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野球好きに向けたF1沼への誘い②〜ドライバー紹介編その1 絶対王者を守り抜けるか?メルセデスAMG F1チーム〜

こんにちは、そーすです。
 前回に引き続き、野球オタクの皆さんを沼へと引き摺り込んでいきたいと思います。今回のテーマは、
②レース中に選手たち自身の頑張りが見えづらい
に関わって、まずは2021シーズンに参戦しているドライバーたちの紹介をしていこうと思います。ただし、このnoteはあくまで「野球オタク」に向けたものです。そのため、各ドライバーの基本情報はほどほどにして、彼らのパーソナリティ、キャラクター、エピソードを中心に紹介していこうと思います。オタクがこういう類いのエピソードトークに弱いのは把握済みなので。今回は現在コンストラクターズチャンピオンシップ(注①)7連覇中の絶対王者、メルセデスAMG F1チームのドライバー紹介です。それではご覧ください。

ドライバー①:ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG F1)

 初めに紹介するのは、現在ドライバーズチャンピオンシップ(注②)4連覇中、歴代最多となる通算7度のチャンピオンに輝いている現代F1界の絶対王者、ルイス・ハミルトンです。

2007年デビューの彼が持つ称号は数知れず、通算勝利回数・通算ポールポジション(注③)獲得回数など、多くのF1記録を保持する男です。加えて去年彼はイギリス王室より"Sir"の称号を授けられた、文字通りの王者です。そんな彼の華々しい経歴はwi〇iなどをご覧いただければと思います。今回はちょっと横道に逸れた話題をお送りします。

 絶対王者として君臨するハミルトンですが、実のところ彼に対する風当たりはあまり良いものではないことが多いです。史上初の黒人系F1ドライバーである彼はデビュー当初からメディアの格好の的であり、彼の(というか、トップアスリートであればよくある話ですが)メディアに対しての態度も相まってサーキット外での噂が絶えない人物でもあります。昨年から世界中を巻き込むムーブメントとなっているBLMに関しても、彼は真っ先に支持を表明。表彰式の場にBLMに関するTシャツを着て登壇し物議を醸す一幕もありました。

 そんな彼ですが、界隈からの「イジられポイント」はなんといってもレース中の無線です。F1ドライバーはレース中絶えずピットにいるエンジニアとマシンの状況、レース戦略、ライバルの様子などを無線でやり取りしているのですが、ハミルトンの無線には変わった特徴があります。それは「異様なほど悲観的」「お決まりのフレーズが多い」という2点です。

 ドライバーは走行中に感じているフィーリングを無線で伝えているのですが、ハミルトンは基本的に悲観的なメッセージばかりを話します。例えば、「タイヤがもう終わっている。このままだと後ろの車に簡単に抜かされてしまうよ」だとか、「僕たちが打てる手はもうない。勝利は難しいね」などです。ですが、このような無線が入っても彼の運転するマシンのタイムはどんどん良化してライバルを引き離し、タイヤの状態も明らかに良く、そのまま1位でゴールする、というのが日常茶飯事です。従って、F1ファンのあいだではハミルトンの無線は信じるな、というのが共通認識になっています。

2019年モナコGPでのハミルトンの無線。
"We are going to lose this race,Bono!"(ボクたちはこのレース、負けに向かってるようなものだよ、ボノ(ハミルトン担当のエンジニア)!)から始まるハミルトンの超悲観的無線の数々ですが、このレースはこのまま逃げ切って優勝します。

 彼の無線芸2つ目は、もはやお決まりと化している無線用語の数々です。特に有名なのが、
担当エンジニアのピーター・ボニントン(通称ボノ、上の動画でハミルトンに散々文句言われてる人です)から放たれる、
"It’s Hammer Time!"というワード。これはざっくり言えば「今が攻め時だ!全力で走れ!」という意味になるのですが、ハミルトンが好きなブラックミュージシャンの1人、MCハマーの決め言葉としても有名な言葉です。レースの頑張りどころでこの無線が飛ぶと、ハミルトンは決まって驚異のラップタイム(注④)を記録してライバルを追い詰め、あるいは引き離していきます。ハミルトンファンからすれば大興奮、他のドライバー・チームのファンが聞けば悪魔の無線、というわけです。
 
 もう一つ有名なのが、
"Get in there Lewis!"という無線。これもボノがハミルトンに向かって話すワードなのですが、このワードを使うのはレースに勝利した時です。チェッカーフラッグを受けてウイニングランを行いながらマシンをパルク・フェルメ(注⑤)に回送している最中、優勝を労ってこのワードが伝えられます。これはハミルトンがあまりにも優勝しまくるために有名になった、とも言えるでしょう。ちなみにこの言葉を聞いたハミルトンは毎回笑ってレースの感想とチームへの感謝を口にします。レース中の泣き言は一体なんだったんだ。

 そんな王者ハミルトンはそのキャラクターっぷりからか、強烈なアンチと熱烈な信者とが混在するドライバーです。さらに今シーズンはそれまでのハミルトン無双状態に陰りが見え始め、先日のアゼルバイジャンGPではらしくないミスも犯して完走18台中15位でフィニッシュ。王座陥落か、それとも逆境に立ち向かってその玉座を守り抜くのか。楽しみなシーズンになりそうです。

ドライバー②:バルテリ・ボッタス(メルセデスAMG F1)

 続いて紹介するのはハミルトンのチームメイトとして同じく王者メルセデスのマシンに乗り込むフィンランド人、バルテリ・ボッタスです。その速さから「フライング・フィン(注⑥)」の名を授かることもある優秀なドライバーなのですが、彼はおそらくF1ドライバーの中でも1、2を争う「愛され」ドライバーでもあります。

 彼がなぜそこまで愛されるのか、その原因の一つは次の画像にあると思われます。

 これは2019年シーズンのF1公式によるオープニング映像のボッタス登場シーンです。腕を組み、こちらを見下すような視線を向ける髭面の大男。この映像がきっかけで、日本人F1ファンからのボッタスに対しての愛称は
「ラーメン屋」「麺屋ボッタス」「大将」
などと呼ばれています(そういえばNPBにも「大将」と呼ばれる有名選手がいた気が...)。このあまりにも個人経営のラーメン屋のカウンター奥の厨房で湯切りしてそうな雰囲気。どう見てもラーメン屋です(Twitterなどで「ボッタス ラーメン」と検索するとコラ画像などが大量に出てきます)。

 彼のドライビングスタイルは、予選一発の速さやノッているときの速さは際立つのですが、タイヤを保たせる(注⑦)ことがあまり上手くない、オーバーテイク(注⑧)が下手、などと言われることが多く、さらに肝心なところでミスをすることもしばしば。そのためボッタスがレース中にミスをすると、Twitterには
「湯切り失敗」の文字が躍ります。大将、次のレースは頼むよ!

 ボッタスが話題になるのはそれだけではありません。F1では1チーム2台のマシンを走らせるのですが、そこに乗り込む2人のドライバーについては時として「格差」が生じます。1人はチームの「エース」としてなるべく高い順位、優勝を常に目指すのですが、このもう一方は「セカンドドライバー」と呼ばれ、もしエースの優勝が難しいときには、自らの優勝を捨ててでもエースの援護に回ったり、にはエースに順位を譲ってわざと抜かせる(これをチームオーダーと言います)というようなチームプレーが求められることがあるのです。
 そしてメルセデスチームにおいてのエースはもちろん、絶対王者ハミルトン。従ってボッタスはセカンドドライバーとして、自己犠牲を伴ったレースを求められることが多いのです。

 ボッタスが非常に優秀なドライバーとして評価を受ける理由の一つがここにあります。ボッタスはこの「チームプレー」が非常に上手いのです。
 例えばハミルトンがトップを走行しているときは、2位につけて3位以下の選手をスローペースに抑えこんだりするわけです。そのあまりにも見事な仕事ぶりから、「ハミルトンの忠犬」「F1史上最強のポチ」などと揶揄され、そのドライビングを批判されることがしばしばあります。ボッタス自身もこのことを承知しており、2020年のロシアGPで優勝した際には無線で、
"I think again this is a nice moment to thank my critics.To whom it may concern, f**k you!"(これは毎度僕らを批判してくる人たちに感謝する良い機会だね。そんな方々に贈るよ、フ〇〇ク・ユー!)
と言い放っています。ボッタス本人にも思うところは色々あるのでしょう。

 ただしそんなボッタスは今季ここまであまり調子が上がらず、ついには今季限りでメルセデスを離脱するという噂が現実味を帯び始めています。メルセデスチームは現在ウィリアムズという別のF1チームでドライバーを務めるジョージ・ラッセルという若手を育成ドライバーとして抱えており、その彼とボッタスとを交代させるのではないか、と噂されているわけです。それでもボッタスはF1通算9勝をマークしている一流ドライバーの1人としての意地があるでしょうし、来年以降もメルセデス、ひいてはF1界にとどまれるような活躍を期待しましょう。

番外編:トト・ヴォルフ

 メルセデスチームのドライバー紹介は終わったのですが、このチームについて話すならばこの人を忘れてはいけないと思い、番外編です。彼はメルセデスAMG F1チームのチーム代表を務める男、トト・ヴォルフです。自身もレーシングドライバーとして活動する傍、やり手のビジネスマンとしても名を上げていた彼は、2010年代になり急速に力をつけていたメルセデスチームに加わるとその類い稀な手腕でチームを常勝軍団に導いた人物です。車体・エンジンの開発からレース戦略まで、幅広い仕事を行うチームをまとめており、メルセデス躍進の最大の立役者の1人でもある非常に優秀な人物です。

 そんな彼もまた、F1界隈では人気のある人物。特に有名なのが、「トトの台パン」です。これはレース中、メルセデスのマシンがトラブルやクラッシュを起こすと、ピットのモニターを見ながら様々な指示を出しているトトがあまりの悔しさに目の前の机を思いっきりグーでパンチする光景のことです。割と毎回本気でパンチを繰り出しており、中継スタッフもそれを分かっていて、国際映像に毎度その姿を抜かれています。今季はメルセデスの調子が例年ほど良いとは言えないシーズンのため、これからも台パンを見る機会が多くなるかもしれません。

トトの台パンシーンの一例。割と毎回こんな感じで感情剥き出しの本気台パンをしている。元横浜のリリーフ助っ人外国人と馬が合いそう()

まとめ

 今回はメルセデスAMG F1チームのドライバー紹介でした。2014年から年間タイトルを保持し続けている彼らですが、今季はレッドブル・ホンダを始めとしたライバルたちに迫られており、ついに王座陥落が現実味を帯びています。どうせ応援するなら最強チームでしょ!という方は是非、メルセデスを応援してみてはいかがでしょうか。ハマった時の最強具合と時折見せるポカは、某福岡の黄色い球団を思い起こさせるかも...!?

 次回のnoteでは打倒メルセデスに燃える強豪チーム、レッドブル・ホンダのドライバーを紹介していこうと思います。それではまた次回お会いしましょう!👋

#f1jp
#f1DAZN

注①:コンストラクターズチャンピオンシップ
・・・F1では年間20戦前後(今シーズンは23戦の予定)のグランプリを戦い、その合計ポイントで年間王者を決定します。コンストラクターとはマシン製造者の意味で、つまり年間のチームタイトルということです。

注②:ドライバーズチャンピオンシップ・・・ドライバー個人単位での年間タイトル。俗に「F1チャンピオン」と言うと、このタイトルを獲得した選手のことを指します。

注③:ポールポジション・・・F1は日曜日に行われる決勝レースのスタート順を決めるために前日の土曜日に予選を行います。これはコース一周のタイムが速い順に翌日の決勝のスタート順が決まる、というもので、この予選で最速タイムを出すことでゲットできる先頭でのスタートポジションをポールポジション(PP、ポールなどと略される)と呼んでいます。

注④:ラップタイム・・・コース一周のタイムのこと。決勝レース中は一周ごとに変わる路面の状況やタイヤの状態を見極めながら、ドライバーたちがより速いタイムを出してゴールを目指します。

注⑤:パルク・フェルメ・・・車両保管場所。マシンに不正をしていないか取り締まるため、レース前後はこの場所に全車駐車しなくてはいけません。語源はフランス語だそう。

注⑥:フライング・フィン・・・空飛ぶフィンランド人の意味。F1はじめ様々なモータースポーツで活躍するフィンランド人が多いことから、フィンランド人ドライバーによくつけられる愛称です。欧州サッカー好きの方であれば、ヨハン・クライフの「フライング・ダッチマン(空飛ぶオランダ人)」の愛称をご存知かもしれません。あれのフィンランド版ということです。

注⑦:タイヤを保たせる・・・F1では異なる種類のタイヤをレース中に使い分ける義務があります。ですが、当然ピットイン→タイヤ交換の回数は少ない方が有利なので、ひとつのタイヤを何十周と使い続けられるとそれだけ有利になるのです。

注⑧:オーバーテイク・・・前のクルマを追い抜くこと。レース中1番盛り上がるシーンと言っても過言ではないでしょう。一流ドライバーたちのオーバーテイクシーンは大迫力でテンション上がること間違いなしです。

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