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JORDAN CP3.XII レビュー

 今回は、以前この"note"にレビューを投稿した「JORDAN CP3.XI」の"後継作"である「JORDAN CP3.XII」のレビューを書いていきます。
 ちなみに、この靴は私にとって"マイサイズ"(24.5cm)から「0.5cmサイズアップ」(25.0cm)。
 「靴下2枚履き」に「足首サポーターを着用」した上で、インソールを「SUPERfeet Green」にして履いていますので、ご了承を。

※2019年5月、「Gallery 2」新宿店さんで購入


・「サイズ感」&「フィット感」について

 まずは「サイズ感」と「フィット感」について。
 昨年夏に購入した「CP3.X」をはじめ、これまでに「X.AE」「XI」を同サイズで履いてきた身からすると、正統に「CP3ラスト」と言える造りに感じました。
 「XI」のレビュー記事にも書きましたが、ナイキの「グローバルラスト」と比べると、縦に少し長く幅は同じくらい。
 個人的には一番履き慣れている「ラスト」なので、これだけでも安心感があります。

 ただしこの「XII」は、アッパー外側が伸縮性のあるニット系素材("Flyknit")で構成してあることに加え、「X」〜「XI」に搭載されていた靴紐と連動しながら甲を抑え込む「バンド」("Flight Web")がシュータン部分に無いので、今までの「CP3シリーズ」よりもフィット感に対する「間口」は広がっているように思います。

 この「間口の広がり」によって「フィット感」に悪影響が出ている訳ではありませんが、アッパーの半分が柔らかい素材の為か、前作までと比べるとやや靴の中で足が動きやすい感覚があります。
 靴紐による「フィット調整」にも幅があり、締め込めばしっかりと足は「ロック」されますが、そうした「アッパーの柔らかさ」が瞬間的には足の「ブレ」を生み出してしまう為、やはりしっかりとした"サイジング"が必要なモデルだと感じました。

・「ソール剛性」について

 個人的に今作の一番の「問題点」だと感じた部分が、「ソール周りの造り」。
 端的に言って、前作までに比べて明らかにソール全体の「剛性」が落ちています。
 特にミッドソールのクッションが薄くなっていて、他のナイキ系の靴ではまず感じる事の無い「エアの存在」を、このシューズからははっきりと感じることが出来てしまいます。


 ナイキのシューズの多くはこうした「エア」を"売り"にしてその"存在"をアピールはしていますが、少なくとも今まで私が履いてきたナイキ&ジョーダンブランドの"バッシュ"においては、シューズを履いていてもただ静止している状態ではまず、そうした「エア」の"存在"を感じ取る事は出来ませんでした。
 
 それは、そうした「エア」を囲うようにミッドソールに搭載されている「フォームクッション」が、しっかりとその"機能"を発揮出来るほどの"量"と"質"を持っているからで、そのような構造のバッシュにおいては、ダッシュの接地時やジャンプの着地時などにようやく、そうした「Air」の感触を僅かに感じ取れるものなのです。
 
 これは個人的な意見になりますが、シューズのいわゆる「クッション性能」の大半を決めているのは構造上、ミッドソールの多くを占める「フォームクッション」の方で、そこに内蔵されている「Air」はあくまでもその「補助」くらいの役割しかなのでは?と考えています。
(ただし、そうした"補助"が意外と侮れないくらいに"クッション性能"に影響を与えてたりしますが、その話はまた別の機会に…。)

 つまり、私の比較的軽めな体格(167cm、60kg)で、内蔵の「Zoom Air」をしっかりと「感じ取れる」くらいにしか"厚み"のない、このシューズの「フォームクッション」というのは、正直「バッシュのクッション」としては"不十分"だと思います。

 ちなみに、この「フォームクッション」そのものに関しては、ある程度沈み込むことで「衝撃吸収」に特化させた感触のもの。
 そのおかげで"薄めのクッション"であっても、私の体格では着地の衝撃などは十分に吸収してくれます。
 また、「衝撃吸収特性」のクッションは「復元」までのスピードが遅いので、いわゆる「反発性能」は良くない場合が多いですが、これもクッションの"薄さ"のおかげで、動きに対する"反応"もそこまで悪くはありません。
 とはいえ、それは私くらい"軽い"体格の人間だからであって、おそらく私より体格の良い人にとっては、「衝撃吸収性能」も「反発性能」も、満足のいくものでは無い可能性が高いです。


 また、この薄いクッションのおかげで"地面との距離"もかなり近いことになるのですが、ここでもその「エアの存在感」が、特にフォアで接地した時の「違和感」となる為、結果的には「接地感が良い」とは言い切れない印象となっています。


 さらに、靴の「捻れ」を防ぐ「シャンクプレート」も無い為、比較的簡単にソールが屈曲します。
 幸いアウトソールにある程度の「剛性」があるおかげなのか、動きの中で靴が捻れたりする事もなく、加えて屈曲したソールが「復元」するスピードもそこまで遅い感じではありませんが、やはり「前作」までの強力な「ソール剛性」を知っているだけに、今作の「ソール剛性」については正直、「物足りない」という感想となってしまいます。

・グリップ性能について

 アウトソールは、踵からフォア外周の波打つようなパターンに、フォア中心部に"ヘリンボーン"と呼ばれるパターンを刻んだ、至って"普通"なデザイン。
 また、この「グローバルラスト」のモデルに関しては、"耐摩耗素材"を使用したナイキで「XDRソール」と呼ばれるものではなかったはずですが、触った感じはやや"硬め"な感触で"粘り"のようなものも感じず、実際にコート上でもアウトソール表面が少し滑りやすい印象。
 しかし、ソール全体の剛性がやや弱いおかげか、シューズ全体でコートを「捉える」事は出来る為、足の動かし方次第ではある程度の「グリップ性能」を発揮してくれます。

 とはいえ、逆にダッシュやジャンプの時にフォア部を局所的に「押し込む」際には、この"表面の滑りやすさ"の方が際立ってしまう事が多く、そういった動きを多用する私個人としては、このシューズはアウトソールの「グリップ性能」に関しても、正直「物足りない」という印象が強いです。
(その代わり、アウトソールの"摩耗"は少ないみたいなので"長持ち"はしてくれそうですけど…。)


・総評

 これまで"CP3シリーズ"を愛用してきた私としては、今回の"XII"にもかなりの"期待"を抱いて購入したのですが、各項目で"評価"してきた通り、残念ながらそんな私の"期待"にはそぐわない一足でした。
 特に「ソール剛性」については、これまでの"CP3シリーズ"の大きな"特徴"でもあったはずなので、それが今作に"継承"されなかったのは個人的に一番"残念"なところでした。

 とはいえ、今作の定価は「¥11,800」。全体的には「バッシュ」としてそれなりの機能を持ち合わせていて、ことアッパーの"素材感"に関しては確実に「お値段以上」のクオリティなので、私個人の"CP3シリーズへの偏見"を除けば、実はなかなかに良い"コスパ"を誇るバッシュとも言えると思います。

 むしろ、この"機能"や"価格"なら「ジュニア向けバッシュ」としては適切。
 "大人"である私には合わなかったかもしれませんが、「ジュニア向け"CP"モデル」(あるいは「ジュニア向け"ジョーダンブランド"モデル」)として考えるのなら、意外と"アリ"な一足かもしれません。
(ただし、このモデルの「ジュニア向け」の"サイズ"は残念ながら用意されていません。笑)


P.S.

 レビュー本編ではほとんど触れませんでしたが、今作「CP3.XII」はその「機能」のみならず、新しくなった"シグネチャーロゴ"をはじめ、"デザイン"の面でもこれまでとは"一線を画す"モデルとなってしまいました。
 個人的にはこの"デザイン"も含めて"CP3シリーズ"はお気に入りだったので、正直今作での"大幅リニューアル"はかなりショック…。

 クリス・ポール本人は今シーズン、まだ発売予定も発表されていない「CP3.XIII」(と思われるモデル)を履いて活躍し、まだまだ"健在"である事を証明していますが、果たして今後、この"CP3シリーズ"はどこへ向かうのでしょうか…?

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