宇宙オーケストラ楽団の襲来

子供の頃の想像力は無限大だった。
プールに溜まってる水が一瞬でゼリーになる魔法とか、空から見たらこっちが空だとか、自分たちは誰かの頭皮の上で生きるただの毛じらみなんじゃないかとか。
一番怖かったのは、「地球温暖化」を「地球音楽家」と聞き間違えており、環境汚染を続けると罰として宇宙オーケストラ楽団を名乗る宇宙人達が楽器を武器に地球を破壊にしに来ることだった。
バイオリンの音波で建物を破壊し、チェロは巨大なハンマーと化す。
それらを空中から操る、禍々しい容姿に反した厳かな黒いテイルコートに身を包んだ宇宙人指揮者。

誰にも真実を教えてもらってないからこそ、想像は歯止めは効かず、斜め上方向へと飛んでいた。
何もかもが冗談なんかじゃなくて本当に思っていたことだった。

20歳をとうに超えて半端に知識を得た今は、宇宙人は襲ってくるどころかそもそも存在を疑われる対象に成り下がった。

地球音楽家への恐怖がなくなったのに、なぜだか寂しい気持ちがある。
地球を守るためにどう対抗しようか必死に考えていた少年時代の私はどこへ行ってしまったのだろうか。
もしかして、違う世界線で生きる少年時代の私が自ら宇宙へ突撃し、宇宙人と闘って勝利を収めてくれたからこそ今の平和があるのかもしれない。

幼い頃のように想像力を膨らませると全てが報われた気がした。

大槻真希 - memories



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