青色のノスタルジア4    〈始まりの日〉

[地球のちのプリゲート]

無風。

 翠色は無。

 晴天な空の下、荒れた大地と山脈と崖が地球の悲惨さを意味深長な空気が醸し出した。

 重く脚をたたみ趺ーをとり精神を集中させる。

 虚無の空間に一人、目を瞑り、脳の中で回想する。

 彼にしか分からない思考。他からではわからない。

 シナプス数百個では収まりきらない情報量。まるでもう一つの脳があるかのようだ。

 天才的であり、運命的。

 自分で自分に問いかけ自己完結する姿ははた傍から見たらストレンジャー極まりない。

 彼は彼と呼ぶべきではない。

 彼らと呼ぶべきか。

 並列意思を持っているのか。

 彼からはそんな疑問が浮かぶ。


彼の名前はオリバル=マッカーサー。

地球が生み出した人間と異星からきた寄生体の複合体 。上流階級のヒーストンからも恐れられているDONNERs だ。

 数日前、彼は一切の敵を寄せ付けず戦いに勝利した。

 悪魔100体に加え、リーダー格の一人を抹殺した。

メンバーは10人、戦闘員5人あとの5人はサポートだ。中でもオリバルは圧倒的な力を見せつけた。しかし、母国を疎かにしていては元も子もなかったのだ。オリバにとっては何人かの知人、友人を失った。今の彼にとっては悪魔達が許せない。5年間戦ってきて奴らを仕留めることが出来なかった。ヒエラルキーによってマンパワーが異なるのは仕方ない

  自分が力を持ったとはいえ、自分が複数存在するわけではない。自分が最強な故の悩みであろう。自分の手が届かない範囲は救える命・星が救えないのだ。

 初めて侵した失態、最初の目標に囚われすぎていた。

 帰ってきた母国ソフィアは人の気配がまるでない。ここは人口1億人を超える国だった。

 ここ最近は技術革新が著しく次々に新しいものが開発されていった。もちろんAIやロボットは当たり前になっている。この5年間で信じられないほど近未来感が増していたはず。

 彼が瞑想しているこの場所はソフィアの都心
「トーバル」である。

 人の気配が感じられない。殺風景で瓦礫に塗れた荒れ果てた土地と解釈するほかない。

 ここは日本の首都圏。誰が予想しただろうか。懐かしき故郷は私の知っているノスタルジアでは無かった。

 山が無ければ地平線が見えそうだ。

 誰もが現実逃避したくなる結末、目を背けたくなる現実、それ以上に不安な未来。

 この男にのしかかっていた心の重りは鉛のように重く、今では「期待」という言葉は自分の中のストレスとなる。

 懐かしき故郷は私のノスタルジアでは無かった。

 全くの別物だ。ここは本当に我々が住んでいたエデンだったのだろうか。

 どんな結末が待っていようと行動することが最善でしかなかった。経験は人を変える。成し遂げられなかったことを悔やんでいても仕方がない。この世に絶対は無いのだから。

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