ドラフトのくじ運と確率論

濱口完封

2021年6月11日ベイスターズは日ハムに4-0で勝ちました。先発濱口が完封勝利でした。138球投げたことでチームが一部のファンが酷使と言っていますが次の登板が中5日以上あるなら肘や肩は元に戻ることがほとんどです。また打線は12安打で4点と効率が悪いとの声もありますが、データをきちんと確率変数から確率分布を導いて采配すればよいので首脳陣も改めて確率論と統計学の数式の理屈だけでも勉強すればよいと思います。

くじ運の悪いベイスターズ

高校などで確率論を習うと思うのですが、元々は賭博や保険、投資の基礎として発展しました。ドラフトでくじ運の悪いベイスターズは消極的な指名をしがちですが、くじ運は確率論だから何回かに1回は当たるという論者います。でも実は違うんです。運については確率論が扱う分野となっています。運(うん)とは、その人の意思や努力ではどうしようもない巡り合わせを指すからです。現代数学の確率論は、アンドレイ・コルモゴロフの『確率論の基礎概念』に始まる公理的確率論です。この確率論では「確率」が直接的に何を意味しているのかという問題は取り扱わず、「確率」が満たすべき最低限の性質をいくつか規定し、その性質から導くことのできる定理を突き詰めていく学問なんです。この確率論の基礎には集合論・測度論・ルベーグ積分があり、確率論を学ぶためにはこれらの知識が要求されます。ドラフトのくじ運があるパターンに収束するという論者の考えは確率変数の収束という分布収束の考え方で工場や同条件でのコイン投げなど全く同条件で繰り返し同じことがなされる時に起こり得ることです。かつてのドラフトの指名順位を決めるというやり方であればある程度確率変数は収束しますが、現在のように毎年入札選手も違い、入札の球団数も違うという場合には運という根拠がないものに左右されてしまいます。当然競合を避けるだけで入札しなければ当りもしないのですが、入札抽選式のドラフトでは球団が持つくじ運というものに左右されることは揺るぎない事実です。

監督采配に於ける確率論

データ野球や型の野球ということを私はよく記事に書きますが、ラミレス監督はデータを基に確率をコンピューターで計算し、確率変数から確率分布を出し作戦を当てはめていきました。ラミレス監督は確率変数 {\displaystyle X:\Omega \to E}{\displaystyle X:\Omega \to E} の確率分布 (probability distribution) によって定まる、可測空間 {\displaystyle (E,{\mathcal {E}})}(E,{\mathcal {E}}) 上の確率測度 PX のこととしています。つまり、PX は確率変数 X による確率測度 P の像測度 (image measure)、押し出し測度(英語版) (push-forward measure) のことして采配の基準としていました。野球はデータではなく感情であるというファンも多いと思いますが、ある程度の計算から導き出していたためチームが持つポテンシャルを最大近く発揮できることが出てきました。

DeNAシステム本部データ統括部AI研究開発部

ベイスターズでは親会社のDeNAシステム本部データ統括部AI研究開発部からスタンフォード大学で学び、日銀金融研究所にも努めた大西氏をR&Dチームに引き入れ現場のコーチでは藤田バッテリーコーチ補佐にプロジェクトに加わってもらいデータを試合に活かしています。2020年に戸柱の盗塁阻止率向上に繋がったのは有名です。今のところドラフトのくじ運にデータを使っているという話はありませんが、確率論と統計学という視点からドラフト指名について研究しても面白いかもしれません。試合での戦略という意味では監督やコーチが確率論や統計学に基づいて采配すれば勝利の確率は高くなるとは思っています。


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