春の日

（多分2022年3月くらいに書いて下書きのまま）

毎週土曜日、その時のトピックやテーマに沿ってクラブハウスというアプリで
バンタンについて3人でおしゃべりしている。

昨年の春、テーマに行き詰まって、春だから「spring day」について語り合おうということになった。

防弾少年団（バンタン）は音楽やビジュアルより先にユニセフの『LOVE MYSELF (私自身をまず愛そう) 』『#ENDviolence（暴力をなくそう）』キャンペーン、国連での『SPEAK YOURSELF』スピーチ、セウォル号遺族への寄付の話が耳に届き好印象を持っていた。

Spring Dayという歌は、誰の心も切なく懐かしくさせて、透明な光の粒子がキラキラして見えるような、でも力強い意志を感じる不思議な魅力がある曲だ。
バックグラウンドにずっとリフレインされる音が何とも印象に残り、一度聴いたら耳から離れない。

このMVはファンの間ではセウォル号の事故で亡くなった若者（被害者）遺族、友達、死、その絶望や希望、生についての曲なのではと言われていて、後に制作陣も関連について話している。

「Omelas」と書かれたネオンサイン
長い電車の車両
たくさんの積まれて山のように重なった服
木にぶら下がったスニーカー

クリスチャン・ボルタンスキー的 死を連想させる世界

MVを観た誰もが印象に残る
シンボリックなシーン

前の車両に進む前に振り返るRM

車両を越えてリーダーRMが前に進むシーンはポン・ジュノ監督の「スノーピアサー」のオマージュと言われている。

「スノーピアサー」では階級社会の象徴として長い列車が出てくる。
外に出ると生きられない走り続ける
「雪国列車」
車両ごとに階級が分かれていて別の車両には
移動出来ない。
階級が高い人々は前方車両で優雅に過ごし
階級が低い人々は後方車両に押し込め
られている。

ドラマ版 スノーピアサー

セウォル号の船長の言うことを聞いて何も抵抗出来ず（船長は真っ先に逃げたというのに）船内に留まり続けた高校生達。
上の人が言うことに従順に従って、船内に留まり続けた結果戻って来なかった高校生達の無念さ、遺族や友達の悔しさと悲しみ。

リーダーのRMが車両をどんどん前に歩いてくるシーンは従順な弱者でいることを拒否する意志を感じる。
トップダウンの横暴で犠牲になるのはいつも従順な弱者だから。

ネオンサイン「Omelas」はアーシュラ•K•ルグィンの「風の十二方位」におさめられている短編「オメラスから歩み去る人々」のオメラスだと言われている。
（他に聞いたことがない言葉なのでこれはそうだと思います）

オメラスという街の人々はとても幸せに平和に暮らしているが
それは1人の少年の犠牲の上に成り立っているものだった。
平和な街の地下牢に繋ぎ人権を剥奪して家畜のような扱いで虐待している。

自分達の平和を守る為に見てみぬふりをする
オメラスの人々。

この話を読んだ時
自分の小学生くらいの事を思い出した。


「お母さん、ある少年を殺さなかったら世界が破滅するってことになったら
その少年はどうなると思う？」と聞いたこと、その時の夕方の光の加減や湯気の感じまで思い出した。

私は皆んなで少年を守るという答えを期待しつつ、それでも全員死んでしまうのならば、、とも考えてもいて大人の意見が聞きたかった。

母はしばらく考えて「守ろうとする人もいると思うけど、それでも誰かに殺されてしまうだろうね」と冷静に答えた。

オメラスの地下牢の少年はまさに私が仮想したこの少年だった。

「皆んなで少年を守る」という答えを期待していた小学生の私人格がオメラスというネオンサインのBarのような場所から歩み去る。

誰かの犠牲の上に暮らす世界から出て行く少年団
階級社会の車両から飛び降りる少年団

一枚の花びらが車内に舞い落ちて外の世界が春ということに気付く

あの日の小学生の私
に教えてあげたい

そんな世界に背を向けて歩み去る人達もいるよ

このMVは私がバンタンを愛する理由のかなり大きなひとつ