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大きな夢を抱いて。

私が大学野球を現地で観戦するようになったのは、2018年に上京して以降のことでした。
通う大学は特別野球の強い学校ではありませんが、元から野球観戦が好きだったこともあり、神宮球場に足繁く通うようになるのにはそう時間はかかりませんでした。
同郷の先輩である牧秀悟(当時中央大学、現DeNA)の活躍なども目の当たりにしながら、「大学野球はネット裏で簡単に観戦できていいよな〜」なんて思いながら通っていたわけです。

2021年の秋、ある出会いが起こりました。

この年、私はコロナ禍や進路など多くの要因が重なって心身共に調子を崩し、適応障害の診断を受けていました。
夏頃にそこは脱したものの、相変わらず大学には通えず、偶に調子が良ければ家を出ることは可能、くらいの体調。

そんな中、たまたま調子の良い日に行った神宮球場、東大と法政の試合を観戦した時に投げていたある投手に目を奪われました。

"一目惚れ"した日。

「くの字ステップ」と呼ばれるステップからスムーズに投げ込む流麗なフォーム。140km/h前後ながらキレのあるストレートで押し込み、縦に割れるようなカーブやブレーキのあるチェンジアップで打者を打ち取る姿に心を奪われてしまったのでした。

彼の名は尾﨑完太(おざき・かんた)

当時大学2年生ながらリーグ戦に度々登板し、ポテンシャルの高さを垣間見せていたサウスポーです。アマチュア野球を好きで観ている私ですが当時は選手をそこまで数多く把握していたわけではなく、尾﨑投手についても完全に初見。ですがそのピッチングを一目見ただけで、その姿に惚れ込んでしまいました。

私自身左利きなのもあって、サウスポーには殊更注目してしまうのですが、尾﨑投手のように一発で目を奪われた選手は後にも先にもいません。この時僕は密かに思ったのです。「この選手が投げるその姿を、できるだけこの目に焼き付けていこう」、と。

階段を、登る。

2022年。私は結局大学を卒業できず、留年という形で在籍、実家から毎週大学へと通いながら不足単位を取得する生活になりました。

当然ながら土日開催の六大学野球を現地で観戦することなど叶わず、この年はネット中継での観戦が続きました。体調面の不安、留年という枷をかけてしまった両親への懺悔、迫る院試...
心持ちも晴れない時期でしたが、来年こそは大学院に合格して尾﨑投手を現地で観るために、今が踏ん張り時と思いながらの日々でした。
自分語りが長くなりごめんなさい。

尾﨑投手はこの年の春、主に日曜日の2戦目の先発を任されて初の規定投球回に到達。法政大の主力投手の座を固めるシーズンでした。
技術面で言えば、二段モーションを取り入れて球威が向上し、5/8明大戦では6回無失点、5/22東大戦では7回無失点と長いイニングを投げ切ることもできるように。夏のオールスター戦では149km/hを計測するなど大きく成長した彼は、秋季リーグで遂に土曜日の1戦目先発を担うこととなります。
私も無事前期で単位を取得、夏の院試を終えていよいよ来年への期待を、自分への期待を膨らませた時期だったのでした。

道なりにはいかない。

2022秋季リーグ、尾﨑投手は各チームのエースとのマッチアップである1回戦で力投を見せますが、チームを勝ちに導くことがなかなかできません。10/1、この年リーグ戦春秋連覇を達成する明治大学戦では7回7奪三振2失点の好投を披露しながら味方の援護なく敗戦。

春よりもより大きく右脚を上げるようになったフォームから常時140km/h台の直球を投げ込み、イニングとほぼ同数の三振を奪う実力を見せますが、結果として最終節の東大戦までに0勝4敗。チームも勝ち点を獲得できず、東大との一戦はいわば「最下位決定戦」となりました。

この一戦に勝利しシーズン初勝利を挙げ、法政大も5位でリーグ戦を終えることに。38イニングを投げて37奪三振を奪いましたが、四死球23、自責点23で防御率は5.45と期待値を考えると物足りない成績でした。それでも12月の侍ジャパン大学代表合宿に招集されて好投を見せるなど、彼のポテンシャルの高さを示す場面は数多くありました。

2022年を通して球速の向上、長いイニングを投げるスタミナなど多くの成長を見せた尾﨑投手でしたが、課題も山積。高い四死球率も目立ちますが、私個人が見ていて一番気になったのは「ピンチでのメンタル」です。試合中盤以降にヒットや四死球でピンチを作ると、目に見えて焦りが現れ、一気に失点を重ねてしまう場面が散見されました。10/8慶大戦では5回まで被安打ゼロ、7奪三振と完璧な投球を見せながら6回に初ヒットを許すと自身のエラーも絡み2失点など、悪い時に踏ん張ることができず。マウンドでの表情も明らかに動揺の色を隠せないことが多く、ここからのさらなる飛躍にはこの部分の改善が必須だろうと感じていました。

私は私で無事大学院入試に合格し、卒論の作成に追われてましたが、家庭の不幸なども重なりままならない日々を過ごすことに。来年こそは希望に溢れた年にするために、尾﨑投手を現地で観戦するために。

跳ねる姿

2023年、尾﨑投手は背番号1を背負いチームのエース格としてシーズンに臨みました。初戦となった4/8慶大戦、先発のマウンドに上がった彼は自己最速を更新する150km/hのストレート、落差の大きい強烈なドロップカーブ、打者のタイミングを狂わせるチェンジアップ、新たに習得したカットボールを巧みに操り7回を被安打3、四球1、三振5、無失点に抑える完璧な投球を披露しました。
ネット裏から観戦していた私も思わず舌を巻くその内容に、興奮を抑えられず。まともに動画を撮影することも忘れて夢中になってしまいました。

チームも快進撃を続け、最終的にはリーグ2位でフィニッシュ。尾﨑投手も1回戦の先発を担い、5/21東大戦では12奪三振完封勝利を挙げるなど大活躍のシーズンでした。

投球内容についても、昨年まで見せていたピンチでの焦りはかなり解消され、きちんと打者との勝負に徹する姿を見せており大きな成長を感じさせるものとなりました。6月の侍ジャパン候補合宿にも招集され、本人が常々口にしていた「ドラフト1位」も視界に捉えた位置にいたのは確かでしょう。

もがいて、もがいて

順調な歩みに見えた尾﨑投手でしたが、代表合宿以降はその道のりに陰りが見られるようになります。本人曰く、夏場にフォームを見失ったとのことでした。私も夏のオープン戦を観戦しましたが、一年前までのように大きく制球を乱して失点を重ねる姿にただただ心配する他ありませんでした。
不安を抱えながら迎えた秋季リーグ、そこには明らかに以前とは異なる姿の尾﨑投手が。直球の球速は140km/h前後まで落ち込み、決め球のカーブも、
カウント球として活用していたカットボールもストライクが取れずに苦しい投球が続きました。昨年以前の課題が再噴出したかのような投球にとにかく心配になりましたが、自分にできることは応援することだけだと言い聞かせて各登板を見守りました。

結果としてイニングと同数の23四死球を与え、防御率5.87と散々な成績に。本人の言う通りフォームが以前のような形ではなくなったことが大きく影響したのは間違いないでしょう。
しかしながら、以前とは違う姿も多く見られたのも紛れもない事実。特に私がここまで再三にわたって指摘していたメンタル面は大きく改善したと言っていいと思います。ピンチを作っても内野陣とも声を掛け合い、きちんと周りを見ることもできていました。思い通りの投球にならないもどかしさを抱えていたとは思いますが、彼なりにできることを全力でぶつけていたのは確かです。

次を見据えて。

今秋の結果を勘案すると、今日のドラフトでの指名はかなり難しいと言わざるを得ないでしょう。今年は大学生投手の市場が豊作と言われており、尾﨑投手の立ち位置は簡単ではありません。それでも本人が口にしてきた「ドラフト1位」という大きな目標が潰えたわけではないはずです。そもそもドラフトで指名されることがゴールではなく、そこから続く野球人生こそが重要な話なのです。尾﨑投手の進む道を私は全力で応援します。彼がここまで歩んできた道は、必ず糧になるはずです。私に希望をくれたこと、これからも希望を抱いて、彼の未来が絶対に明るいものになる!そう断言して今回のnoteを締めくくりたいと思います。

これまでも、そしてこれからも、我が道を進もう!応援し続けます!尾﨑完太の未来に幸あれ!!!

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