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各カテゴリーの野球アカデミー視察

私は2月から3月にかけてドミニカ共和国(以下、ドミニカ)へ行ってきました。
まず、私が何を目的にドミニカを訪問したかと言いますと「野球を通して相互国間の友好関係を築く」という目的の元、外務省の広報文化外交の一環である「中南米対日理解促進プロジェクト」というプロジェクトの一員として訪問しました。数回の記事の投稿で私の経験を紹介させて頂きたいと思います。

この記事では、各カテゴリーの野球アカデミーを視察して学んだことについてまとめています。

1. ミランダ野球リーグ(小中学生)での野球指導

ここは7歳から14歳の子供達を対象としたアカデミーであり、「野球を楽しむこと」を目的としています。中間層の家庭の子供達がここで野球を楽しんでおり、「野球で人生を激変させたい」という雰囲気はありませんでしたね。

練習場所はオリンピックセンター内のグラウンドで、約100名程の子供が所属していますが、かなり練習環境は混沌としておりました。いつ硬球が子供に当たってもおかしくない状況で私は常にヒヤヒヤしておりました。また、幅広い年齢層の子供が所属している為、レベル差はかなりあると感じました。子供達の道具を見てみると、日本社製のグラブを使用する子供達が多かったことに驚かされました。詳細は分かりませんでしたが、どこかを経由してドミニカまで流れてくるそうです(車と一緒?)。

指導に関しては、まず場を統制するマネジメント能力が重要であると感じました。やはり少年野球年代ということで、野球を楽しむことを最重要ポイントとしつつも、怪我をしないような場づくりをしっかり整えなければならないですね。グラウンドには大きな石が多く転がり、イレギュラーは当たり前といった状況でしたが、これは裏を返せば、イレギュラーの対応になる??という一長一短?な環境だったように思います。

最後に、野球少年が楽しそうにプレーするその表情は全世界共通だと思い、もっと野球が世界で広まってほしいなと感じました。


2. ライ野球アカデミー(中高生)での練習視察

ライ野球アカデミーは14歳から18歳の青年を対象としたアカデミーであり、彼らは本格的にMLBとの契約を目指しています。我々が訪れた日はちょうどトライアウトが行われており、MLBの数球団が視察に来ていました。トライアウト受験者の中には、既に約3億円の値段がついている選手もいました。

14歳という若さで木のバットを巧みに操り、硬球を右中間の深いところまで運ぶ姿を見ると、仕上がりが早いなと感じ、何と言っても魅力的に感じました。

練習内容について、彼らは重いボールを重いバットで打つ練習をしていました。これは、ボールを遠くに飛ばす筋力をつけることが目的だそうです。このように、ここでの練習は非常にシンプルで「速く走る」「強い球を投げる」「遠くに打球を飛ばす」この3点が重要課題となっていました。というのも、MLBのトライアウトはこの3点しかほぼ見ていないからだそうです。細かいチームプレーや戦術などは契約後に球団から教わることが出来るからです。守備位置も常にショートで、ショートが出来る選手が最も高く評価されます。彼らは日本の選手がよくしているような基礎練習ではなく、捕ってから素早く握り変えることを意識していました。

最後に、日本ではほぼ見られないような光景を目にしました。練習場には、現在独立リーグ福島ホープス所属のミゲル・ヘルナンデス選手がいました。彼は100マイル近いストレートを投げますが、なんと大きく年の離れたアカデミーの選手達に対しても本気で投球していました。さらに、選手達は物怖じせずに全力で立ち向かっていたのです。彼らは相手が何歳だろうと、どこの選手だろうと関係なく立ち向かいます。おそらく日本で中学生と大学生が本気で勝負する姿などなかなか見られませんよね。安全管理や責任問題など、様々な要因があると思いますが、これはこれで面白かったです。

さあ、契約を無事勝ち取った選手はどうなるのか、実はそこからが重要なんです。


3. ドジャースアカデミーでの練習視察

ドジャースアカデミーは16歳7カ月以降に契約を済ませた選手対象のアカデミーであり、ドミニカ国内に30あるMLB球団直営アカデミーの内の1つです。この施設に所属している日本人トレーナーである前田さんから説明を受けました。契約金に関しては、各選手で異なり数10万円の選手もいれば数億円の選手もいます。そんな中、彼らは渡米を目指して日々練習に取り組んでいます。

ドジャースアカデミーは、ドジャースの練習・育成方針が100%であり、いかにもアメリカ式だと感じました。そんなアカデミーの大きな特徴の1つは、「自主練習禁止」です。これは正直驚きました。もし球団指定の練習以外をしているのが発覚すると罰則があるそうです。というのも、指定した練習以外で怪我をするというのは、選手に責任があるからです。これは日本人の私にとってあまり馴染みがありませんでしたが、契約した選手は球団が管理し、怪我を未然に防ぐという姿勢が見えました。

また、練習にはラプソードを用いた科学的な指導や器具を使った体幹トレーニング、ラグビーなど他競技の動きを取り入れた練習、念入りの怪我からの復帰プログラムなどが含まれており、充実した施設と共に充実した内容でした。練習後は、英語や人間力の教育を重点的に行なっており、アメリカに行ってから野球以外の部分で困らないような支援がされていました。

契約を勝ち取ると、しっかりとしたカリキュラムの元、十分な練習と教育が受けられることを知りました。しかし、野球にかけてきた少年がもし契約をとることが出来なかったらどうするのでしょうか?

4. ドリームビッグプロジェクトでの練習見学

ドミニカには、MLBでの契約を勝ち取ることが出来なかった選手に対する施設も存在します。それが「ドリームビッグプロジェクト」です。

我々はここで経営者のヨハン・ラミレス氏から説明を受け、練習にも参加させていただきました。ここでの目的は、MLBの契約をすぐ目指すのではなく、「アメリカの大学進学の為の奨学金オファーを受けること」です。奨学金を獲得してアメリカの大学へ進学し、そこでさらなる成長が見られ、MLBのスカウトの目にとまればメジャーへの道が開かれます。これはまさに下克上のドリームビッグと言えますよね。

ここでの主な内容はというと、野球の面ではコーチと共に何が足りなかったのかを話し合い、それを明確にした上で練習に取り組んでいるようです。また、教育面ではやはり英語力を徹底的に鍛えているようです。

ドミニカの野球選手は早熟が求められますが、もちろんピークが遅い選手もいます。その為、このような施設があるのは非常に貴重なことであると思いました。一方で、選手それぞれでモチベーションは異なり、本当に力がある選手は練習でかなり目立つ一方で、埋もれている選手もいました。是非モチベーションをキープしたまま大きな夢を叶えて欲しいと思います!


5. 広島東洋カープアカデミーでの練習視察

このアカデミーは日本のプロ野球を目指す選手を対象にした施設です。この施設は、NPB12球団で唯一ドミニカにアカデミーを持つ広島カープが運営しています。コーチ陣はかつてカープの選手として活躍された方などがおられました。

ドジャースアカデミーとは対照的で「日本式」な練習方法でした。球団指定の練習以外にも追加で練習するのは勿論のこと、ノックでミスをすれば罰則ランニングやダッシュなどもありました。内容に関しても、連続ノックや投内連携、走り込みなど、日本野球で頻繁に行われている練習メニューが多かったです。施設自体は非常に広く、ランニングコースには最適です。広すぎるが故に整備が追いつかない為、羊を放牧することで草刈りの手間を省く工夫がされていました。

宿泊施設などは決して綺麗で上質だとは言い難く、日本に行けばもっと良い生活が出来ると言い、これがハングリー精神を煽っているようです。また、日本に適する性格を育成することも重要であると考え、日本語や日本文化についても教えているようです。これらの厳しい環境に耐えなければならない為、途中で逃げ出す選手も中にはいるという話を聞きました。しかし、ドミニカ人の国民性を考えると、合わない選手がいても仕方ないのでは?と思いました。

主なOBはフランスア選手(現広島)やメルセデス選手(現讀賣)がいます。基本的には広島カープが保有権を持ちますが、メルセデス選手のように他球団に譲渡する例もあるようです。


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