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野球好きに向けたF1沼への誘い④ 〜ドライバー紹介編その3 悩める深紅の"跳ね馬"、復活なるか?スクーデリア・フェラーリ〜

 お久しぶりです、そーすです。あっという間に8月も後半、F1はだだ今サマーブレイク真っ盛りです。個人的な都合で大幅に更新が遅れてしまい、ごめんなさい🙇‍♂️気付いたらシーズンも後半戦へ突入、すっかり乗り遅れてしまいました。

 さて気を取り直し、今回紹介するのは"F1界のドン"、スクーデリア・フェラーリです。そうです、男なら誰もが一度は憧れるあの高級車メーカーのフェラーリです。赤いボディに天高く翔ぶ"跳ね馬"のエンブレムはF1でもお馴染み、F1ドライバーがこぞってフェラーリドライバーの地位を欲しがるその圧倒的ブランドは正しく"シンボル"です。1950年のF1世界選手権開始時から参戦し続けるイタリアの名門チームであるフェラーリですが、ファンの間では「迷チーム」としても名高いチームでもあります。

 今回はそんなフェラーリF1チームと、今季所属する2人の「イケメンドライバー」をご紹介します。イケメンには目がない野球ファンのあなた、要必見ですよ!

ドライバー①:シャルル・ルクレール(スクーデリア・フェラーリ)

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 今シーズンからイタリアの名門のエースを務めるのが23歳のモナコ人、シャルル・ルクレールです。何と言っても彼の特徴は「顔」顔が良い。完璧な王子様フェイスにモナコ生まれ(注①)という出自で、余りに神々しい雰囲気を放つルクレール。あまりのイケメン度で野暮ったいレーシングスーツすら着こなしてしまいます。

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右手にカエルを乗せてもこのイケメンっぷり。漫画のような正統派イケメンです。

 勿論そのドライビングスキルも素晴らしく、2018年にザウバーF1チーム(現アルファロメオ)でデビューを果たすと、戦闘力の落ちるマシンを駆りながらもルーキーイヤーから上位入賞を続けました。その才能が認められて、なんとデビューから1年でフェラーリのレギュラードライバーに抜擢されたのです。1997年生まれのこの若者の勢いは止まらず、翌2019年には7回のポールポジション獲得に加えて第13戦・ベルギーGPでF1初優勝を果たしました。続く第14戦・イタリアGPで2勝目を挙げて、すっかりティフォシ(注②)たちのお気に入りとなったのです。昨年2020年シーズンはフェラーリのニューマシン・SF1000が大幅に戦闘力を失った為に苦戦を強いられましたが、それでも2度の表彰台を獲得するなどその腕前は益々輝くばかりです。

 そんなモナコの貴公子シャルル君ですが、端正な顔立ちからは想像も付かないほど勝利に貪欲な男です。自らのミスでスピンやクラッシュをしようものならFワードを連発しながら叫びます。他のドライバーとの事故となればその怒りも物凄い。「暗黒王子」とも称されるその負けん気の強さ故に、波に乗れないレースウィークには他車を巻き込んでのクラッシュも珍しいものではありません。とりわけ同い年で共に強豪チームのエースを張るマックス・フェルスタッペンとは何度もバトルや接触を繰り返しており、見てるこちらがヒヤヒヤするほどの鍔迫り合いを繰り広げます。

2019年アゼルバイジャンGPの予選Q2、バクー市街地コースのテクニカルセクションでクラッシュ。自らのミスに対しての悔しさか、
"I am stupid... I am stupid."(ああ...僕はなんておバカなことを...)
と虚しそうな声で話す一幕。(上記動画1:05〜)

 ただしラテンの血が騒ぐのかユーモアの心(?)も持ち合わせているようで、昨年のコロナ騒動によりシーズン序盤が悉くキャンセルになった時期に行われた、F1ゲームを使ったバーチャルレース大会(注③)では何故かバナナの被り物を着用して参戦。更にその様子を個人のTwitchで配信する一幕もありました。一流アスリートといえども20代の若者、遊び心を忘れてはいないようです。

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ただ、オンライン大会で自身の姿が映るわけではない時にこのコスプレをする辺り、割と残念系イケメンなのかもしれません。

 更に更に、実は彼の弟であるアーサー・ルクレールもレーシングドライバー。現在はF1へのステップアップを目指してFIA-F3というカテゴリーに参戦しています。2000年生まれ、20歳のアーサーも兄に負けず劣らずその才能は確かなもので、F3ルーキーながら既にレース勝利も挙げている期待の若手です。F3のレースもDAZNで視聴可能なので、気になる方は是非ご覧下さい。

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ちなみにその容姿も兄譲りのイケメン。貫禄の出てきた兄シャルル(写真左)に比べ、弟アーサー(写真右)はまだまだあどけなさの残るハンサムボーイです。

ドライバー②:カルロス・サインツ(スクーデリア・フェラーリ)

 若きエース・ルクレールと今季からコンビを組むのは、26歳のスペイン人ドライバー、カルロス・サインツです。ルクレールが王子様風イケメンなら、彼はラテンの血濃きワイルドなイケメン。奇しくもタイプの異なるイケメンが跳ね馬に揃いました。

 彼の紹介をする上で外せない人物が2名います。1人目は彼の父親、カルロス・サインツです(名前がややこしいので以後「カルロスパパ」と呼びます)。実はカルロスパパはモータースポーツの世界では知らない人はいないスーパースター。彼はWRC(世界ラリー選手権)のドライバーとして活躍し、1990年と1992年の計2回、ドライバーズチャンピオンに輝いたスタードライバーなのです。従って、サインツは所謂「2世ドライバー」と呼ばれる類の選手です。ただし本人は偉大な父親を傘に着るような態度を良しとせず、登録名も敢えて「カルロス・サインツ」として「Jr」の号を付けていません。ただ親子仲が悪いなんてことはなく、サーキットにも時折顔を出して親子で談笑する姿を見ることがあります。

実はカルロスパパは2度のワールドチャンピオンをいずれもトヨタのドライバーとして獲得しており、90年代の日本のラリーファンにはお馴染みの選手でもあります。

 カルロスパパとしては息子にラリードライバーを目指して欲しかったらしいのですが、サインツはあくまでフォーミュラカーに拘り、レッドブルの育成ドライバーとして下位カテゴリーを戦いました。そうして2015年、レッドブルのBチームであるスクーデリア・トロロッソからF1デビューを果たしたのです。トロロッソでは同年にデビューしたフェルスタッペンとも鎬を削り、2017年途中からはルノーチームに移籍。2019年シーズンにはドン底からの復活を目指すマクラーレンに移籍するとチームの上昇と共に走りは進化。同年のブラジルGPで自身初の3位表彰台を獲得すると、翌年も好調は続き、大荒れのレースとなった第8戦イタリアGPで2位となりました。最終的にはマクラーレンでの安定感あるドライビングが認められて、晴れて今シーズンよりフェラーリドライバーとなったのです。

 サインツがF1に拘った理由には、もう1人の人物が非常に強く影響しています。それは同郷スペインの元F1ワールドチャンピオン、フェルナンド・アロンソ(現アルピーヌ)です。アロンソ自身については現所属チームのアルピーヌ紹介記事にてお話させていただくので詳細は省きますが、スペイン人初のF1ワールドチャンピオンである彼に対して、サインツはそれはそれは強い憧れとリスペクトがあるのです。

 ここまで読んで「なんて良い話だ...!」と思われたアナタ!ここからが本番です。確かにサインツはアロンソをリスペクトしているのですが、その度合いがなんだか勘繰ってしまいたくなるほどのものなのです。こちらの写真をご覧ください。

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 彼ら2人はチームメイトになったことはありません。勿論サーキット内とはいえチームが違えば拠点の位置も離れます。なかなかどうして、この2人が一緒にいる写真は豊富なのです。そして基本的にどの写真も、サインツからの熱心なアプローチが見て取れます。サインツ、どれだけ先輩のことが好きなんだ...

 またこれは本当に偶然の出来事なのですが、実はサインツのF1チームの所属履歴である
トロロッソ→ルノー→マクラーレン→フェラーリ
という流れ、アロンソにそっくりな経歴なのです。アロンソのF1経歴はどうかというと、
ミナルディ(後のトロロッソ)→ルノー→マクラーレン→ルノー→フェラーリ→マクラーレン→アルピーヌ(旧ルノー)
マクラーレンの後にルノーを挟んでいないという違いはあれど、ここまで道筋が似てるのもなんだか不思議ですね。

 まあ冗談はさて置き、基本的にサインツはその陽気な人柄が人気を集めています。昨年までマクラーレンでチームメイトだったランド・ノリスとは特に仲が良く、マクラーレンの公式YouTubeチャンネルでは仲良く戯れ合う2人の動画が沢山アップされています。

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2021年モナコGPではサインツが2位、ノリスが3位。もうチームメイトではないのに、レース後のインタビューに思わず2人で参加してしまう仲良しっぷりを国際映像で見せつけてくれました。

 まだまだサインツについてのエピソードはあるのですが、最後に紹介するのはレース中の無線です。彼の陽気な性格が無線にもよく現れており、とりわけマクラーレン時代には名言を連発。2019年イギリスGPのレース後(6位に入りベストオブザレスト(注④)を獲得)の無線で歌った
"smooth operater"
は今ではすっかり彼の
「持ち歌」と化しました。

この動画の2:35〜がサインツによる「初歌唱」。因みに原曲の"smooth operater"はイギリスのバンド、Sadeが1984年に発表したヒットナンバー。サインツ曰く、「マイカーのラジオで流れていたのを聞いて気に入った」らしく、その後も何度も歌を披露している。

番外編:「俺たちのフェラーリ」

 お待たせしました番外編、今回はTwitterなどでよく揶揄される「俺たちのフェラーリ」について解説します。

 プロ野球ファンの皆さんであれば、「俺達」という名称は聞き覚えがあるのでは?と思います。そうです、2010年前後に一世を風靡した「西武の中継ぎ」を揶揄する言葉です。「俺達」の場合、その定義は
「一軍ビハインド時や二軍以下など、重要でない場面では好投するが、一軍の大事な場面では炎上する、いわゆる1.5軍状態の西武投手陣の総称。」(なんj用語集より)
らしいのですが、ここで言う「俺たちのフェラーリ」もおおよそ意味は同じです(???)。どういったものか例をいくつか挙げると、

・レース終盤の大事な場面で何故かチームメイトで同士討ちクラッシュ
・トップ走行中のタイヤ交換でミスをして平気で5秒ほどロスをして首位陥落
・タイヤ性能が明らかに落ちてタイムが伸びないのに何故かピットに入らず結果的にライバルにアンダーカットされる
・本来ピットにいるレースエンジニアがレースの戦略を考えてドライバーに伝えるべきところを思考放棄、結局ドライバーが運転しながら戦略も考えて走ることに
・予選でポールを獲得するも最後にクラッシュ、ギヤボックスへのダメージが酷く翌日決勝までに直せずスタートできず
・ホームレースのイタリアGPでブレーキ故障、レース中に減速出来なくなりコースを外れて発泡スチロールの看板を破壊


などなど...とにかく「やらかし」が多いのがこのチームの特徴と言われています。しかもどれもこれも重要な場面でやらかすので余計タチが悪い。特にここ2,3年はその「俺たち」っぷりに拍車がかかっており、フェラーリがやらかす度に「また俺たちか...」というティフォシの悲痛な叫びがこだまします。こういった「ネタ要素」も満点なのがフェラーリの愛される所以、でもあるのですが...

イタリアGPで発泡スチロールに突っ込むセバスチャン・ベッテル。どうしてよりによって本拠地でこれをやらかすのか...

 そんなフェラーリを率いるチーム代表も個性派揃いです。前代表のマウリッツォ・アリバベーネは余りに渋すぎるダンディな外見で異彩を放っていました。彼は2018シーズン限りでフェラーリを離れたのですが、なんと今年7月、新たにイタリアの名門サッカークラブ、ユベントスFCのCEOに就任したそうです。彼がフェラーリを率いていた4年間はメルセデスの牙城に挑むも後一歩のところで跳ね返されていましたが、ユベントスでは王座奪還を果たせるのでしょうか。

余りにもイケオジなアリバベーネ。元々フィリップ・モリスの副社長を務めていたやり手のビジネスマンであり、ユベントスでの活躍が期待されます。


 そしてそのアリバベーネに代わって現在チーム代表を務めているのが、元々フェラーリでエンジン部門を統括していた技術畑出身のマッティア・ビノットです。実は、このビノット代表が世界中からヘイトを買ってしまっている面があるのです。というのも、彼が代表に就任した2019年以降、ドライバーやスタッフの統率が取れていないのでは?という疑問が呈されているのです。

2019年からチームを率いているビノット。モジャモジャ頭に丸メガネ、赤いチームスーツという出立ちで、ピエロと揶揄される事もしばしば。

 また2020年のマシン、SF1000「失敗作」と評されるほど戦闘力が低下。2019年にはフェラーリ優勝3回、ポールポジション9回を記録しランキング2位。翌2020年はなんと優勝・ポールポジション共にゼロ。それどころか、表彰台も計3回に留まりランキングはなんと6位に下がってしまいました。今シーズンは多少持ち直しているとはいえ、批判を集めてしまうのもやむなし、といった状態です。果たしてビノットはチームを再建に導けるのでしょうか。

まとめ

 今回は何かとネタの多い名門、スクーデリア・フェラーリをご紹介しました。今シーズンは不調を脱しつつあり、2人の若いドライバーと共に再びタイトル争いに食い込んでいきたいところです。次回はこちらもF1界の名門チーム、マクラーレンのドライバーを紹介します。なんとか8月中には出しますのでお待ちください!!!
 それでは皆さん、レースウィークにお会いしましょう👋




(注①)モナコ人・・・世界で2番目に小さい国、またセレブが集まる国として有名なモナコですが、その人口約4万人弱のうち代々モナコに住まう生粋のモナコ人、「モネガスク」は約9000人程だそうです。ルクレール家はそのモネガスクに属します。正しくモナコが地元、というわけです。

(注②)ティフォシ(tifosi)・・・イタリアでは「熱狂的なスポーツファン」のことを指す名称で、F1では熱狂的なフェラーリファンのことを意味します。元々は「チフス患者(tifoso)」を表す言葉でしたが、それほどスポーツに熱中する人々のことを揶揄する目的で使われたものが定着したとされています。そのため、この語には差別的意図を含むとされることもあり、現地のフェラーリファンは自らをティフォシではなく「フェラリスタ」と呼ぶことがあるそうです。もしイタリアに行くことがあれば、気をつけたほうがいいかもしれません。

(注③)F1ゲームを使った公式バーチャルレース大会・・・2020シーズンはコロナの影響で開幕が大幅に遅れました。そこでF1では少しでもファンに楽しんでもらおうと、F1公認ゲーム「F1 2019」を使った「F1 Esports – Virtual Grand Prix」を開催しました。
 ルクレールジョージ・ラッセル(ウィリアムズ)、ランド・ノリス(マクラーレン)ら現役F1ドライバーに加え、アンソニー・デビッドソンら元F1ドライバー、周冠宇(ルノー育成ドライバー)、ロベルト・シュワルツマン(フェラーリ育成ドライバー)などF1を目指す若手、更にはセルヒオ・アグエロ(当時マンチェスター・シティ所属)などF1以外の大物も参戦して行われました。
 全4戦が行われ、世界で約3000万人もの視聴者を集める盛況ぶりでした。ちなみに各参加者も個人でその様子を配信したりして楽しんでおり、ルクレールやノリスはコラボ配信も行いファンを楽しませてくれました。

(注④)ベスト・オブ・ザ・レスト・・・2014年からのPU時代では、メルセデス・フェラーリ・レッドブルの三強チームが優勝及び表彰台をほぼ独占しており、残りの7チームは三強の下、7位争い(もし三強チームの誰かがリタイアやトラブルで後退すれば6位、5位などにもなる)を繰り広げる状態が形成されました。この7チームの中での最高順位が俗に「ベスト・オブ・ザ・レスト」と呼ばれています。
 ただし2020年以降はフェラーリの凋落や波乱続きのレースなどで中位勢も表彰台に登ることは珍しくなくなっており、2020年のイタリアGPではレッドブルの実質Bチームであるアルファタウリピエール・ガスリーが優勝、2位にはマクラーレンサインツ、3位にはレーシングポイントランス・ストロールが入り、三強チームが全て表彰台を逃すというレースになりました。
 今シーズンもマクラーレンやアルピーヌ、アルファタウリ、アストンマーティンが表彰台を獲得しており、最早ベスト・オブ・ザ・レストの称号は過去のものになってきています。

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