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電動こけしバット


お断り

今回の記事の中には一部の方に不快な印象を与える記述がございますことを予めお断り申し上げます。あくまで1ファンの私見ですので科学的根拠や歴史的史実に裏付けられた記述でないことをお詫びいたします。

バットは物理の法則を無視しては機能しない

高校野球の低反発金属バットが話題になりましたが、バットの反発力よりももっと大事なのは「てこの原理」と「遠心力」をバットという道具を使うことで最大限に使わなければ飛んでいかないということです。バットは重心の位置がどこにあるかで、最大限のてこの原理を活かすためのグリップの位置が決まってきます。そのため極端に短く持ったりするとバットの性能が半減し、全く前に飛んでいかない、もしくはバットに当たってもポップフライ、ファールといった当たりになってしまいます。よく速球投手に対して「なんでバットを短く持たないんだ」と解説する人がいますが、バットの機能を考えれば、拳1つ分も短く持てば、速球に対して遠心力が働かず、結果として凡打で終わる可能性が高くなります。短く持つと言ってもバットを機能させるために指1~2本分ぐらいまでが、限界ではないでしょうか?とはいえ、これもバットの種類によって変わってきます。

こけしバット、タイカップバット

1970年代後半、大洋にいたミヤーンがタイカップ式のグリップが太いバットで首位打者を獲得しました。バットを短く持てば重心までの距離が短く、バットの操作性が上がります。しかし一般的なグリップが細く、ヘッドが太い先端に重心があるバット(トップバランス)では、前述の通り操作性に対してバットが機能しません。短打を確実に狙う選手にはグリップが太く、ヘッドが細いバット(カウンターバランス)としてタイカップ式のバットがMLBから持ち込まれたのです。大洋の山崎賢一選手がその究極として、こけしバットで1989年ベストナインを獲得しました。他にも大洋では銚子選手、高橋雅裕選手が同様のバットを使っていました。ただ、現在ではタイカップ式のグリップが太いバットを使う選手が減っています。

150km/h超の速球に対応するのが難しい

140km/h前後が剛速球と言われていた時代までは、グリップが太いバットを短く持って重心との距離が近くても振れることでヒットを打つことができました。しかし、このバットではヘッドスピードの限界があります。当然の如く、てこの原理が効かないのです。てこの原理とは、シーソーに体重が違う人が乗ったとして、支点から同距離に体重が重い人と軽い人が乗ったらバランスが取れません。体重が軽い人は、重い人より支点から離れた距離にいることで均衡が保たれます。このように重心を小さな力で大きく作用させるためには、なるべく芯からの距離が遠い方が有利なのです。しかし、バットというのは選手の使いやすいようにメーカーが作るので、選手は操作性とてこの原理を用いて、遠心力を最大限使うことのバランスを細かく要求してバットが出来上がります。投球が150km/hを超えるとヘッドスピードがないスイングでは、前に強く飛ばすことはできず、操作性を重視することでヒットがでなくなってしまうのです。まして、重力があり放物線を描き捕手のミットに向けて放られる投球を上から叩くことは、地球の物理学上、ヒットを打つことが限りなく0に近づきます。今はトップバランスをバットが主流で、手でバットコントロールするのではなく、バットの重心管理を体で行いながらバットコントロールする打撃が主流になっています。

周東選手のこけしバット

ソフトバンクの周東選手がこけしバットを使っていますが、昔の極端にバットを短く持つスタイルではなく、重心バランスから振り過ぎないようにするための工夫がされたバットになっています。周東選手の活躍を見て、「上から叩いて、手で操作して当てる打撃が今でも一番である」と考えるのは間違っていて、かつてのこけしバットと似て非なるものであることを考慮しなくてはいけません。

王貞治に騙されない

世界のホームラン王、王貞治さんの昔の練習で刀で紙の短冊を切るという動画を見たことがあるかもしれません。この動画を見るとホームラン王もダウンスイングでボールを捉えていると思うかもしれません。しかし、実際にはダウンで降りてくるもののボールを捉える時はアッパーブローで最速のヘッドスピードになっているのできれいな放物線のホームランが出るのです。腕の力で当てに行っては紙の短冊は切れないので、刀の先端を走らせて体を使って振る練習であることに騙されてはいけないのです。王選手は腕の力ではなく、強靭な足腰で類まれなヘッドスピードを生み出すバットの加速に、体全体で耐えてスイングできるからこそホームランを量産できました。バットという道具を使いこなす天才だったのです。宮本慎也さんが、王さんの打撃について語っている動画がとても参考になります。


ベイスターズの選手とバット

古葉監督の頃のベイスターズの選手は、タイカップ式バットを短く持って、投球に対して当てに行ってました。しかし、この頃でも既に良い結果は出ておらず、Aクラスに一度もなることはありませんでした。むしろ全くホームランが出なくなってしまい、打線の迫力を欠く結果となってしまいました。バットの機能を最大限生かすスイングでベイスターズの若手には結果を残して欲しいです。

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