解析入門I - 実数の連続性2


この記事は解析入門I (杉浦光夫 著)の読書ノートです。


前回導いた有界な単調列の収束性から、今回は重要な性質であるアルキメデスの原理について説明する。

任意の二つの実数 $${a \gt 0, b\gt 0}$$に対して、$${na \gt b}$$となる自然数$${n}$$が存在する。

アルキメデスの原理

これを証明する。まず、この定理を正しく理解しよう。

アルキメデスの原理は$${b}$$が数列$${(na)}$$の上界ではないということを言っている。背理法を使おう。つまり$${b}$$がすべての自然数$${na}$$に対して$${b \ge na}$$となると仮定する。ところで数列$${(na)}$$は単調増加列であり、背理法の仮定から上に有界である。したがって前回示した定理から、数列$${(na)}$$は$${s = \sup\{na: n \in \mathbb{N}\}}$$に収束する。ここで$${s}$$は上限だからすべての自然数$${n}$$に対し$${na \le s}$$を満たす。

一方、$${a \gt 0}$$だから、$${s-a \lt s}$$となり、$${s-a}$$はもはや$${\{na : n\in \mathbb{N}\}}$$の上界ではない。このことからある$${n}$$が存在して$${na \gt s-a}$$となるはずだ。この式を整理すると

$$
(n+1)a \gt s
$$

となるが、これは$${s}$$が$${\{na : n\in \mathbb{N}\}}$$の上限であることと矛盾する。

アルキメデスの原理から次が導かれる。

1. $${a\gt 0}$$のとき、$${\lim_{n \to \infty} na = +\infty}$$
2. $${\lim_{n \to \infty} n = +\infty}$$
3. $${\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} = 0}$$

1は数列$${(na)}$$が単調増加列であり、アルキメデスの原理より上に有界でないこと、$${+\infty}$$の定義から明らかである。2は1の$${a=1}$$における特殊例であるから自明だ。3についてはこちらの記事でアルキメデスの原理が成り立つ前提ですでに証明済みである。

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