解析入門I - 実数列の極限7
この記事は解析入門I (杉浦光夫 著)の読書ノートです。
この記事では極限の性質の内、大小関係にかかわるものを議論する。
この定理が成り立つならば、ある$${n_0}$$以上の$${n}$$に対して大小関係がすべて成り立てば、極限値も大小関係を保存することに注意する。
もし、これが成り立たないとしよう。つまり$${a \gt b}$$を仮定する。$${a -b = 2\varepsilon}$$と置くとき、$${\varepsilon \gt 0}$$であることは明らか。したがって自然数$${n_0}$$が存在して、$${n \ge n_0}$$なる$${n}$$に対し$${|a - a_n| \lt \varepsilon,\ |b - b_n| \lt \varepsilon}$$が成り立つ。このことと絶対値の定義より、$${a - a_n, a_n - a \lt \varepsilon,\ b - b_n, b_n - b \lt \varepsilon}$$が成立するから
$$
b_n \lt b + \varepsilon = a - \varepsilon \lt a_n
$$
となる。これより$${b_n \lt a_n}$$を得るが、これは$${a_n \le b_n}$$に矛盾する。
これは先の定理の$${b_n = c}$$、$${a_n = d}$$となった場合の特例なので自明。
仮定により、任意の$${\varepsilon \gt 0}$$に対して自然数$${n_0}$$が存在し、$${n \ge n_0}$$なる任意の自然数$${n}$$に対して$${|a - a_n| \lt \varepsilon, \ |a - b_n| \lt \varepsilon}$$が成り立つ。絶対値の定義より
$$
a - a_n \lt \varepsilon, \ a_n - a \lt \varepsilon,\quad a - b_n \lt \varepsilon, \ b_n - a \lt \varepsilon
$$
となる。これより
$$
a-\varepsilon \lt a_n \le c_n \le b_n \lt a + \varepsilon
$$
が成立するから、$${|a - c_n| \lt \varepsilon}$$が従う。よって$${(c_n)}$$は$${a}$$に収束する。
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