見出し画像

第四回:偏愛映画パンフ

堀口麻由美『カルチャー徒然日記』
Text & Photo:Mayumi Horiguchi

なぜ私は古本屋のエサ箱から古い映画パンフをサルベージせざるを得ないのか?

※『サマータイム・キラー』(原題:SUMMERTIME KILLER)1972
監督:アントニオ・イサシ=イサスメンディ 出演:クリストファー・ミッチャム オリヴィア・ハッセー


古本屋や古本市に行くのは、昔からの趣味っちゃ趣味だ。そのせいなのか、それとも、掃除下手で物を捨てられない性格のせいか、あるいはそのすべてのせいか、あまりにも多くの古本や古雑誌が家にありすぎるので、この間の引っ越しは地獄と化した。そして、結構な数を処分したはずなのだが、どうしてもまた、古本を買ってしまう......ついでに新刊本も。まさに地獄のループとしか言いようがないが、仕方ないんで成り行きにまかせることにしている。

そんな私だが、とある自分の「クセ」に気づいた。レコ屋や音楽好きは、特価品や見切り品などが集められたコーナーを仕切っているボックスを「エサ箱」と言うが、古本屋のエサ箱(と呼ばせていただく)には、たまに映画パンフレットが入っていることがある。そして私はといえば、その類のパンフをチェックし、挙句、そのうちの幾つかを買ってしまいがちなのである。上の世代が逝ってしまったり、同世代などがまめに断捨離しているせいなのだろう、最近は古い映画のパンフがエサ箱の中に入っているケースが増えてきたように思える。ときには、あまり出回ってない映画パンフなどを、たった100円ぽっちで発見できたりする。

しかし、安いから全買いするというワケでは、全然ない。「なんか、このパンフ、私が救わないといけないような気がする」という感じで、直感的に「義理感」が湧くものを救い出し、購入している。どんなものがそれに当たるのか? どうやら「70年代もの」「一部、80年代もの」「香港・カンフー関係もの」などが、それに当たるようだ。


この間、下北沢の古本屋でゲットしたのは、『燃えよデブゴン』『新Mr. BOO! アヒルの警備保障』『クレージーモンキー・笑拳』『少林寺』『フラッシュダンス』『ベスト・キッド2』であった。大半が、実家に置きっぱなしで既に持っているのは確実なのだが、デブゴンやこの時代のジャッキー、Mr. BOO! 関係のものは「私が救わないと焼却炉行きなのか?」と思ってしまい、どうしても居た堪れなくなってしまい、結局救ってしまうんである。

先日などは、意外なところでパンフをゲットする羽目に。新宿をぶらついていた時、喉が乾いたのでジュースでも買おうかと「MUJI新宿」に入ったところ、なぜか古本が並んでいた。どうやら「MUJI新宿」では、いつの間にか<古紙になるはずだったアートをテーマにした古本の取り扱い>を始めていたらしい。ディグし始めたところ、やはり映画パンフが紛れ込んでいた。あえてテーマをつけると「古いものと新しいものの二極化」といった感じの品揃えだったのだが、当然、古いものの中からピックアップ。結果、サルベージしたのは『バニシング・ポイント』『栄光のライダー』『おかしなおかしな大泥棒』『サマータイム・キラー』『ホット・ロック』『グリース』『ウォリアーズ』などである。

『おかしなおかしな大泥棒』(原題:The Thief Who Came to Dinner)1973
監督:バッド・ヨーキン 
出演:ライアン・オニール ジャクリーン・ビセット ウォーレン・オーツ

なぜ、映画パンフを古書の山中から助け出してしまうのか? おそらく、昭和時代の思い出とつながっているからなのだろう。1970年代と80年代、まだ幼かったあの頃は「テレビの映画番組」が盛んであった。「●曜ロードショー」「ゴールデン洋画劇場」といった王道に加え、夕方、学校から帰ってきて12チャン(※テレビ東京)をつけると、なぜかよく「ブラックスプロイテーション」ものが放送されており、それを観たりしていたものだが、あの頃はいろんな映画番組がTVで放送されていた。今ではすっかり配信に慣れきってしまい、いわゆるTV番組などまったく観なくなってしまったが、特にまだレンタル・ビデオすらない時代には、ああいった番組の存在は貴重だったし、そこから知る外国のカルチャー全般に強く惹かれたものである。

左:『ベスト・キッド2』(原題:THE MOMENT OF TRUTH PART II / THE KARATE KID PART II)1986 監督:ジョン・G・アヴィルドセン 出演:ラルフ・マッチオ ノリユキ・パッド・モリタ 右:『フラッシュダンス』(原題:Flashdance)1983 監督:エイドリアン・ライン 出演:ジェニファー・ビールス マイケル・ヌーリー

というわけで、その頃の映画は、いまの私を形作る「素」となっているのであろう。なので、そんな時代に観たり惹かれた映画のパンフをゲットすることは、もはや私のDNAに刻まれきってしまっており、一生やめられない行為なのかもしれない(大袈裟?)。

そう、そして今日もまた、古パンフが、古本が、家に増えていく......ああ、また部屋が片付かないっ!!!


堀口麻由美
ほりぐち・まゆみ。
Jill of all Trades 〈Producer / Editor / Writer / PR / Translator etc. 〉『IN THE CITY』編集長。
雑誌『米国音楽』共同創刊&発行人。The Drops初代Vo.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?