形成される私

高校生だった私に母が勧めてきた映画があった。
就職活動中の大学生数名のそれぞれの人間模様や葛藤を描いていた。
主題歌と綺麗な女優が出演しているかくらいの理由でしか映画を観ない私だが、今作はそのどちらにも当てはまっていたので言われるがままにDVDではあったが鑑賞した。
正直、なにが面白いのか分からなかった。
将来のことなんて何一つ考えてなかった私に共感できるところがなかった。
それほどの距離感を感じるほどに私は精神的にも子供だった。

母は未来に対して考えのない私を見抜いていた。
「近い将来に経験する可能性のある苦労」を映画を通して伝えたかったに違いない。
素直に母の言うことを聞けなかった私に、有村架純という美女を通して道を作ってくれたのだ。
その先にあるメッセージに辿り着けるように。
しかし私は2時間有村架純だけを見つめ、最も大切な部分を分かろうともしなかった。
7.8年の時が経ち、その映画が残してくれたのは作品としてのメッセージ性ではなく、母の私を気遣う気持ちだった。

あの頃からどのくらい成長できただろうか。
家族はまだ心配しているだろうか。
友達からはどう見えているだろうか。
社会にとってはいくらでも替えの効く部品だろうか。
取り巻く環境から自らが形成されていく。

中田ヤスタカ - NANIMONO


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