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スコアラー佐伯遙子考

 1月3日が何の日が、皆さんはご存じだろうか。

 これとほぼ同一の書き出しで始まる記事がちょうど一年前に投稿されたことを覚えておられる方はどれだけいることだろう。そう、1月3日とはアイプラにおける私の最推しこと佐伯遙子さんの誕生日である。
 前置きはともかく、佐伯遙子さん、お誕生日おめでとうございます!今年で誕生日を祝うのも2回目だ。昨年はアセンブルハーモニーとウィズ・ザ・サンシャインのカードスキルの差異に焦点を当てながらアイドル佐伯遙子について考えたが、今年はまた違った観点から佐伯遙子について論じてみようと思う。勿論自己満足に過ぎないことは重々承知しているものの、やはり誕生日に何かしたい、彼女の誕生日は彼女自身を深く見つめたい、との想いから今年も筆を執ることとなった。

 さて、本記事のテーマはタイトルにもある通り、ズバリ「スコアラーとしての佐伯遙子」である。スコアラーとはアイプラに存在するカードのタイプの一つであり、ライブでのスコア獲得の中心となる役割を有しているものだ。アイプラのライブにおける獲得スコアは、VENUSプログラムの採点基準を踏まえた時、ステージパフォーマンスのレベルやどれだけファンを盛り上げたかなどが反映された値と推測される。すなわち、スコアラーとはそのライブにおいて全体を盛り上げて引っ張っていくアイドルと言えるのである。譜面にも依存するが、概ねセンターはスコアラーを配置することが多い傾向にあることもその根拠の一つとなろう。
 今回は、佐伯遙子のスコアラーカードのスキルが、彼女のアイドルとしての姿、もっと言えばそのライブにおけるセンターとほぼ同義の輝きを見せる時の様子とどのように通じているのかについて考えたい。拡大解釈と言われたらそれまでだが、私はやはり、公式から提示されている情報の全ては物語上のキャラ像を読み解くために多かれ少なかれ寄与している、と強く信じているのである。そのため、カードの性能に関してそういう見方もあるのだな、くらいの気持ちで読み進めていただけると幸いだ。なお、最終的な結論だけが知りたい方は目次から「まとめ」の章へ飛んでいただくことで十分満足できると思われるので、適宜活用してほしい。

 また、本記事では、各スキルがどういった意味で解釈されうるか、という際に以下のような定義を用いている。適宜参照されたい。

  • SPスキル:明確なここぞ!というタイミングで発動させる大技、これを持っているアイドルはライブで大きめのアピールを出してタイミング良く会場のボルテージを大幅に上昇させることができるタイプ

  • Aスキル:観客に見せるアイドルとしての魅力のようなもの、Aスキルを複数持つアイドルはそれだけ多様な魅力をファンに見せている

  • Pスキル:外からはパッとわからないけれどライブ中裏でサポートしたり自分にバフをかけたりといったもの、Pスキルを多く持つアイドルは、ファンに見せるパフォーマンスを高めるための努力をそれだけ多く行っている

 勿論、Aスキルが少ないからと言ってそのアイドルの魅力が少ないとも、Pスキルを持たないアイドルが努力をしていない、あるいは努力が足りない、とも、考えているわけではない。AスキルやPスキルはこのカードにおいて運営が強調したいそのアイドルの性質だと思っているため、これがそのキャラクターの全てであると言うつもりも毛頭なく、そのカードの性能から読み取れるキャラの一面について述べるに留まっており、その際の指針としてそのスキルがAなのかPなのかはたまたSPなのかを用いているのである。

 さて、それではいよいよ本題に入るとしよう。初めに今回選んだ二つのカードがそれ以外のスコアラーとどう異なっているのかについて述べ、続いてそれぞれの性能を細かく見て行くこととする。


これら二つが他と異なると考える理由

 まず、今回取り上げる2種類のスコアラーが実装済みの佐伯遙子のスコアラーと区別されうる点について、大きく分けて三つ説明する。

属性

 一つ目は非常に単純で、以下のように2024年1月2日時点で実装済みの佐伯遙子のスコアラーについて、その属性を列挙してみると一目瞭然だろう。

恵みのサニーシャワー:ビジュアル
ゆるり妄想温泉の旅:ビジュアル
巡る季節と色褪せない日々:ボーカル
共に繋いだ約束の音:ダンス

 そう、以上からわかる通り、この二つ以外の佐伯遙子のスコアラーはどちらもビジュアルなのである。
 先ほどアイプラのカードの性能がそのカードにおいて強調したいアイドルの性質や一面を反映されたものと考えていると書いたが、私はカードの属性も例に漏れないと見ている。ボーカルとダンスに関してはそれぞれ属性名と同じく、歌、ダンスの能力に焦点を当てていると考えられるのに対し、ビジュアルはどうだろうか。ステージパフォーマンスにおける「ビジュアル」と言えば、やはり衣装などのアイドル自身の見目が連想される。千紗など衣装のデザインや制作によく関与しているキャラであれば、衣装面に関連するというニュアンスが強いと思われるものの、「恵みのサニーシャワー」「ゆるり妄想温泉の旅」のカードイラスト(前者は水着、後者は温泉に入っている様子を描いたもの)を考慮すると、遙子に関してはむしろ彼女のプロポーションもその「ビジュアル」が指すうちの大きな割合を占めているように思われる。つまり、これまでビジュアルのスコアラーが連続して実装されていた彼女は、ライブステージで中心となる時にはプロポーションなど外見に寄った側面を強く印象づけられていたと言える。同様の見方をすれば、逆に今回取り上げる二つにおいては、彼女の見た目ではなく歌やダンスといったパフォーマンスの素の実力に目が向けられていると考えることができるだろう。
 勿論、ビジュアルが魅力的な一面として評価されている時が良くないと言いたいわけでは決してない。ただ、今回取り上げる二枚のカードから佐伯遙子の有するパラメータのうちどういった分野に注目すべきと考えられるかを見た時、それらはいずれも連続して実装されたビジュアルのスコアラーカードたちとは一線を画しているように思われるのである。また、こうした属性の差異は、続いて説明する二つ目の特徴も合わせて考えると非常に興味深いものとなる。

Aスキル

 続いてAスキルについて比較しよう。といっても細かいスキル性能自体はこの後の節で論じていくため、概観からわかる共通点と他との違いを探っていくに留めるつもりだ。
 「巡る季節と色褪せない日々」、「共に繋いだ約束の音」、両者はともにAスキルにおいてもそれ以外の遙子のスコアラーカードとは異なる点を持つ。前者は「低下効果反転」、後者は「[ライブバトルのみ]同じレーンの相手に8段階ダンス低下効果」の効果を有している。すなわち、両者ともにAスキルの発動効果にライブバトルでしか発揮されないものがあると言える。一方「恵みのサニーシャワー」「ゆるり妄想温泉の旅」ではどちらもスコアライブであっても発動される効果のみを持っているのである。性能を細かく見ると「ゆるり妄想温泉の旅」はスコアバトルよりもライブバトルでその真価を見せるカードだが、スコアライブではAスキルの一部の効果が発動されないといったことはない点でやはり今回取り上げる二つとは異なると言って良いだろう。

カードイラストのシチュエーションおよび文脈

 最後の共通点としては、節タイトルにもある通り、そのカードのイラストの状況やストーリーにおける位置づけ、あるいはそのカードが持っている文脈が挙げられる。
 一つ目の「巡る季節と色褪せない日々」の☆5イラストは、イベント「音色の輝石が紡ぐ未来」の中でさくらに話した長瀬麻奈との思い出を、現在の遙子が少し遠くから見つめている様子が描かれている。高校生の遙子が目じりに涙がありながらも満面の笑みを浮かべているのと、カフェの窓の外から注がれる現在の遙子からの慈しみ愛おしく思うような視線が印象深い一枚である。また、二つ目の「共に繋いだ約束の音」は、遙子と麻奈の関係を軸に据えたイベント「星々が奇跡と叶える約束の未来」の開催と同時に実装された。このカードのイラストには、過去に麻奈と一緒にデザインしたものと同じ衣装を纏った遙子がステージで麻奈へ想いを馳せながら涙を浮かべて笑う姿が描かれている。
 読者諸賢にはもうおわかりいただけただろうか。そう、どちらのカードも長瀬麻奈と密接な繋がりを持っているイラストであり、両者ともに彼女と切り離して論じることは不可能と言えるほどである。

 したがって、本記事で注目した二つのカードには、属性、Aスキル、そして物語上の文脈において、それ以外とは明確に異なっているのだ。ゆえに、今回の記事のテーマは次のように言い換えることができる。つまり、佐伯遙子がスコアラーとして輝きかつその歌やダンスが主軸の魅力である場合について、この時におけるバトル適性と長瀬麻奈との関わりに重きを置きながら強調された性質について詳しく考えていく、と。

 次章からは、いよいよそれぞれのカードの性能を詳しく分析していくこととする。

「巡る季節と色褪せない日々」

ボーカル/スコアラー
SPスキル:1740%のスコア獲得 自身に5段階ボーカル上昇効果
Aスキル:500%のスコア獲得 自身の低下効果反転
Pスキル:自身に5段階ボーカル上昇効果 自身に3段階Aスキルスコア上昇効果

参考:[巡る季節と色褪せない日々]佐伯遙子の評価とライブスキル/エール【アイドリープライド】
https://appmedia.jp/idolypride/76650371

 このカードは、長瀬麻奈との解けかけた繋がりを麻奈自身が固く結び直してくれた思い出を現在の佐伯遙子が回顧しながら前へ進む様を描いたものである。
 少し話は本題から逸れるものの、佐伯遙子は作中において何かと何かを結び付けるという役割を果たすことが多い。例えばこのカードが実装された「音色の輝石が紡ぐ未来」ではわだかまりのあるさくらと琴乃の二人を繋ぎ、またさくらを過去の長瀬麻奈と繋げていることがわかる。他にも次章で詳細を述べるイベント「星々が奇跡と叶える約束の未来」においても遙子が星見プロの過去と未来を繋ぐ存在であることがストレートに描かれている。これらの描写から、遙子はアイプラにおける繋ぐ「媒介者」としての役割を持っていると考えることはそこまで荒唐無稽とも言えないはずだ。
 そんな「繋ぐ」佐伯遙子自身がかつて誰かとの繋がりを自ら閉じて断とうとした時がまさにこのカードの対応イベストで明かされた麻奈との思い出に当たる。遙子に離されかけた手を握り返し、遙子が解こうとした糸を結び直したのが麻奈であったと言えるのだ。この思い出が現在の遙子にとって非常に大きなものである理由は、普段繋ぐ側である遙子が逆に他者から繋いでもらった数少ない記憶だからであるかもしれない。
 閑話休題、このカードで大きく描かれるのは上記のエピソードの麻奈と遙子であるものの、そんな二人の姿はよく見ると透けており、カフェの窓の外には店内にいるかつての自分たちの姿を見つめながらこの日々を回顧する、現在の遙子がいるのである。カードタイトルの「巡る季節と色褪せない日々」も踏まえると、やはりこのカードのメイン視点は現在の20歳になった佐伯遙子であると考えるのが妥当だろう。ここから、カードのスキル性能もこの思い出を振り返る側の佐伯遙子の持つ性質をもとにしたものと考えるのが適切と思われる。その上で、上に引いたスキルを見て行こう。

 今回特に注目したいのは、初めの章で述べた通りその属性とAスキルだ。
 このカードは佐伯遙子初のボーカルスコアラーである。佐伯遙子は別の記事で以下のように論じた通り、歌を得意分野とするアイドルであるとの推測が立てられるキャラだ。つまり、このカードは佐伯遙子にとって自分の得意とする方面でスコアラーとしての輝きを放っている時の性質が初めて強調されたものと言えるだろう。

佐伯遙子の歌についての得意不得意に関しては本編中で直接明示されているわけではない。しかしながら、アセンブルハーモニーとウィズ・ザ・サンシャインの両方でボーカル属性だったり、一問一答内でダンスより歌の方が好きと(悩みながらも)答えていたり、と佐伯遙子は歌の分野が好きで得意なのではないかという推測が立てられる。特にアセンブルハーモニーでのサニーピースの各員の属性はそのままそのキャラクターの強み、さらにはSUNNY PEACE for You and Me!の制作担当分野と繋がっている。

アセンブルハーモニーとウィズ・ザ・サンシャインから見るアイドル佐伯遙子
https://note.com/beans_sprouts/n/nf6fab6238a72

 そんな初ボーカルスコアラーが麻奈に手を引かれた記憶を色褪せないものとして振り返る遙子のカードであったことからは、彼女にとっていかに長瀬麻奈が大きな存在であり続けているのかを感じられる。

 次いでAスキルは、やはり注目に値するは「自身の低下効果反転」である。しかもAスキルなのだ。冒頭でAスキルとは裏での努力ではなく観客がステージで感じ取る直接的なアイドルの魅力であると定義したが、それに則れば、このカードでは遙子が自分自身にかけられた低下効果を自ら反転させる様がステージ上の強みとして全面に出ていると考えられる。これが麻奈との日々を振り返る時の遙子において強調される性質とすると、遙子は現在、あの時の麻奈が二人の間の糸を結び直してくれたという思い出を胸に抱くことで自分にかかったデバフなどを強化効果へ反転させることが可能となっていると見ることができると言えるだろう。
 ここで、これまでの本編やカードストーリーで遙子が悩んでいる様子が描かれた時のことを思い出してみよう。いずれにおいても遙子は牧野やサニピのメンバーに相談はせず、既に彼女の中で決まった答えとその理由のみが事後的に伝えられるのみであることがわかる。牧野もサニピも誰も遙子の悩みの過程に関与することはできず、遙子は一人自分の中にあるものと向き合うことで答えを出している。その「自分の中にあるもの」は、もらった応援や遙子の輝きを信じてくれている人の存在だったり、あるいは走り続けてきた自分自身の足跡だったり、現在の遙子を支えているものたちである。遙子が自分の悩みや葛藤に答えを出しさらに前に進んで行くことを決めるまでのプロセスは、まさしく自分自身で低下効果を反転させていると言えるだろう。
 「巡る季節と色褪せない日々」という麻奈に手を引いてくれた思い出を抱いた遙子が描かれたカードで初めて、こうした遙子の「自己対象低下効果反転」をしている性質と結びつく性能が実装され、しかもそれが遙子のスコアラーとしての輝きであるとされているとの見方からは、二つの結論が導ける。
 まず、このカードで描かれた思い出においても、イベント「星々が奇跡と叶える約束の未来」で明かされた過去に麻奈と交わしたやり取りにおいても、何度も麻奈は悩む遙子の手を引いてくれているのだ。ここから、現在の遙子が悩んだり立ち止まったりした時に見つめている「自分の中にあるもの」のうちに「麻奈に手を引かれた思い出」が鮮やかなままで含まれると考えられる。イベント「星々が奇跡と叶える約束の未来」での麻奈が遙子にかけた言葉も、遙子の言う「裏切りたくない、私を信じてくれる人」という存在が麻奈も含んでいることの根拠と言える。
 二つ目の結論は、自分の中にある大切なものと真っ直ぐ向き合い自分一人で答えに辿り着く、そんな彼女の性質が佐伯遙子のアイドルとしての輝きの源の一つとなっている、ということだ。2023年に発売されたシングル「Gemstones」に収録された佐伯遙子初のソロ楽曲である「voyage」においても、「変わらない風景が続いてもしふいに胸が騒いだ」時、彼女に大丈夫と思わせてくれるものは、彼女がちゃんと進んでいることの証左である後ろを振り返った時に残っている足跡と歌われており、またこの楽曲そのものが遙子自身が自分に「大丈夫だよ、夢は叶うよ」と伝える構図を有するものとなっている。この楽曲では遙子のアイドル活動が広大な航路に例えられているが、サビに登場する、”彼女の帆船の味方になる風”が指すものはおそらくファンからの応援や自分の輝きを信じてくれる人の存在であろう。この楽曲では、迷った時不安に思った時立ち止まりたくなった時、そういった時に遙子が大丈夫と思って再び前へ歩き始める様子も歌われているように思われる。わざわざソロ楽曲で歌っている内容でもあり、やはり遙子のこの性質は彼女にとっての強みの一つに数えられるものであろうと考えられる。

 さて、「巡る季節と色褪せない日々」についての論考はこれくらいにして、そろそろもう一つの方に話題を移そうと思う。おっと、バトル適性の話をしていない、そう思った読者の方もいらっしゃるかもしれない。勿論忘れているわけではない。ただ、この観点については次で論じるカードのスキルと合わせて話すのがわかりやすいと考えられるため、ここではひとまず保留とさせていただきたい。なお、読み進める前にこの章で述べた「佐伯遙子の輝きの一つを生む『自分の中にある大切なもの』には長瀬麻奈や彼女との思い出も含まれる」ということは再度頭の片隅に留めておいていただけると今後の文章の理解により役立つことと思われる。

「共に繋いだ約束の音」

ダンス/スコアラー
SPスキル:1500%のスコア獲得、100コンボ以上時スコア獲得倍率が3330%に上昇
Aスキル:380%のスコア獲得、ダンスアップ状態の段階数が多い程効果上昇
[ライブバトルのみ]同じレーンの相手に8段階ダンス低下効果
Pスキル:80コンボ以上時自身に12段階ダンス上昇効果 ライブ中1回のみ

参考:[共に繋いだ約束の音]佐伯遙子の評価とライブスキル/エール【アイドリープライド】
https://appmedia.jp/idolypride/76946816

 続いては、イベント「星々が奇跡と叶える約束の未来」にて実装された佐伯遙子初のフェス限定カードにして初のダンススコアラーである「共に繋いだ約束の音」の性能について細かく見て行こう。ここで主に注目したいのは、SPスキルとPスキルに共通する「コンボを長く繋いだ時の獲得スコアの大幅上昇」と、先ほど保留としたAスキルにおけるバトル適性の高さである。後者については、「巡る季節と色褪せない日々」のバトル適性とともに見て行こうと思う。
 このカードはSPスキル発動タイミングが遅ければ遅いほど獲得スコアが上昇する特性を持つ。SPスキル自体もコンボが100を超えた時に倍率が跳ね上がり、同時に80コンボ以上で高段階のダンス上昇効果を自分に付与するというPスキルにより、コンボを多く繋いだ時の獲得スコアが非常に高いものとなる。冒頭でのPスキルの定義「ファンに見せるパフォーマンスを高めるための努力によるバフなど」を参照すれば、このカードのスキルがまさしく佐伯遙子のダンスというパフォーマンスそのものの能力に着目した属性のスコアラーの性能に相応しいことがわかる。遙子はこれまで、鳴かず飛ばずでお世辞にも上手く行っているとは言い難い道のりを、それでも諦めずに一歩一歩着実に歩んで今ここに立っている人だ。そんな過去の全てがあったからこそ今の佐伯遙子があるし、間違いなく現在の遙子における魅力にとって欠かせない要素であるとも言えるだろう。したがってこのカードの「コンボが繋がった状態でライブ終盤でのSPスキル発動において最もスコアが伸びる」という性質は地道に進み続けてきて今こんなに輝いている佐伯遙子というアイドルを端的に表していると見ることができるのだ。
 このカードが実装された時の対応イベントでは、遙子が過去に麻奈と交わしそのまま果たせずじまいだった約束を、星見プロに現在所属するアイドルたち、そして長瀬麻奈とともに叶えることで辿り着けた未来の話が描かれた。つまり、このカードは「あの日々から見て未来の、麻奈との約束を果たした佐伯遙子」という部分に重きを置かれていると考えられる。彼女の積年の努力が花開き輝いている姿を象徴するかのようなスキルが搭載されたスコアラーが麻奈との約束を果たせた遙子のカードとして実装されたことは、遙子が今サニーピースの一員として見ている景色が麻奈との日々や交わした約束から地続きであることを感じさせる。

 次に、ライブバトルでのみ発動するAスキルの効果について見て行こう。この効果は、このカードの全てのスキルを余すことなく生かせる場がライブバトルであることを示している。それは「巡る季節と色褪せない日々」も同様であり、低下効果反転はそもそもデバフを受けないと発動せず、デバフをもたらすライブエールのあるような特殊ステージとかでない限りはライブバトルでの使用を想定されていると見て良いだろう。すなわち、佐伯遙子の歌やダンスの能力に焦点を当てたカードは、いずれもライブバトルに高い適性を持っていることがわかる。
 ここで、ホーム画面での長瀬麻奈の台詞の一つを思い出してほしい。長瀬麻奈はホームにおいて牧野以外の人間に言及した台詞をいくつか発するが、その中には遙子に対するものも存在している。それが次のようなものだ。

遙子ちゃん、歌もダンスもすっごい上手なのに、ライブバトルになるとあんまり勝てないの何でだろう……?

 そう、ソロで出場したNEXT VENUSグランプリで序盤に敗退してしまうことからもわかるように、佐伯遙子のバトルにおける勝率は決して良いものとは言えない。麻奈もそれは知っており、しかし同時に遙子の高い歌とダンスの技術も知っているからこそこういった疑問を抱いているのである。ソロではなくユニットで出場した時には優勝まで勝ち取っているため、一人ではなくサニピの皆と一緒である今もっともっと輝くことができている、と考えられる。ゆえに、遙子の積み重ねが実を結び始めている現在を強く反映したカードが、バトル適性の高さという特徴を持つことはキャラクター性にいたく合致していると言えるだろう。つまり、今回取り上げている二つのカードではいずれも長瀬麻奈との文脈が強調されてはいるものの、そのバトル適性の高さからは「サニーピースの佐伯遙子」という一面も同時に強く感じられるのだ。逆に言えば、サニーピースに所属している現在においても遙子の中にある大切なものとして麻奈への想いは変わらず色褪せないままであるとも考えられる。これは前章で論じた「佐伯遙子を支える大切なもの」に麻奈が含まれていることにも通じている。バトルで100%の実力を発揮するカードの両方が麻奈と深く関わった文脈を有しているのは、サニーピースとしてステージに立ち時にライブバトルにも臨む現在の彼女の心には、麻奈と過ごした時間も変わらずに存在していることを示していると考えられるのだ。
したがって、歌やダンスといったパフォーマンスの実力にフォーカスし、かつライブバトルにも十分な適性を有している、そんなスコアラーとして現在彼女が輝けるのは、サニーピースの皆と出会ったという変化と麻奈との思い出や彼女への想いという永遠の両方があったからと言えるだろう。

 まとめると、このカードのスキルは、思うように行かなくても腐らず努力することをやめなかった彼女の今まで積み重ねてきた軌跡が芽吹いた現在に着目しているように見え、そんな現在がかつて麻奈と交わした約束から直接伸びた先の未来に位置していることを強く感じるものとなっている。また、「巡る季節と色褪せない日々」「共に繋いだ約束の音」はともにバトル適性が非常に高いスキル構成であるが、サニーピースに所属するより前の彼女はライブバトルにおいてあまり勝てていなかったことを踏まえると、これらのカードでは「サニーピースの佐伯遙子」としての一面も強く描かれていると考えられる。それゆえに、サニーピースの佐伯遙子においても麻奈との日々や彼女への想いが色褪せず変わらぬまま支えとなっているとの結論が導けるのだ。

まとめ

 以上から、佐伯遙子のボーカルとダンスのスコアラーではいずれもサニーピースの佐伯遙子が抱き続ける麻奈との思い出や彼女への想いを重点的に描き出しているとの解釈が成立する。遙子が自身の持つプロポーションだけでなく、LizNoirやIIIXと同じような歌とダンスを重視したパフォーマンスでスコアラーとしての輝きを見せる時、それはサニーピースに入ったからこそのものであると同時に、胸の内の麻奈との記憶が少しも変わらずきらめいて一歩ずつ進み続ける遙子の背を押してくれているからなのである。

終わりに

 長々とまとまりのない文章をここまで読んでくださった皆様に、心からの感謝を述べる。最終的な結論もまとめたことだし、そろそろこの記事も締めくくりの段階へ入っている。では、昨年の記事と同じく、この記事を執筆したもともとの動機にまで戻って筆を置こうと思う。

 佐伯遙子さん、お誕生日本当におめでとうございます。今年もお祝いすることができてとても幸せに思っています。誕生日カードストーリーではユニット外の人とも楽しく仲良く過ごしている様子が見られて良かった。あなたとあなたの仲間たちを待ち受ける未来が、笑顔と希望に溢れていることを心より願っております。

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