酷使の正体

月曜日は負けない

ベイスターズは月曜日は試合がないので負けません。さて高校生投手をドラフト1位でなんていう声もありますが145km/h以上のスピードを高校時代連発している投手はMLBでは必ず大きな故障をすると言われて敬遠されます。ベイスターズもそれに倣ってか2011年の北方以降高校生投手をドラフト1位で獲得していません。

関節炎

昔は野球選手はプールに入るなとか体を冷やすなと言われていましたが1980年代後半から降板した投手が肘をアイシングするようになります。実は肩や肘、膝といった関節は軟骨が緩く繋いでいるので人間は体を動かせるのですが、その周囲が関節を動かすことで炎症を起こし、炎症が収まらないうちにまた負荷を掛けると炎症が大きくなり関節に繋がる軟骨周辺を圧迫し、極めて弱い軟骨を傷つけたり、砕いたりしていくのです。酷使の正体というのは主にこういった関節へ負荷を掛けることでの炎症の放置ということになるのです。炎症を完全に収めるために先発投手なら登板間隔を空けたり、リリーフ投手なら球数を減らすなど酷使の基準になる数値があるわけです。ただブルペンでの投球数や投球以外での関節への負荷もあります。

野手には負荷がないのか?

プロ野球は3時間ぐらいの試合時間で実際にボールが動いてプレーしているのが30分ぐらいだそうです。そのほとんどは投手が投球しているわけですから野手の負荷は試合に於いては極めて低いスポーツといえます。オリンピック種目から外されていた理由の一つは「休んでいる人が多い競技」という理由だとされます。ただ野手も練習に於いて過度の守備練習や素振り等々で負荷が掛かります。特に膝を痛める原因となるのが折り返しでの短距離ダッシュだったり、不規則ノックといったものがあるでしょう。しかし投手に比べると負荷は少ないと言えます。

高校生は145km/h以上投げたら故障する

20歳以下特に18歳以下の高校生はまだ体がきちんとできていないため関節が極めてルーズで軟骨だけでなく骨も柔らかい状態です。MLBのスカウトは高校生投手が145km/h以上のスピードを出して投げると25歳ぐらいまでに大きな故障を必ずするのでスピードを出さないようにアマチュアの指導者に呼び掛けているそうです。日本では1970年代カーブやシュートという腕先を捻る変化球を投げる投手がプロ入り後肘の故障で活躍できない事態がありました。1970年代後半ぐらいから少年野球の指導者を中心に高校生ぐらいまではストレート中心の組み立てを推奨する動きがありました。当時の高校生では130km/h以上投げる投手は稀でストレートで関節に架かる負担は大きくありませんでした。145km/h以上投げていたと思われる江川投手はプロ入り後30代に入ると肩の故障で引退しました。つまり高校生で150km/h以上投げる投手を獲得すると故障確率が高いことを覚悟しなくてはいけません。変化球については今でもスライダーなど外旋運動することで肘や肩を痛めることは有名です。高校生でいえば130km/h台のストレートをコントロールよく投げ込む投手の方が長く活躍できる可能性が高いともいえます。

高校生ドラフト1位投手のリスク

ロッテの佐々木投手が腫れ物に触るようにちょっとずつ試合に登板させる育成をしています。160km/h以上出す高校生だったわけですが、たぶん1年目から試合に出したら2桁近く勝ったかもしれません。しかしすぐ壊れる可能性が高かった思います。ロッテは高校生投手が145km/h以上投げている場合に故障リスクが高いことを認知した上で育成していると思われます。松坂大輔も22歳の2002年に右肘の故障をし、2009年以降は故障の連続でほぼ活躍出来ていません。阪神藤浪投手も22歳以降体の違和感が続いています。大学や社会人に進んだ場合、体に負担の掛かるスピードを出し続けなくてもよく体の成長に合わせた投球ができる環境を与えてもらえる可能性が高いので体が出来た21歳以降のプロ入りで活躍できる確率が高いです。特に大学で層が厚い大学に入った場合、1年生のうちは精神的に辛いけれど下積みなどで野球をあまりやらない状況があります。そのため高校時代に負荷を掛けた関節炎などが治り、上級生で試合に出るようになった頃には体が出来上がりスケールアップした投球ができることが多いようです。下級生から試合に出ていたとしても主戦で投げていなければ、レベルの低い新人戦など段階に応じた試合対応で成長できるので体への負荷は低いです。こういった意味から145km/h以上投げる高校生投手をドラフト1位で指名することはチームにとってかなりリスクの高い選択肢となります。

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