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男小悪魔、森雅之

この間レスリーチャンの映画のことを少し書きましたが、レスリーの男小悪魔っぷりもなかなかすごいんですけれど、日本を代表する男小悪魔と言えば森雅之を凌ぐ者はいないんじゃないかと思っています。

男小悪魔っぷりを遺憾なく発揮した代表作はなんと言っても、昭和30年公開の成瀬巳喜男監督の「浮雲」でしょう。
溢れるフェロモンと、ちょっとインテリっぽいところに私もクラっと来ました。
上機嫌だとフランス語がひょいと口をつく設定なんかたまりません。

妻の葬式代を昔の愛人にせびりに来るのに、ものもらいでもできたのか、眼帯をして訪問するんですけれど、野良犬のような惨めな姿とは言え、やっぱり魅惑的なんです。
もう、成瀬作品の二枚目は全部森雅之で統一して欲しいと思いました。

吉村公三郎監督の「安城家の舞踏会」での没落貴族の放蕩息子役も彼の持ち味を良く活かしていたと思います。
まだ、映画デビューしたてで、お顔がまん丸でパンパンの津島恵子を手込めにしようとするんですけれど、結局可哀想になっちゃったのか止めちゃうんですよね、悪の限りを知り尽くしたような顔をしているわりには。

私、昭和30年代のスター監督では小津安二郎と成瀬巳喜男は結構見ているんですけれど、溝口健二と黒澤明はどうも苦手で見たことがないんです。
特に黒澤の騒々しくて男臭い演出は本当に苦手で。
なぜ彼が巨匠と呼ばれるのか本当に分からないんです。

で、黒澤の「羅生門」に森雅之がキャスティングされているんですよね。
もちろん見ていないから感想は言えませんが、あの泥臭い演出にうまく溶け込んでいたんでしょうか、あのフェロモンが。

京マチ子版の「痴人の愛」にも京マチ子演じるナオミがお気に入りのお金持ちのボンボン、マサちゃんにキャスティングされているようで、これは俄然見たくなりました。
マサちゃんがどんな風にナオミを甘やかして、手のひら返しをするのか気になって眠れません。

森雅之と言う人は有島武郎と言う作家のご子息で、やっぱり育ちがいいんでしょうね、こっぴどい扱いを女性にしても、なんかみんなそれほど怨んでいる様子もないし。
男小悪魔ともなると、例え刃傷沙汰となったとしても女性に怨まれちゃおしまいなんでしょうね。

現代の俳優さんでもフェロモンが溢れている方はいらっしゃいますけれど、知性がそんなに感じられなくて、森雅之クラスまで到達している人が見つかりません。
モテたい男性は、まずインテリジェンスを身につけてください。





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