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HEINZ流、トレンドへの素早い反応と成功のカギ

先月、大谷翔平選手がマイアミ・マーリンズ戦で50号のホームランを放ち、史上初の1シーズンで50本塁打、50本盗塁の「50-50」を達成したことが話題になりました!
ここで、素早く反応したのが、クラフト ハインツ。

画像:LBB Onlineより

ハインツは57ソースとして知られており、大谷選手が57-57を達成した場合は、SHOHEINZという限定ボトルと一生分のケチャップを57名にプレゼントするというプレゼントキャンペーンを発表しました。
完全にトレンドに乗っかったキャンペーンですが、ハインツは昨年のスーパーボウルでもテイラー・スウィフトのファンが投稿し、バイラル現象を起こしたソースを24時間以内に商品化しています。
今回は、そんなハインツのトレンドや文化に素早く反応する秘訣や、ここ数年で話題になったキャンペーンをご紹介いたします!


2023年 HEINZ Ketchup and Seemingly Ranch事例

画像:New York Post より

商品名は「Ketchup and Seemingly Ranch」で、日本語に訳すと「ケチャップと多分ランチドレッシング」です。
これは、スーパーボウルでテイラー・スウィフトが食べていチキンの横にあったソースを見たファンが「テイラーがチキンと一緒にケチャップとランチドレッシングっぽいのをつけて食べている」と投稿したことがきっかけで、テイラーの好みのソースとして話題になりました。
早速トレンドに乗っかり、24時間以内にケチャップとランチドレッシングのミックスソースを商品化したハインツですが、面白いのがこの組み合わせのソースは2019年に既に商品化済みで、史上最低の売上だったこと・・・。

しかし、今回は何てたってテイラーのお気に入りのソース!ということで、再度商品化。
2019年の商品名はKetchupとRanchを組み合わせてKranchというソース名で酷評でしたが、今回はSNSで話題になった言葉を引用して、Ketchup & Seemingly Ranchで販売。
すぐさまビルボードなどにも広告を出し、限定商品はわずか数分で完売し、2週間以内にウォールマートで全国展開へと拡大しました。

トレンドや文化に素早く反応する秘訣とは?

画像:Business Wireより

このようなハインツの素早い反応には、世界中で一貫した共通プラットフォーム(コンセプト)「It has to be HEINZ」 を持つことが重要だとハインツのチーフブランドオフィサーのダイアナ・フロストは話しています。また、この「It has to be HEINZ」という社内の共通認識が、プラットフォーム内でチームに自由を与え、トレンドや文化に即応するキャンペーンを展開する力となったとしています。

数年前までは無名のケチャップブランドにシェアを奪われ、存在感が薄れていたハインツ。
以前は、感情に訴える広告よりも守りのプロモーションであったとフロスト氏は指摘しています。そこから、社内でのクリエイティブエージェンシーを設立し、業界の専門家による定期的なクリエイティブの評価を行いクリエイティビティを促進。消費者の課題や声に耳を傾けることにシフトし、「It has to be HEINZ」 というプラットフォームが生まれ、今年のカンヌライオンズでのCreative Effectivenessではグランプリを受賞しました。

It has to be HEINZ = 消費者の声に基づく取り組み

It has to be HEINZ(ハインツでなくっちゃ)と思われるようなブランドにする為に、ハインツは消費者の声に耳を傾け商品開発やサービスを提供しました。
過去の事例になりますが、なるほどそう来たか!と思ったキャンペーン事例をいくつかご紹介したいと思います。

2022年 Hidden Spots 事例

ゲーム中に手軽で食べやすいケチャップと相性の良いハンバーガーに着目し、ゲーマーにアプローチした事例。
現代のゲームは休憩を取ることが難しく、プレイヤーは敵に襲われることなく、食事を確保する必要があります。そこで、ハインツはゲーム内で安全な食事休憩を取れる場所を示す「Hidden Spots」という名の地図を作り、その地図をハンバーガーの包み紙として使用しました。
ゲーミングでの世界のトップインフルエンサー達と手を組み、話題となり、初めはCall of Dutyのゲームで使用されましたが、その後はブランドの手から離れ、ゲーマー達の間でフォートナイトやその他の人気のゲームでもマップが作られるようになりました。

また、このようにケチャップと相性の良いフードに着目したケースとして、Heinz Hot Dog Pact (ホットドック協定)も2021年に行っています。
こちらは、一般的にアメリカで販売されているホットドッグのパンとソーセージの数が同数でない為、この問題を解決するため、他社のパンメーカーと連携して数を調整し、10本セットの販売を実現しました。

2021年 Heinz Hot Dog Pact事例

最後にご紹介したいのが、昨年Absolut Vodkaとコラボレーションしイギリスで限定販売したパスタトマトソースのHEINZ ABSOLUTです。

2023年 HEINZ ABSOLUT事例

画像:Daily Mailより

ウォッカを使用したトマトソースのレシピは、「ペンネ・アラ・ウォッカ」として昔から知られていましたが、スーパーモデルのジジ・ハディッドがTikTokで紹介した事でバイラルレシピとなりました。
まともやトレンドに乗っかりたい!と考えたハインツは、ウォッカブランドのAbsolutとコラボレーションを実現。
ケーススタディ動画では、コラボレーションでよくある、両社がデザインで譲れない攻防戦が描かれており、その様子がとても興味深かったです。
そして、こうして完成した広告がこちら↓

画像:Adweekより

以上、ここ数年のハインツが展開した注目のキャンペーンをご紹介しました。ハインツは昨年、売上成長を報告しており、北米の小売部門では+6%、レストランやフードサービスなど家庭外での売上は+22%、インターナショナル小売では+10%、そしてグローバル全体では+12%の成長を遂げました。また、長年ペプシでCMOを務めていたトッド・カプラン氏が今年ハインツのCMOに就任したことから、今後のハインツのさらなる動向にも期待が高まっています。
最後までお読みいただきありがとうございました!

執筆:高嶋 くらら