無味乾燥

誰もいないランドリーに洗濯機と乾燥機の音だけがカタカタと響きます。なにげに人の少ないいつもの道とあわせてなかなかに静かで風情がある  わけないじゃん。

最近、ランドリーの洗濯機と乾燥機の稼働率は「2:8」くらいで、それは季節や天気に依らずほぼ自分なりの“定理”である。10年20年前は(それぞれの台数が均等なら)5:5くらいだった気がする。

そのわけを一時期ランドリーに座りながら真剣に考えた。わたくし、回すだけ回して洗濯物を放置するならず者とは違い、割とそのままランドリーに座っています。かみさんのパンツでも盗まれたら大目玉をくらうが、もはや盗っ人のおメガネにかなうシロモノでもなく。けれど、座っております。

携帯が無かった時代は、だいたいのランドリーには街中華に置いてあるような崩壊寸前のジャンプ、マガジン、スピリッツ、コミックなどが乱雑に積まれており、読みたくもない作品のコマを追っていたわけですが、いまやペラペラ画面で何でも出来てしまいます。それすら直ぐに飽きるので、回るドラムを眺めながらよしなしごとを考えてしまうのですよ。

ランドリーユーザーと言や、昔は学生か単身者(男)だったもんですよ。だいたい銭湯入る前に投入して、出てから乾燥→回収→マミー飲み干して退場。最近は老若男女問わず激しくランドリーを使われているようです。

「家の洗濯機回さないの?」

「干さないの!?」

自分そっちのけで愚痴のひとつを豊島区の中心で叫んでも仕方ないのであります。皆、時間が無いんですよ。それ以外は「怠ケ者」が増えた。

都会は日々時間に追われる人間が多い。それに都会は自分の自由気ままな時間をつくりたがる我が儘が多い。なのに優先すべきことがなんか違う。ゆえに時間が無い=洗濯物が溜まる。時間が欲しい=手っとり早く終わらせたい。当然の結果でしょ。そういう時代になっちゃった。

そもそもいまは洗濯機を買わない人も多いと思われ。ランドリーがあるから。洗濯機300円、乾燥機30分300円として、600円。週に1回利用で月に3000円。年に36000円。洗剤、人によっては柔軟剤… これ1年で洗濯機買えるよ。2~3年踏ん張れば乾燥機も夢じゃない。でも皆、ランドリー乾燥機の火力に負けてしまう。目先のコストしか考えなくなった風潮は洗濯だけに限ったことじゃあない。

若い子、休日のサラリーマン、お爺ちゃん、お婆ちゃん、車で乗りつける推定主婦… 独りの人も増えたのでしょう。皆、時間が無い。銀行に行けな~い!…YouTubeでよく頭がカチ割れそうになる映像で言ってるでしょ。連続で言ってるでしょ。

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静かだったランドリーはいつしか洗濯機終了組が戻り、乾燥機が満台になっていた。こりゃ困りました。しばらくnoteを書き続けます。

やがて、わたくしがランドリー入場の際に唯一洗濯物を乾燥機に投入していたお婆ちゃんがお戻りに…。頭カチ割れそうでしたが、「ゆっくりでいいですよ」と心にも無い言葉を投げかけ、洗濯物を無事に投入完了!いつもよりよく回っております。

しかし… あれだけ居た人々がいなくなり、ひとり残った乾燥終了待ちの将来有望な若者が激烈に咳をしている。確か自分より2~3分早く割り込みで乾燥機に投入した将来有望な若者。早く洗濯物を回収して、節約出来た時間でフェスでも行って楽しんでおいでよ。もしくは病院に連絡してくれると嬉しい。G.W.だけどね。

外で暫し待ち、ピーピーと急かされ乾燥機へ戻る。お疲れ様! いい感じにホカホカと暖まったエアリズムなどを取り込む。何故か同じタイミングで取り込みはじめた将来有望な若者はわたくしのとなりの乾燥機だった。咳はしなかった。彼なりの思いやりだったのだろうか。彼の今後の動向と取り巻く人々を一瞬思いやる。これは“マジ”です。マジだぜ。

誰も居なくなったランドリーを退場し、また一本道をとぼとぼ歩きます。時折とまっている車の周りで談笑するG.W.限定とみられるコミュニティ、これから「さぁ行こう」な家族… 思い思いの連休ラスト・スパートです。

なんかつまんないな…

嗚呼、無味乾燥。

嗚呼、無情。

赤坂のテレビ局でバイトしていた当時、女の子と歌って盛り上がりました。

裏切りは直らない 手錠をかけても
甘え上手にトドメ刺されて
街に霧が降る…


晴れたいい日です。


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