解析入門I - 実数の連続性6


この記事は解析入門I (杉浦光夫 著)の読書ノートです。


この記事では実際に数列$${(a_n)}$$がコーシー列であることが、収束することの必要十分条件であることを見ていく。

まずは収束する数列が必ずコーシー列になることを示そう。$${(a_n)}$$が収束することから、

$$
\forall \varepsilon \gt 0,\ \exists n_0 \in \mathbb{N}, n \ge n_0 \Rightarrow |a_n - a| \lt \frac{\varepsilon}{2}
$$

なる実数$${a}$$が存在する。そこで、$${m, n \ge n_0}$$ならば$${|a_m - a| \lt \frac{\varepsilon}{2}}$$と$${|a-a_n| \lt \frac{\varepsilon}{2}}$$をそれぞれ得るから、三角不等式を適用すると

$$
|a_m - a_n| \le |a_m - a| + |a - a_n| \le 2\cdot\frac{\varepsilon}{2} = \varepsilon
$$

となるため、数列$${(a_n)}$$はコーシー列である。

次にコーシー列が必ず収束することを示そう。先の記事で述べたがコーシー列は有界である。このこととボルツァーノ・ワイヤストラスの定理を当てはめるとコーシー列には必ず収束する部分列が存在することになる。この事実とコーシー列の性質である、部分列が収束すれば、大元の数列も収束することから、コーシー列は収束することがわかる。

以上から、コーシー列であることが、実数列が収束するための必要十分条件であると言える。

ここまで実数の連続性の定義から、種々の関連する定理を導いてきたが、これらはそれぞれ同値、すなわちそれぞれが必要十分条件になっていることが知られている。つまり、これまで議論してきた性質のどれか一つを採用すれば、残りのすべての性質が導かれることから、これらの性質はすべて実数の連続性を表現しているといえる。
次回はコーシー列が必ず収束することを用いて、実数の連続性を導き、ここで行ったことが真実であることを確かめよう。

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