解析入門I - 実数の連続性4


この記事は解析入門I (杉浦光夫 著)の読書ノートです。


ここでは数列の部分列に対する収束性を導く。まずは部分列とは何かを定義しよう。部分列は数列から無限個の項を取り出すことにより作られる。

自然数を値にとる適当な数列$${(n(k))_{k \in \mathbb{N}}}$$が狭義単調増加である、つまりすべての自然数$${k}$$に対して$${n(k) \lt n(k + 1)}$$であるとする。このとき、数列$${(a_n)_{n \in \mathbb{N}}}$$に対してさらに数列$${(a_{n(k)})_{k \in \mathbb{N}}}$$を定義できる。これを数列$${(a_n)_{n \in \mathbb{N}}}$$の部分列という。

数列の部分列

さて、数列$${(a_n)}$$部分列$${(a_{n(k)})}$$の定義から直ちに次が成り立つ。

  1. 全ての$${k \in \mathbb{N}}$$に対し$${k \le n(k)}$$

  2. $${\lim_{n \to \infty}a_n = a}$$ならばすべての部分列$${(a_{n(k)})}$$に対し$${\lim_{k \to \infty}a_{n(k)} = a}$$が成立

  3. 数列のある部分列が収束しないならば、その数列は収束しない

1.は自明、3.は2.の対偶なので、2.だけ示そう。仮定よりすべての$${\varepsilon \gt 0}$$に対し、ある自然数$${n_0}$$が存在して$${k \ge n_0 \Rightarrow |a_k - a| \lt \varepsilon}$$が成り立つ。1.より$${n(k) \ge k}$$なのだから、$${n(k) \ge n_0 \Rightarrow |a_{n(k)} - a| \lt \varepsilon}$$は$${k \ge n_0 \Rightarrow |a_k - a| \lt \varepsilon}$$の特殊例として当然成り立つ。

一方で収束しない数列の部分列は収束する可能性があることに注意しよう。

さて、部分列の概念が定義されると次のボルツァーノ・ワイヤストラスの定理が区間縮小法より導かれる。

有界な実数列は常に収束する部分列をもつ

ボルツァーノ・ワイヤストラスの定理

これを示そう。まず、適当な有界実数列を$${(a_n)_{n\in\mathbb{N}}}$$と置くことにする。有界なので、適切な閉区間$${[b,c]}$$を選択すると、$${\{a_n\}}$$の任意の要素はこれに必ず属する。つまり$${(a_n)}$$に対してある実数$${b,c}$$が存在し、すべての$${n}$$において

$$
a_n \in [b,c]
$$

が成り立つ。

このことを利用して、有界閉区間列$${\{I_n\}}$$を定義しよう。まず

$$
I_0 \equiv [b_0, c_0]\ (b_0 \equiv b,\ c_0 \equiv c)
$$

とする。ある自然数$${k}$$までに対して、$${I_k \equiv [b_k, c_k]}$$と定義できていたとしよう。$${I_{k+1}}$$を定義するために、まずは$${I_k}$$をきれいに半分に分ける。つまり

$$
I_{k-} \equiv [b_k, d_k],\ I_{k+} \equiv [d_k, c_k]\ \left(d_k \equiv \frac{c_k - b_k}{2}\right)
$$

とする(こうすれば$${I_k = I_{k-}\cup I_{k+}}$$だ)。これをもとに次のように$${I_{k+1}}$$を定める

$$
I_{k+1} \equiv I_{ks}\ (s \in \{ -, +\},\ \#\{n : a_n \in I_s\} = \infty)
$$

ここで、$${\#\{n : a_n \in I_s\} = \infty}$$は集合$${\{n : a_n \in I_s\} \subset \mathbb{N}}$$が無限集合であることを示し、$${s}$$が$${-, +}$$のどちらも取りうるときは$${+}$$を選択すると取り決める。

この$${\{I_n\}_{n\in \mathbb{N}}}$$の定義から

$$
c_n - b_n = 2^{-1}(c_{n-1} - b_{n-1}) = \cdots = 2^{-n}(c_0 - b_0)
$$

がすべての自然数$${n}$$に対していえる。アルキメデスの原理により

$$
\lim_{n \to \infty} (c_n - b_n) = \lim_{n \to \infty} 2^{-n}\cdot (c_0 - b_0) = 0
$$

であるので、この事実と区間縮小法により、ただ一つの実数$${a}$$が存在して

$$
\lim_{n\to\infty} b_n = \lim_{n\to\infty} c_n = a
$$

となる。

一方で$${\{I_n\}_{n\in \mathbb{N}}}$$の定義から、適当な自然数$${n}$$を取ってきたときに、$${N_n \equiv \{m : a_m \in I_n\}}$$は無限集合になる。このとき$${n(0) \equiv \min N_0}$$とおく。次に

$$
n(k) \equiv \min\{m: m >n(k-1), m \in N_{k} \}
$$

と定義すれば$${n(0) \lt n(1) \lt \cdots \lt n(k) \lt \cdots}$$となり、かつ$${n(k) \in N_k}$$であることから$${a_{n(k)} \in I_k}$$となる。これにより実数列$${(a_{n})}$$の部分列$${(a_{n(k)})}$$が構成され、すべての$${k}$$に対し

$$
b_k \le a_{n(k)} \le c_k
$$

が成り立つことがわかる。$${\lim_{n\to\infty} b_n = \lim_{n\to\infty} c_n = a}$$であることとはさみうちの原理により

$$
\lim_{k\to \infty}a_{n(k)} = a
$$

が示される。したがって、有界実数列$${(a_n)}$$はこのような構成により必ず収束する部分列を持っていることが示される。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?