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今永が国際試合で示した高めのボールの有効性

お断り

今回の記事の中には一部の方に不快な印象を与える記述がございますことを予めお断り申し上げます。あくまで1ファンの私見ですので科学的根拠や歴史的史実に裏付けられた記述でないことをお詫びいたします。

低めだけが配球じゃない

野球を知った風な人が「低めに制球できない投手はダメ」、「野球は低め」とかいいますが間違っています。低めの有用性、高めの有用性をきちんと知らなけれがわざと負ける野球へと繋がります。2022年11月9日行われた侍ジャパンとオーストラリア代表の国際試合でベイスターズ今永投手が高めの有用性を示しました。4回10奪三振1失点の今永の投球を見て、ベイスターズ元監督の牛島氏は「中でも効果を発揮したのが高めの「ハイボール」だ。外国人の打者は総じてアッパースイングが多い。高めへのスピン量の多い直球は下から出るバットの軌道に合わず、当たったとしてもファウルが精いっぱい。今永は全体的な制球はアバウトながら直球の切れは抜群だった。高め、勢いで押し込んだ投球は本大会へ大きな自信になったはずだ。」といいます。

ヤンキース時代の田中将大が示した高めのストレートの有効性

2016年の田中はストライクゾーンの中心よりも4.3cm低い位置にストレートを投げ込んでいましたた。しかしそこから年々ストレートを投げるコースは上昇。2019年はここまで8.5cmも高い位置にストレートを投げ込んでいました。2016年と比べると約12.8cmも高いコースに投じていました。低めに投げ込んでいた2016年はストレートの空振り率(空振り/ストレート投球)は5.3%でしたが、投球コースが高くなるごとに毎年値は上昇。これまでで最も高めに投げ込んだ2019年は、8.4%と空振り率を大きく上昇させました。ストレートの空振り率は、ゾーン下限付近では2.5%前後と高くないが、そこからコースが高くなるにつれ上昇します。ゾーン上限付近では17.5%を超えるほどに高くなっています。

空振りの科学

空振りは、まず①打者が投球に対してスイングし、②コンタクト、つまりバットに当てることに失敗した場合に発生します。②コンタクトの話をしましたが、①でスイングしなければそもそも②にはたどり着かない。①でスイングする確率が高いかどうかは空振りが発生するかどうかに大きな影響を与えます。①がどの程度起こっているかを表すスイング率を、投球高さ別に見ると、スイング率はストライクゾーン低めでは30%前後と低く、そこから投球が高くなるほどに上昇します。ゾーンの中心よりも若干高い位置では60%以上と最も高くなっています。ストレートに対してスイングする頻度は投球の高さによって大きく変わっているのです。高めは、②コンタクトしにくいだけでなく、①スイングされやすい性質があるため空振りが発生しやすいというわけです。山崎康晃が低めの2シームを見逃されて、ボール判定されて苦しむのも低めへの配球を重視するベイスターズバッテリーの配球ミスです。

空振りを奪いたいなら高めの配球を

低めのストレートはゾーン内でもスイングされにくいため見逃しストライクの割合が高いです。空振りが少ないかわりに見逃しでストライクを増やせるため、0・1ストライクでのストライクカウント増加率は高さによって差が出ていません。0・1ストライク時にストレートでカウントアップを狙う場合、低めと高めどちらに投げるのもどちらにも一定の妥当性があるといえます。2ストライクからの投球が見逃し・空振り問わず三振になった割合を表すPut Away%を見ると、ストライクゾーン下限付近で25%以上と最も値が高くなっています。2ストライク時には、ストライクゾーン内ギリギリに投げられるのであれば低めの方が三振を奪いやすいようです。2ストライクになると打者も空振り三振を恐れて、バットに当てることを重視することも多いようです。これにより空振りによってストライクを得ていた高めよりも、見逃しでストライクを奪う低めの三振が相対的に優位になっていのだと思われます。しかし投球がゾーンより少しでも低くなった場合、見逃しも空振りも期待できないため三振は激減します。高めはゾーン内こそ低めより三振を奪いにくいが、多少ゾーンから高めに外れてもスイングされやすく、空振りで三振を多く奪えます。低めのコントロール精度が高くない投手は高めのストレートの方が有効であることがわかります。


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