は大事だ。
しかし値段と行列に見合う味ではなかったのが残念。

そしてまたイヤホンで耳を塞ぐ。
瞬間、街の喧騒はただの背景となる。
この街の何人がこの今聴いているこのバンドを知っているのだろう。
同じ感性を持つ仲間が欲しいような、自分だけが知っている優越感を失いたくないような。
どちらであっても音楽が好きな自分は変わらない。

OVER ARM THROW - MUSIC


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?